わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

文字の大きさ
171 / 252

171

しおりを挟む
「いくら何でもすぐに呼び出すなんて失礼よ。改めて会談を段取ったらいいと思うんだけど。」
ミルアージュはクリストファーに提案するもすぐに却下された。

「だめだ。レーグルトの動きが活発だからやるなら早めがいいだろう。何より次の集まりに私も一緒にいられるとは限らない。この話は正直、気が進まない。だから、私がいる時に会談をするのが条件だ。そうでなければ許可はできない。」

「クリス…」

ミルアージュは困ってレンドランドを見ると優しく頷いた。

「クリストファー殿のおっしゃる通りです。ルーマンの代表としてクリストファー殿にいてもらった方が良いでしょう。」

そうレンドランドが言う後ろで宰相で「ルーマン代表というよりミルアージュ様から離れたくないだけだろう」とボソリとつぶやいた。

クリストファーの耳にも聞こえたはずだが、レンドランドの賛成に笑顔で大きく頷いた。

「心配しなくてもいい、このチャンスは逃せないブランならすぐ来るよ。ミア達は楽しんでこい。その間にこちらでできる事は進めておく。ミアのそばにいるだけが私の仕事ではないからなぁ、宰相。」

クリストファーの嫌味を返した後、宰相と無言で睨み合いをしていた。

ミルアージュは「私もここにいようかしら」と声が出てしまうくらい殺気が出ている。

レンドランドは苦笑いを浮かべてミルアージュに手を差し出した。

「姉上、行きましょう。母上がお待ちですから。」
レンドランドはミルアージュを二人から引き離すようにエスコートして部屋を出る。

「大丈夫かしら、あの二人…」

気にかけながらも義母との面会を楽しみにしていたミルアージュはレンドランドに促されて馬車に向かう事にした。




「…ミアは行ったようだな。」

「はい。」

部屋にはクリストファーと宰相、軍部大将が残った。

「お前達の主は余計な事をしてくれた。」

「申し訳ありません。」
それに関しては宰相も軍部大将も同意していた。

「3カ国同盟自体はいい。レーグルトを抑えるために一番リスクが少なく、大きな結果が期待できる。」

「はい。」

「だがな、ミア抜きでも十分に通せただろう。どうしてミアを巻き込んだ?名誉を挽回させたかったのか?」

クリストファーは静かに話しているが、相当怒りを抑えているのが宰相にも軍部大将にもわかった。

宰相は頭を下げてクリストファーに謝罪をする。
「そうです、自分の行いで落とした名誉をなんとかしたいと考えたと思います。何よりミルアージュ様の才能をルーマンの王太子妃で埋もれるのはいけないと思われたようです。」

「あの才能は外に出してはいけないものだ…」
クリストファーの言葉に二人とも頷いた。

「はい、わかっております。ミルアージュ様を利用する輩は次から次に現れるでしょう。そして、ミルアージュ様はそれも受け入れてしまう。そして、最善という選択の為に命もかけるでしょう。」

「はぁぁ、ミアは私の言うことなんて聞かないからなぁ…」
クリストファーは大きく息を吐いた。

「とりあえずブランを呼び出せ。その後にこの話の続きをしよう。できるだけ穏便に済ませる方法を考えろ。」

「承知しました。」

そう言いながらも良い案が出てこない3人は頭を抱えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...