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【第30話】 秘密の密談と兄たちの本音
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密談場所は、市民が使っている古びた寺院の一室。
木の柱や古びた壁に囲まれ、かすかな蝋燭の灯りが揺れている。
外の世界の喧騒は届かず、静寂だけが支配する空間だった。
城や公爵邸では目立つため、慎重に行動しなければならなかった。
---
前夜、私は息を弾ませながら、急ぎ足でグラヴィスの元へ駆け込んだ。
「今回の密談、私も参加させてください――!」
グラヴィスは静かに首を振る。
「このような政は女性が関わるべきではありません。待っていてください」
でも私は負けずに食い下がった。
「この問題は、私の国と家族の問題でもあります!兄上達にもどうしても聞きたいことがあるのです!」
しばらくの沈黙。
部屋の空気が重く張りつめる中、グラヴィスは深いため息を吐き、肩を少し落とした。
「……確かに、今回はお母上も関わっていること。ジェニエットも知るべきかもしれない。……いいでしょう。同席させます」
胸が跳ね、心臓が痛いほど高鳴った。
「ありがとう、グラヴィス様!本当に大好きです♡ こんなに理解ある旦那様で幸せです。好き好き好き♡」
(あっ、ヤバっ!姫らしくないよね……?)と、冷や汗をかきながらそっと顔を上げる。
グラヴィスは私の頬にそっと手を添え、低く息を漏らした。
「……ッ。貴方という人は!なぜそんなに可愛らしいのです!私をこれ以上駄目な男にするつもりですかっ!」
ギュッと抱きしめられ、私は思わず体を委ねる。
(きゃぁぁぁ♡嬉しい♡ 頭がクラクラする…幸せすぎる…)
逞しい胸の温もりと、静かに香る香りに包まれながらも、私は明日の密談への覚悟を心に刻んだ。
---
翌日――
フードを深くかぶり、平民の衣装に変装した私たちは、古びた寺院に静かに到着した。
ドアを押すと、薄暗い室内にはすでに三人の兄上が待っていた。
私の姿を見た彼らの目が大きく見開かれる。
「ジェニエット!?なぜこんな所にいるんだい?危ないから帰りなさい!」
カーティス兄上の声は驚きと心配で震えていた。
「グラヴィス!何のつもりだ!?妹を巻き込むな!」
ドミニク兄上の視線は鋭く、怒りの色を帯びている。
「そうだ!ここは危険だ。すぐに帰るんだ!」
アドニス兄上も力強く言い放つ。
グラヴィスは静かに頭を下げ、落ち着いた声で答えた。
「皇子殿下、ジェニエット様を勝手に同席させたこと、申し訳ありません。しかし、今回の出来事はジェニエット様にも関わることです。お三人方にも伺いたいことがあるようです」
三皇子は一瞬、困惑の表情を浮かべ、互いに視線を交わす。
寺院の静寂に、微かな息遣いだけが響いた。
カーティスがゆっくりと口を開く。
「ここまで来てしまったなら、仕方ない…。ジェニエット、いったい何を話したいんだい?」
私は深く息を吸い、決意を込めて目を見据える。
「今回私がここに来たのは、お兄様達の本心を聞きたかったからです。母上は今回の戦の指揮権をドミニクお兄様に取らせようとしています。それは皇太子に据えるため…。お兄様方は、皇太子になりたいのですか?」
三人は一瞬沈黙。互いの視線が交錯する。
空気が張りつめ、寺院の蝋燭の炎さえも揺れるように思えた。
口火を切ったのはカーティス。
「本当に唐突だね。そんなことを僕に言っても良いのかい? お母上を裏切る事になるよ?」
私はしっかりと目を見据え、強い声で答える。
「はい。私はもう母上の言いなりにはなりません! お兄様達とずっと仲良くしていたい。そのためには本音で話し合います」
その決意を聞き、三皇子は順に本音を明かした。
---
カーティス
「……僕は皇帝になりたいと思っている。そのため日々努力してきた。しかし、兄弟を蹴落とすつもりはない」
ドミニク
「僕は……皇太子になりたくない。争いも嫌いだ。兄上が誠実で皇太子に相応しいことを知っている。将来は知識を生かして兄上を支えたい」
アドニス
「俺も皇太子にはならない。騎士として、カーティス兄上を武で支えたい」
三人の本音に、私の胸は熱くなる。
グラヴィスも静かに頷き、言葉を添えた。
「私も、今回の指揮権を任せるなら、戦の経験もあるカーティス殿下が最適だと考えています。いくら勝ち戦でも、戦経験の少ないドミニク殿下では現場判断が難しいでしょう」
カーティスは驚きつつ、皮肉げに笑った。
「意外だな。お前はてっきりアマデル皇妃側の人間だと思っていたが?」
グラヴィスは静かに答える。
「確かに、私はかつてアマデル皇妃側の人間でした。しかし、それはジェニエット様あればこそ…。そのジェニエット様が望むのであれば、私はアマデル皇妃を裏切ります」
驚く三皇子。私は思わずパンっと手を叩く。
「それでは、皆さんの意見は一致しましたね! これから私たちは同志です。母上の好きにはさせません!」
三兄弟は笑みを浮かべ、力強く頷いた。
---
カーティス
「ジェニエット、君はこんなに強い子だったのか。賛成だ、指揮権は私が取ろう」
ドミニク
「僕もそれでいい。ジェニエット、話し合う場を設けてくれてありがとう」
アドニス
「俺も賛成!皆で力を合わせよう!」
グラヴィスは私に微笑みながら、静かに付け加えた。
「明日、皇帝にカーティス殿下に指揮権をと進言します。私も側でお支えしますので、ご安心ください」
こうして、密やかな誓いが、私たちの絆を強くした。
母上の策略を乗り越えた、特別な夜――静かで、熱く、確かな決意に満ちた夜だった。
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木の柱や古びた壁に囲まれ、かすかな蝋燭の灯りが揺れている。
外の世界の喧騒は届かず、静寂だけが支配する空間だった。
城や公爵邸では目立つため、慎重に行動しなければならなかった。
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前夜、私は息を弾ませながら、急ぎ足でグラヴィスの元へ駆け込んだ。
「今回の密談、私も参加させてください――!」
グラヴィスは静かに首を振る。
「このような政は女性が関わるべきではありません。待っていてください」
でも私は負けずに食い下がった。
「この問題は、私の国と家族の問題でもあります!兄上達にもどうしても聞きたいことがあるのです!」
しばらくの沈黙。
部屋の空気が重く張りつめる中、グラヴィスは深いため息を吐き、肩を少し落とした。
「……確かに、今回はお母上も関わっていること。ジェニエットも知るべきかもしれない。……いいでしょう。同席させます」
胸が跳ね、心臓が痛いほど高鳴った。
「ありがとう、グラヴィス様!本当に大好きです♡ こんなに理解ある旦那様で幸せです。好き好き好き♡」
(あっ、ヤバっ!姫らしくないよね……?)と、冷や汗をかきながらそっと顔を上げる。
グラヴィスは私の頬にそっと手を添え、低く息を漏らした。
「……ッ。貴方という人は!なぜそんなに可愛らしいのです!私をこれ以上駄目な男にするつもりですかっ!」
ギュッと抱きしめられ、私は思わず体を委ねる。
(きゃぁぁぁ♡嬉しい♡ 頭がクラクラする…幸せすぎる…)
逞しい胸の温もりと、静かに香る香りに包まれながらも、私は明日の密談への覚悟を心に刻んだ。
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翌日――
フードを深くかぶり、平民の衣装に変装した私たちは、古びた寺院に静かに到着した。
ドアを押すと、薄暗い室内にはすでに三人の兄上が待っていた。
私の姿を見た彼らの目が大きく見開かれる。
「ジェニエット!?なぜこんな所にいるんだい?危ないから帰りなさい!」
カーティス兄上の声は驚きと心配で震えていた。
「グラヴィス!何のつもりだ!?妹を巻き込むな!」
ドミニク兄上の視線は鋭く、怒りの色を帯びている。
「そうだ!ここは危険だ。すぐに帰るんだ!」
アドニス兄上も力強く言い放つ。
グラヴィスは静かに頭を下げ、落ち着いた声で答えた。
「皇子殿下、ジェニエット様を勝手に同席させたこと、申し訳ありません。しかし、今回の出来事はジェニエット様にも関わることです。お三人方にも伺いたいことがあるようです」
三皇子は一瞬、困惑の表情を浮かべ、互いに視線を交わす。
寺院の静寂に、微かな息遣いだけが響いた。
カーティスがゆっくりと口を開く。
「ここまで来てしまったなら、仕方ない…。ジェニエット、いったい何を話したいんだい?」
私は深く息を吸い、決意を込めて目を見据える。
「今回私がここに来たのは、お兄様達の本心を聞きたかったからです。母上は今回の戦の指揮権をドミニクお兄様に取らせようとしています。それは皇太子に据えるため…。お兄様方は、皇太子になりたいのですか?」
三人は一瞬沈黙。互いの視線が交錯する。
空気が張りつめ、寺院の蝋燭の炎さえも揺れるように思えた。
口火を切ったのはカーティス。
「本当に唐突だね。そんなことを僕に言っても良いのかい? お母上を裏切る事になるよ?」
私はしっかりと目を見据え、強い声で答える。
「はい。私はもう母上の言いなりにはなりません! お兄様達とずっと仲良くしていたい。そのためには本音で話し合います」
その決意を聞き、三皇子は順に本音を明かした。
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カーティス
「……僕は皇帝になりたいと思っている。そのため日々努力してきた。しかし、兄弟を蹴落とすつもりはない」
ドミニク
「僕は……皇太子になりたくない。争いも嫌いだ。兄上が誠実で皇太子に相応しいことを知っている。将来は知識を生かして兄上を支えたい」
アドニス
「俺も皇太子にはならない。騎士として、カーティス兄上を武で支えたい」
三人の本音に、私の胸は熱くなる。
グラヴィスも静かに頷き、言葉を添えた。
「私も、今回の指揮権を任せるなら、戦の経験もあるカーティス殿下が最適だと考えています。いくら勝ち戦でも、戦経験の少ないドミニク殿下では現場判断が難しいでしょう」
カーティスは驚きつつ、皮肉げに笑った。
「意外だな。お前はてっきりアマデル皇妃側の人間だと思っていたが?」
グラヴィスは静かに答える。
「確かに、私はかつてアマデル皇妃側の人間でした。しかし、それはジェニエット様あればこそ…。そのジェニエット様が望むのであれば、私はアマデル皇妃を裏切ります」
驚く三皇子。私は思わずパンっと手を叩く。
「それでは、皆さんの意見は一致しましたね! これから私たちは同志です。母上の好きにはさせません!」
三兄弟は笑みを浮かべ、力強く頷いた。
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カーティス
「ジェニエット、君はこんなに強い子だったのか。賛成だ、指揮権は私が取ろう」
ドミニク
「僕もそれでいい。ジェニエット、話し合う場を設けてくれてありがとう」
アドニス
「俺も賛成!皆で力を合わせよう!」
グラヴィスは私に微笑みながら、静かに付け加えた。
「明日、皇帝にカーティス殿下に指揮権をと進言します。私も側でお支えしますので、ご安心ください」
こうして、密やかな誓いが、私たちの絆を強くした。
母上の策略を乗り越えた、特別な夜――静かで、熱く、確かな決意に満ちた夜だった。
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