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5.聖女

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「よし!明日実技テストするぞ!」

入学式が無事終わり、入学おめでとう!という子供じみた先生の言葉の次に発せられた言葉だ。

この中の子供たちにはまだ魔法を習っていない子供も居る。
幼い頃から魔法に触れているのはごく限られた子供たちだけなのだ。
その子供たちに魔法を見せる、そして魔法を使える子供たちのレベルを見るのだそう。

何故か先生は僕の方をチラチラ見ていたが。

そしてその後すぐに解散だ。

僕のクラス、1年3組は仲が良いクラスだ。
でも、僕の近くには必ずスィーが居たので男子話しかけづらそうだった。

「スィー…。」

バッグを持って歩きながら周りを警戒しているスィーに僕は話しかける。

「なんでしょうか。殿下。」

真剣そのものの声音が聞こえてきた。
僕は呆れつつ、

「僕に攻撃仕掛けてくる人なんて居ないから。」
「分かりませんよ。」

即答。
僕は肩を落とす。

こんなんじゃ、友達出来ないよ…。

「その…僕の近くにいてはいいけどね、あまり皆にガン飛ばさないでくれる?」

スィーはちょこんと首を傾げると、

「私、ガン飛ばしてませんよ?ただ、周りを警戒しているだけです。」

…その時の目つきが結構キツイんじゃない?

何故か自覚なしのスィーに僕は少々呆れる。
そして歩き続けていると、校舎から出て、校門へ向かう。

「…ん?」

すると、僕は校門にワラワラと女子が大量にたむろしているのを見つけた。

「…皆、あそこで何をしているんだろう。」

僕が呟くと、スィーは何やら悪戯っぽく笑う。

「行ってみましょうよ、殿下!」
「え…あ、うん…。」

スィーに引っ張られる形で女子の集まりへ歩いていく僕。
その中心に居たのは…。

「デュ…」

驚きで思わず彼の名前を読んでしまうことろだった。

そう、その中心に居たのは僕の護衛のデュラだ。

デュラは困ったように両手を使って女子たちを牽制している。

「バグローグス様ぁ!どうしてここに?」
「きゃあ!イケメぇーン!!」
「どなたかの護衛ですか?」
「恋人いますかぁ?居ないなら私の事を覚えておいてくださいね!」

きゃあきゃあ、ぎゃあぎゃあ。

スィーはそのことを知っていたらしい。
僕は、珍しくおろおろしているデュラにどこか悪戯心が湧いた。

「スィー、行こっか!」
「うん、ソラくん!」

笑顔でクルリと踵を返す僕とスィー。

「あっ!ソ、ソラさぁーん!待ってくださぁーい!!」

ようやく僕らがいることに気付いたデュラ。
泣きそうに叫ぶデュラを見て笑いが込み上げてくる。
スィーは既に肩を震わせている。

「だって、デュラ。遅いんだもーん。」

僕がそう言うと、デュラは頑張って女子たちを押しのけて僕の元に辿り着いた。

「見捨てるなんてひどいですよ!」

スィーは悲鳴のようなその声に思わず声に出してしまいそうになって慌てて抑えた。
僕はまた込み上げてきた笑いを必死に飲み込み、

「だって、楽しそうだったんだもん。」

僕がそう言うと、

「全然楽しくなかったですよ!」

と叫び返された。
笑い合いながら僕らは帰途へつく。
隣のスィーは楽しそうに着いてきている。

そして隠し通路を使って王宮に戻っている時だった。
うなじにピリッとつく殺気を感じた。
それはとてつもなく微小でデュラさえも気付いていない。

「…なんだ…今の…。」

僕は呟いたが、それはピッタリと寄り添っているスィーにも聞こえないほど小さい声だった。

すると、

「殿下、私はここから家へ向かいます。」

とスィーが言った。
僕は頷いた。そして、

「気をつけてね。お母様やお父様によろしくね。あと、また焼き立てのパン待ってます、とも伝えておいて。」

と言う。 
スィーはニッコリと笑い、元気よく返事をした。

「はいっ!」

スィーは走り出す。

スィー・レンジュ。本名、スィーファリア・エンジュは平民の子だ。
しかし、彼女はその美しい容姿と、とてつもない程の魔力をもった天才。
それ故、貴族と同じ待遇を受けており、僕の婚約者にもなれた。

なんでも、兄であるユインもスィーの事に恋しているのだとか。
しかし、彼女の方から好きになってくれたのでスィーと僕はお付き合いしているのだ。

スィーのステータスはこうだ。
ーーーーーー
  ーーーーーーーー
スィーファリア・エンジュ
年齢 9
性別 女
職業 聖女 パン屋の娘
LV  62
HP 2558/3500
MP 9000/10000

スキル 料理 LV92
    掃除 LV69
    知能 LV55
    戦闘 LV32
     細剣 LV33
            長剣  LV12
    魔法 LV3000
     火 LV2100
            水   LV3500
     風 LV1960
     土 LV690
     光 LV6000
     闇 LV450
       付与 LV4420

特殊スキル 身体回復 LV63
      魔力回復 LV59
      物質回復 LV32

称号 聖女
   レイン・ファンタジアの婚約者
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  ーーーーーーーー
となる。
見ての通り、魔法の数値が異常なのがお分かりだろうか。

全体のレベルとしては僕の方が断然上だが、魔法での戦闘になったら僕は負けるだろう。

そんな彼女の存在は世間には極秘にされているが、どこからかスィーの美貌や強さを耳にした貴族共がスィーを狙ってくる事もしばしばあると聞く。

でも、僕が絶対に守る!
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