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俺の学園生活、そして趣味
歩く会も練習する
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「あーあ……。あっちい……。」
「歩くのってこんなに疲れたっけ……。」
「はー、はー……。」
碧、俺、男の人と、息も絶え絶えになった状態で、運動公園周辺の小高い丘もあるウォーキングコースを歩いていた。
「それじゃあ一旦、休憩にして、お水飲んでくださいっス。」
「ああ。ずまないね……俺がこんな調子じゃなかったら。
ゲホゲホっ。」
「おとっつあん、むせながら飲んだらお水でおぼれるわよ。」
「ゲホゲホっ。」
碧と俺が小芝居をしながら毎度のように持って来ているスポーツドリンクを飲んでいる。
「ごっごっごっ。」
既に男の人はラッパ飲みをしていた。
「前より歩けるようにはなったと思うんスけど……。
山は無理っぽいっスね。」
「ああ。あとは車で拾って貰う前にどんだけ歩けるかだなー。」
俺は既に諦めモードに入っていた。
「運動する習慣づけにこういう事、やってるっスからね。
やる事には意義はあるっス。」
「学園に行かなくなると全く運動をするという選択肢が無くなり。
運動をすると嫌な思い出もワンセットで思い浮かぶようになり。
運動自体をしないでいる内に身体がなまっていく訳だが。
それについては何にも説明しないからな。運動している人以外。」
碧が怨念のように運動への恨みつらみをボヤいているが何だかんだで自分は行かないのに俺たちと参加している辺り、文句を言いたいだけで運動そのものへの抵抗感は薄れているようだった。まあ、俺も恨みつらみはそう簡単には忘れないけどな。あれだけの恵まれた環境を自ら潰す教育って何よと言わない事はない。
「まあ、スポーツドリンク飲めよ。」
「すまないねえ。ゴホゴホ。」
半分息切れしているからマジの咳をしながら碧がスポーツドリンクを飲んでいる。
「そう言えば宮刻さん。」
「どうされたんス?」
「この後の銭湯なんですけど。」
「はいはい。他に何か予定でも入ったんス?」
碧が宮刻さん(好青年)に話しかけている。
「銭湯の後、ちょっと調べたいことがあるから。
こないだのカフェが付いてる図書館に行ってもいいです?」
「いいっスよ。お話のラストが決まったんス?」
「あ~、はい、そんな感じです。少し大きい話が作れそうだなって。」
「良かったっス! 俺が言わなくてもお話。
まとめられそうになったんスね!」
「そんな感じですね。数日、休んだら単なる疲れだったみたいで。」
「数日で治るんだから凄いっスよ!」
どうやら碧の不調はめずらしいと思ったが、梅雨と夏が入り組む季節の疲れやすさが追い込み作業に影響しただけのようで。急に描けるようになったと言い始めたらラストまで書ききってしまったようだった。
やっぱり碧って作業早かったんだな。あとは俺だが。俺も、秋(十一月)前には書けるようになろう……。
その季節だってどうせ熱いしアールヌーボーやアールデコって秋ぐらいでもいい気がするって既に逃げの体勢だが。
「それじゃあ次はミドリさんのラストを見られるっスね?」
「多分……調べものがまとまれば。あとなんですけど。」
「はいっス! 言ってくださいっス!」
「暫く熱さ負けしているから……冷たいもの食わせてください。」
「了解っス!」
好青年は嬉しそうに碧と受け答えしていた。
「私も丁度、冷たいものが欲しいと思っていたし。
この季節。やはり不調に気付けないと危ないかもしれないね。」
「そうっスね! 男の人も気を付けてくださいっス!」
好青年が男の人にも気を回すような口調で。元々そういう人なのかもしれないけど、気配りの人かもしれなかった。
・・・・・・・。
「それでは次に。ザインにも騎士としての能力を授けます。」
「はっ。」
アルセ様のお戯れの後、また俺の部屋に集まった面々で、再びクリスタルに映し出されたアルセ様に傅く俺たち。クリスタルの横にはアベリアと名乗るアルセ様もいるからややこしいのだが、今はそんな場合ではない。
「ザイン。ザインも……よろしくお願いします。」
ザインの肩にも儀式用の剣が向けられると。
ガシャアアアン! ドガッ!
「えっ。」
「うう……あっ。あああっ!」
窓から以前。ザインが追い払った……ヴァイクが転がってきた。
「ぐうう……ううっ。」
身体には傷が付いていて……深さまでは分からないが大分苦しそうだった。
「おい、どうしたんだよ。」
ザインが駆け寄り、ヴァイクの様子を見ようとすると。
「ふ、ふふ……ざまあないわね……アンタに助けられる……。
なん、て……。」
「おっ、おい!?」
ヴァイクはそのまま気絶してしまう。
「ええと、どうするんだ?」
「とりあえず介抱を。」
ザインの俺たちへの確認に、俺は迷わず救助を言おうとすると。
「おーっと! いいのか? そいつを助けちまってよおっ!」
ばさっ、ばさっ。
俺の部屋の割られた窓の前に……悪魔、モンスターの類が翼を持った姿で現れたようだ!
「弱ったサキュバスなんてそうそうお目に掛かれねえからねえ……。
捕まえてそのまま俺の手下にしようと思ったが……。
そいつも賢いんだねえ。サキュバスの仲間の所に逃げやがったか。」
「俺は仲間じゃねえよ!」
モンスターの言葉にザインが怒鳴るように言い返す。
「へ~っ。だったら見捨てても構わねえな?
おい、そいつを俺のところによこしな。」
「う、うう……だ、誰が、アンタの所に……。ゴホッ!」
ヴァイクは手負いに見えていたが、深手を負っていたようで口から血を吐いていた。
「おおっと。大人しくなるまで暫く蹴ってたが。
内臓にも来ちまってたか。随分といい感触だったぜ?」
「うう、う……。」
ヴァイクは身体を丸め込むようにしてうずくまっている。
「さ、怪我ぐらいしていようが悪魔なんだから関係ないだろ。
そっちにも何かあったみたいだし……。
始末するんなら自分の手じゃない方が丁度いいんじゃねえか?」
悪魔が窓からこちらに入り込もうとすると。
「それは断らせて貰おうか。」
俺が悪魔の前に立ちふさがる。
「ああん? 何でガキが俺の前に現れるんだ?」
「アル……アベリア様。今回の解除は何段階まで許可されますか?」
「そうですね……この悪魔を……撃退。
もしくは灰燼に帰するまでは許可します。」
「何だとオッ!? オッ……。」
「まずは……メイスの許可。」
「はい。」
俺は悪魔祓い用のメイスを持つとメイスにしては随分と……鈍器な見た目のメイスを……頭から振り下ろした!
ドギャッッ!
「ぐえ、え……っ。」
ザアアア……ッ。
「え……っ、あ、アンタ……。」
悪魔は一瞬で灰燼に帰していった。
「アンタ……エクソシストだったん……だ……。」
ヴァイクは珍しいのを見たようになると。安心したのか気絶してしまった。
・・・・・・・。
「お前ら、よく俺の事を払おうとしなかったな。」
「俺が仕える主は亜人の軍を率いるものだからな。
軍に入らないなら知らんが入ってくれるなら問題ない。」
「えっと。アルセ様はエクソシストじゃないのか?」
「違いますよ。そういう職能の人を迎え入れているだけで。
元々、教会からも認められていませんからね。」
随分と実在の国教や騎士と無関係な話になってきたなと思ったが、返す返すも、ここは地球じゃないから問題ないな!
ヴァイクはまだ気絶したままだったが。ザインと後始末をしながら話をして。窓ガラスが割れたのは悪魔の襲撃の際にこうなったと寮には伝えるつもりだった。その代わり。
「ヴァイクだけどよ。どうする?」
「どうするも、起きたら帰って貰おう。
傷が癒えれば悪魔なんだから。多分大丈夫だろう。」
「そうだな。どうしようもないよな。」
ザインがヴァイクを見ているがちらりと見た後は目線を向けないようにしていた。
「ザインらしくないな。心配しているのか?」
「心配って言うか、そうだな。
こんな事になって返ってくると思わなかった。
俺だって心配ぐらいするよ。サキュバスだしな。」
ザインは珍しく……と言っても自体がよく分からないが、大人しくなっていた。
「うう、うう……。」
ヴァイクはそれまでずっと、苦しそうにうなされていたが、声が変わり、安らかな声になった気がすると。
「あ……わ、私……? ああ、そうか……。
アンタらに助けられたのね。」
ヴァイクが目を覚まし、起き上がるようだ。
「回復したのか。それなら……。」
俺がヴァイクに寄り、話し掛けようとすると。
「私! アンタには恩があるわ! 暫く厄介になってあげる!」
「えっ。」
ヴァイクに手を握られ。そして……。
パアア……ッ。
「えっ。なにこれ……身体がどんどん回復していく……。」
「あ、あ、ああ……また。」
俺はヴァイクに回復に必要なエネルギーを手を介して送り込んでしまったようで。
「随分とザル判定だな。お前の手って。」
「い、いや! 今のはまだ限定解除されていないからで。」
「そうでした。戻しましょう。」
プツッ。
「あ……っ。動く。身体も……こんなに。」
ヴァイクは奇跡でも見た後のように手を握っては離している。実際、奇跡みたいなのだけどな。
力の供給は途切れたが。それでもヴァイクが身動きを取る程度には回復するのには十分な力を与えられたようだった。
「分かったわ! 暫くアンタの所にいてあげる!
ここまで世話になったんだから何でも面倒見るわよ!」
「えっ。それはどういう。」
「アンタの……家来になってやるって事よ!」
「え~……俺はもう主がいるのだが。」
――次の日――
「え~本日も転校生を紹介する。ヴァイクだ。」
「ヴァイクです。よろしくお願いします!
席はリステルの隣がいいです!」
ざわざわざわざわっ!
―― 一日ならず、二日目も美少女がリステルの隣に!? ――
――いやあ羨ましい前に何があったのかって話だがな!? ――
――何も修羅場が無い。こんなハーレムってアリかよおっ!? ――
クラスから悲鳴が沸いているようだが大丈夫だろうか。
「よろしくねっ! リステル!」
「ああ。よろしく。」
「ねーねー、そんなにそっけなくしないでよっ。仲良くしましょう?」
カツカツカツ。ドッ。
ヴァイクの隣にザインが座った。
「よろしくな。リステル。」
「な、何でザインまでこっちに来るんだ。」
「うるせえ。俺の回りがやかましいんだよ。静かにしてろ。」
「ふーんだ。随分と素直じゃないのね~。」
「素直だよ。これ以上ないくらい素直だっての!」
何故かヴァイクとザインの火花が散っている。
――え、なになに、リステル様をめぐってザイン様も参加しちゃうの!? ――
――私、リステル様はアベリア様とのカップリングだったんだけど次々に投下される。固定カプ無しの総受けなの!? ――
――やっぱり学園生だと男子同士のライバルは王道よね――
黄色い声も沸いているが大丈夫だろうか、このクラス。
「えーっと、席は決まったようだな。授業を始めるぞ。」
先生が何も見なかったように、授業を始めたのだった。
・・・・・・・。
「おお~。これで終わりっスか?」
「う~ん。見せ場って言うほど長丁場じゃなかったけど。
尺的にこんな感じでいいかと俺は思っている。
あとは挿絵作業だな。」
「お疲れさまでしたっス! 終わりはどうなるかと思ったけど。
俺の案も最初のミドリさんの案もナシにして。
それでもいいのが来たから俺としても嬉しいっス!」
「うん。決まったら一気にかけた。伏線も畳めたし。
やっぱり自分で考えたので最適解が来ると嬉しいわ。」
碧もそんなにまんざらじゃなさそうだった。
今はカフェのある図書館に来ているのだが、カフェでアイスクリーム盛り合わせを頼み、他の人は冷たい飲み物やフロートを頂いていて。シッカリ涼んだ所で碧の書いた小説を読ませて貰っていたのだった。
「へえ。シッカリ王道でまとめてきたね。」
男の人も最後まで書き終えたところで碧のも読んでくれていたようだった。
「俺の作品だと、そうした方がいいのと。
王道も書いときたいんですよね。」
「いいと思うよ。ヴァイクに関しては……。
ここまですると思わなかったけど。」
「あ~はい。そうですね。十八禁だからもういいかなと。」
碧だけでなく俺たちは元々、十八禁創作の人だったから、そっちに入った時の表現も手慣れたものだった。
「何とか十五禁ぐらいになりませんかね~。」
「危ない橋は渡らない方がいいよ。渡ったらレーティングに向かおう。」
男の人の言い分はその通りだった。
「いや~でもよかったっス! 碧さんがきちんと最後まで書けたっス!
俺、この前、言っちゃったから大丈夫か内心、心配だったっス!」
「ああ、確かにそんな事とかもあったような。
書き上げたから完全に忘れてたけど。」
「そんな事じゃないっス! でもよかったっス!」
碧も全然、気にしていないけど好青年さんも大変だなと思っていると。
「……ふむ。」
男の人がじっと碧から送られた文章を読んでいるようだった。
「気に入りました?」
「うん。気に入ったよ。バトルの仕方が……ちょっと君のみたいでね。
二人で打ち合わせとかしたの?」
「ああ、実は武器のチョイスに。
俺がボツにした武器をアイデア提供しました。」
「こういうので戦うつもりだったんだ。本当は。
それに魔払いってエクソシストみたいだからね。」
「図らずもネタが被ったけどこっちは偶然ですよ。」
「ははは。そこまでごっちゃになっちゃうと。
もうどっちか分からないね。」
「そうですね。気にしないで読んでいいと思いますよ。」
今日はこんな調子で話が進み。夕飯を食べに行く頃には碧の小説が小説パートを書き終えた打ち上げ会になっていた。
「歩くのってこんなに疲れたっけ……。」
「はー、はー……。」
碧、俺、男の人と、息も絶え絶えになった状態で、運動公園周辺の小高い丘もあるウォーキングコースを歩いていた。
「それじゃあ一旦、休憩にして、お水飲んでくださいっス。」
「ああ。ずまないね……俺がこんな調子じゃなかったら。
ゲホゲホっ。」
「おとっつあん、むせながら飲んだらお水でおぼれるわよ。」
「ゲホゲホっ。」
碧と俺が小芝居をしながら毎度のように持って来ているスポーツドリンクを飲んでいる。
「ごっごっごっ。」
既に男の人はラッパ飲みをしていた。
「前より歩けるようにはなったと思うんスけど……。
山は無理っぽいっスね。」
「ああ。あとは車で拾って貰う前にどんだけ歩けるかだなー。」
俺は既に諦めモードに入っていた。
「運動する習慣づけにこういう事、やってるっスからね。
やる事には意義はあるっス。」
「学園に行かなくなると全く運動をするという選択肢が無くなり。
運動をすると嫌な思い出もワンセットで思い浮かぶようになり。
運動自体をしないでいる内に身体がなまっていく訳だが。
それについては何にも説明しないからな。運動している人以外。」
碧が怨念のように運動への恨みつらみをボヤいているが何だかんだで自分は行かないのに俺たちと参加している辺り、文句を言いたいだけで運動そのものへの抵抗感は薄れているようだった。まあ、俺も恨みつらみはそう簡単には忘れないけどな。あれだけの恵まれた環境を自ら潰す教育って何よと言わない事はない。
「まあ、スポーツドリンク飲めよ。」
「すまないねえ。ゴホゴホ。」
半分息切れしているからマジの咳をしながら碧がスポーツドリンクを飲んでいる。
「そう言えば宮刻さん。」
「どうされたんス?」
「この後の銭湯なんですけど。」
「はいはい。他に何か予定でも入ったんス?」
碧が宮刻さん(好青年)に話しかけている。
「銭湯の後、ちょっと調べたいことがあるから。
こないだのカフェが付いてる図書館に行ってもいいです?」
「いいっスよ。お話のラストが決まったんス?」
「あ~、はい、そんな感じです。少し大きい話が作れそうだなって。」
「良かったっス! 俺が言わなくてもお話。
まとめられそうになったんスね!」
「そんな感じですね。数日、休んだら単なる疲れだったみたいで。」
「数日で治るんだから凄いっスよ!」
どうやら碧の不調はめずらしいと思ったが、梅雨と夏が入り組む季節の疲れやすさが追い込み作業に影響しただけのようで。急に描けるようになったと言い始めたらラストまで書ききってしまったようだった。
やっぱり碧って作業早かったんだな。あとは俺だが。俺も、秋(十一月)前には書けるようになろう……。
その季節だってどうせ熱いしアールヌーボーやアールデコって秋ぐらいでもいい気がするって既に逃げの体勢だが。
「それじゃあ次はミドリさんのラストを見られるっスね?」
「多分……調べものがまとまれば。あとなんですけど。」
「はいっス! 言ってくださいっス!」
「暫く熱さ負けしているから……冷たいもの食わせてください。」
「了解っス!」
好青年は嬉しそうに碧と受け答えしていた。
「私も丁度、冷たいものが欲しいと思っていたし。
この季節。やはり不調に気付けないと危ないかもしれないね。」
「そうっスね! 男の人も気を付けてくださいっス!」
好青年が男の人にも気を回すような口調で。元々そういう人なのかもしれないけど、気配りの人かもしれなかった。
・・・・・・・。
「それでは次に。ザインにも騎士としての能力を授けます。」
「はっ。」
アルセ様のお戯れの後、また俺の部屋に集まった面々で、再びクリスタルに映し出されたアルセ様に傅く俺たち。クリスタルの横にはアベリアと名乗るアルセ様もいるからややこしいのだが、今はそんな場合ではない。
「ザイン。ザインも……よろしくお願いします。」
ザインの肩にも儀式用の剣が向けられると。
ガシャアアアン! ドガッ!
「えっ。」
「うう……あっ。あああっ!」
窓から以前。ザインが追い払った……ヴァイクが転がってきた。
「ぐうう……ううっ。」
身体には傷が付いていて……深さまでは分からないが大分苦しそうだった。
「おい、どうしたんだよ。」
ザインが駆け寄り、ヴァイクの様子を見ようとすると。
「ふ、ふふ……ざまあないわね……アンタに助けられる……。
なん、て……。」
「おっ、おい!?」
ヴァイクはそのまま気絶してしまう。
「ええと、どうするんだ?」
「とりあえず介抱を。」
ザインの俺たちへの確認に、俺は迷わず救助を言おうとすると。
「おーっと! いいのか? そいつを助けちまってよおっ!」
ばさっ、ばさっ。
俺の部屋の割られた窓の前に……悪魔、モンスターの類が翼を持った姿で現れたようだ!
「弱ったサキュバスなんてそうそうお目に掛かれねえからねえ……。
捕まえてそのまま俺の手下にしようと思ったが……。
そいつも賢いんだねえ。サキュバスの仲間の所に逃げやがったか。」
「俺は仲間じゃねえよ!」
モンスターの言葉にザインが怒鳴るように言い返す。
「へ~っ。だったら見捨てても構わねえな?
おい、そいつを俺のところによこしな。」
「う、うう……だ、誰が、アンタの所に……。ゴホッ!」
ヴァイクは手負いに見えていたが、深手を負っていたようで口から血を吐いていた。
「おおっと。大人しくなるまで暫く蹴ってたが。
内臓にも来ちまってたか。随分といい感触だったぜ?」
「うう、う……。」
ヴァイクは身体を丸め込むようにしてうずくまっている。
「さ、怪我ぐらいしていようが悪魔なんだから関係ないだろ。
そっちにも何かあったみたいだし……。
始末するんなら自分の手じゃない方が丁度いいんじゃねえか?」
悪魔が窓からこちらに入り込もうとすると。
「それは断らせて貰おうか。」
俺が悪魔の前に立ちふさがる。
「ああん? 何でガキが俺の前に現れるんだ?」
「アル……アベリア様。今回の解除は何段階まで許可されますか?」
「そうですね……この悪魔を……撃退。
もしくは灰燼に帰するまでは許可します。」
「何だとオッ!? オッ……。」
「まずは……メイスの許可。」
「はい。」
俺は悪魔祓い用のメイスを持つとメイスにしては随分と……鈍器な見た目のメイスを……頭から振り下ろした!
ドギャッッ!
「ぐえ、え……っ。」
ザアアア……ッ。
「え……っ、あ、アンタ……。」
悪魔は一瞬で灰燼に帰していった。
「アンタ……エクソシストだったん……だ……。」
ヴァイクは珍しいのを見たようになると。安心したのか気絶してしまった。
・・・・・・・。
「お前ら、よく俺の事を払おうとしなかったな。」
「俺が仕える主は亜人の軍を率いるものだからな。
軍に入らないなら知らんが入ってくれるなら問題ない。」
「えっと。アルセ様はエクソシストじゃないのか?」
「違いますよ。そういう職能の人を迎え入れているだけで。
元々、教会からも認められていませんからね。」
随分と実在の国教や騎士と無関係な話になってきたなと思ったが、返す返すも、ここは地球じゃないから問題ないな!
ヴァイクはまだ気絶したままだったが。ザインと後始末をしながら話をして。窓ガラスが割れたのは悪魔の襲撃の際にこうなったと寮には伝えるつもりだった。その代わり。
「ヴァイクだけどよ。どうする?」
「どうするも、起きたら帰って貰おう。
傷が癒えれば悪魔なんだから。多分大丈夫だろう。」
「そうだな。どうしようもないよな。」
ザインがヴァイクを見ているがちらりと見た後は目線を向けないようにしていた。
「ザインらしくないな。心配しているのか?」
「心配って言うか、そうだな。
こんな事になって返ってくると思わなかった。
俺だって心配ぐらいするよ。サキュバスだしな。」
ザインは珍しく……と言っても自体がよく分からないが、大人しくなっていた。
「うう、うう……。」
ヴァイクはそれまでずっと、苦しそうにうなされていたが、声が変わり、安らかな声になった気がすると。
「あ……わ、私……? ああ、そうか……。
アンタらに助けられたのね。」
ヴァイクが目を覚まし、起き上がるようだ。
「回復したのか。それなら……。」
俺がヴァイクに寄り、話し掛けようとすると。
「私! アンタには恩があるわ! 暫く厄介になってあげる!」
「えっ。」
ヴァイクに手を握られ。そして……。
パアア……ッ。
「えっ。なにこれ……身体がどんどん回復していく……。」
「あ、あ、ああ……また。」
俺はヴァイクに回復に必要なエネルギーを手を介して送り込んでしまったようで。
「随分とザル判定だな。お前の手って。」
「い、いや! 今のはまだ限定解除されていないからで。」
「そうでした。戻しましょう。」
プツッ。
「あ……っ。動く。身体も……こんなに。」
ヴァイクは奇跡でも見た後のように手を握っては離している。実際、奇跡みたいなのだけどな。
力の供給は途切れたが。それでもヴァイクが身動きを取る程度には回復するのには十分な力を与えられたようだった。
「分かったわ! 暫くアンタの所にいてあげる!
ここまで世話になったんだから何でも面倒見るわよ!」
「えっ。それはどういう。」
「アンタの……家来になってやるって事よ!」
「え~……俺はもう主がいるのだが。」
――次の日――
「え~本日も転校生を紹介する。ヴァイクだ。」
「ヴァイクです。よろしくお願いします!
席はリステルの隣がいいです!」
ざわざわざわざわっ!
―― 一日ならず、二日目も美少女がリステルの隣に!? ――
――いやあ羨ましい前に何があったのかって話だがな!? ――
――何も修羅場が無い。こんなハーレムってアリかよおっ!? ――
クラスから悲鳴が沸いているようだが大丈夫だろうか。
「よろしくねっ! リステル!」
「ああ。よろしく。」
「ねーねー、そんなにそっけなくしないでよっ。仲良くしましょう?」
カツカツカツ。ドッ。
ヴァイクの隣にザインが座った。
「よろしくな。リステル。」
「な、何でザインまでこっちに来るんだ。」
「うるせえ。俺の回りがやかましいんだよ。静かにしてろ。」
「ふーんだ。随分と素直じゃないのね~。」
「素直だよ。これ以上ないくらい素直だっての!」
何故かヴァイクとザインの火花が散っている。
――え、なになに、リステル様をめぐってザイン様も参加しちゃうの!? ――
――私、リステル様はアベリア様とのカップリングだったんだけど次々に投下される。固定カプ無しの総受けなの!? ――
――やっぱり学園生だと男子同士のライバルは王道よね――
黄色い声も沸いているが大丈夫だろうか、このクラス。
「えーっと、席は決まったようだな。授業を始めるぞ。」
先生が何も見なかったように、授業を始めたのだった。
・・・・・・・。
「おお~。これで終わりっスか?」
「う~ん。見せ場って言うほど長丁場じゃなかったけど。
尺的にこんな感じでいいかと俺は思っている。
あとは挿絵作業だな。」
「お疲れさまでしたっス! 終わりはどうなるかと思ったけど。
俺の案も最初のミドリさんの案もナシにして。
それでもいいのが来たから俺としても嬉しいっス!」
「うん。決まったら一気にかけた。伏線も畳めたし。
やっぱり自分で考えたので最適解が来ると嬉しいわ。」
碧もそんなにまんざらじゃなさそうだった。
今はカフェのある図書館に来ているのだが、カフェでアイスクリーム盛り合わせを頼み、他の人は冷たい飲み物やフロートを頂いていて。シッカリ涼んだ所で碧の書いた小説を読ませて貰っていたのだった。
「へえ。シッカリ王道でまとめてきたね。」
男の人も最後まで書き終えたところで碧のも読んでくれていたようだった。
「俺の作品だと、そうした方がいいのと。
王道も書いときたいんですよね。」
「いいと思うよ。ヴァイクに関しては……。
ここまですると思わなかったけど。」
「あ~はい。そうですね。十八禁だからもういいかなと。」
碧だけでなく俺たちは元々、十八禁創作の人だったから、そっちに入った時の表現も手慣れたものだった。
「何とか十五禁ぐらいになりませんかね~。」
「危ない橋は渡らない方がいいよ。渡ったらレーティングに向かおう。」
男の人の言い分はその通りだった。
「いや~でもよかったっス! 碧さんがきちんと最後まで書けたっス!
俺、この前、言っちゃったから大丈夫か内心、心配だったっス!」
「ああ、確かにそんな事とかもあったような。
書き上げたから完全に忘れてたけど。」
「そんな事じゃないっス! でもよかったっス!」
碧も全然、気にしていないけど好青年さんも大変だなと思っていると。
「……ふむ。」
男の人がじっと碧から送られた文章を読んでいるようだった。
「気に入りました?」
「うん。気に入ったよ。バトルの仕方が……ちょっと君のみたいでね。
二人で打ち合わせとかしたの?」
「ああ、実は武器のチョイスに。
俺がボツにした武器をアイデア提供しました。」
「こういうので戦うつもりだったんだ。本当は。
それに魔払いってエクソシストみたいだからね。」
「図らずもネタが被ったけどこっちは偶然ですよ。」
「ははは。そこまでごっちゃになっちゃうと。
もうどっちか分からないね。」
「そうですね。気にしないで読んでいいと思いますよ。」
今日はこんな調子で話が進み。夕飯を食べに行く頃には碧の小説が小説パートを書き終えた打ち上げ会になっていた。
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