Clear Color

松山秋ノブ

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Clear Color.7(Side B)

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 あの・・・と声を掛けようとすると、向こうから「こんにちは」と挨拶をしてきた。どうみても中学生には見えない。僕の塾は小学生と中学生の専門だから、高校生は受け付けていない。咄嗟に過去の卒業生ではないか、と思った。僕自身ももうここに勤めてそこそこ長くなるけれども、それでもそれより前の卒業生が遊びに来ることが、これまでも何度かあった。きっとその類に違いない。ただ、少しだけ不安そうに立つその姿が、僕の答えを揺らがせた。

「ここの卒業生の方ですか」

 僕は平静を保って訊くと、少女はいや、と言って首を横に振った。そうすると、生徒の姉か、それとも新しく塾に入ろうとしているのかの二択しかない。もしも後者ならば、残念だけれども断らなくてはならない。何度も言うが、うちの塾は高校生を対象にしていないのだ。

「あの・・・」

改めて少女は声を掛けてきた。

「森下さんという先生に会いに来たんですけど・・・」

それは紛れもなく僕の名前だった。名指しで来たのであれば、入会希望ではないのかもしれない。予想外の彼女の言葉に僕はますます混乱してきた。

「あの・・・生徒のご家族の方ですか」

と訊くと、いえ、そうじゃないんです。とまた首を横に振った。僕は状況が飲み込めずに、ますます訳が分からなくなった。一体目の前の少女は誰なのだろう。

「僕が森下ですが、何か御用ですか」

そう返すのが精一杯だった。この状況下では、相手に説明を求めるしか、もはや手段が無かったのだ。僕が森下であることを名乗ると、少女はちょっと顔に明るさを見せた。そして、いそいそとカバンに手を突っ込んで、奥から紙切れのようなものを出した。1枚の写真だった。

「この人、知ってますよね」

写真を渡されて、見てみると、そこには良く見覚えのある人物が映っていた。友人のミサだった。ミサ。という名前を言いかけて、寸前で止めた。ミサは愛称であり、それが本名ではなかった。確かミサキ・・・という名前だったと思う。けれど、余りに愛称で呼び過ぎて本名の漢字さえ浮かぶことが難しい。ミサも僕のことを本名とは全く関係のないフミと呼んでいた。僕とミサはそういう奇妙な仲だった。

 知っていますよ、とだけ答えると、少女は改まって自己紹介をした。

「私、妹の麻衣子といいます、森下さんが姉の友人だということを知って会いに来たんです」

先程にも増して少女の顔色は明るくなっていた。しかし、何故だろう、少し悲しそうに見えた。心なしか涙ぐんでいるように見える。そもそもミサの妹が何故自分を訪ねてくるのかが分からなかった。妹がいるということさえミサから聞いていたけれど、会ったこともなければ、見たこともない。

「それで・・・あの・・・」

僕の疑問や不安を飲み込むように少女は私に上目づかいをしてきた。その仕草は、何か頼みごとをするときのミサに良く似ていた。

「あの・・・姉を捜してほしいんです」

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