Clear Color

松山秋ノブ

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Clear Color.14(Side B)

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 新百合ヶ丘駅のホームに着くと、彼女は既に改札口で待っていた。僕が改札を出ようとすると、慌ててそれを止めた。どうやら、そのまま小田急に乗っていくらしい。彼女の格好は昨日と違っていた。昨日は原色に近い服装で若めの高校生に見えたが、今日は私服ということもあって、見た目では年齢が分からなかった。まぁ、20歳を超えているとまでは思わないが、とても大人っぽいことに違いはなかった。白いブラウスに少し薄手のカーディガン。薄水色のスカートはこの季節にはちょっと早い、夏を感じさせた。彼女の姿を見て、僕はミサの格好を思い出そうとしていた。昨日、ミサの妹である彼女にあって分かったことがある。それは、僕がミサのことを少しずつ忘れていっているということだ。ミサの顔や声は忘れてはいない。ましてや話したことも覚えている。お互いの観た映画の感想、ミサも僕もドンパチやるような派手な映画は好きじゃなかった。どちらかというと、誰も観たがらないような暗くて重い地味な映画が好きだった。地味な映画を地方の映画館で観ようとするとかなり数が限られる。だから、僕らが話す映画は大概同じ映画だった。同じ映画の話題をするならば、一緒に観に行けば良かったのではないかと思うが、それはしたことがなかった。時間の都合が合わなかったのか、よく覚えてはいない。とにかく、お互いが観た同じ映画の話題で盛り上がったことは確かだった。

 それなのに何故だろう。ミサが食べたものや着ていた服、どんな風に呼吸をしていたかすら、とてもぼんやりと霞みかけている。はっきりと浮かぶ輪郭に、顔より下がモザイク調になっている。でもミサがいない訳ではない。ミサは確かに頭の中にいる。笑っている、動いている。でも、映画の中身やセリフは覚えていても、服装を覚えていないのと同じで、僕の中のミサは確実に忘れられようとしていた。

 彼女の服はミサと同じだったろうか。全く同じではなくても、似ているだろうか。彼女の服をミサに当てはめても、ミサは浮かび上がってはこなかった。妹とはいえ、やはりミサと彼女とは違っていた。違っていないのかもしれない。でもそれを知るには、僕は彼女のこともミサのことも知らなすぎた。

 彼女に促されるように、僕らは真ん中の階段を下っていった。普段は使わないそのホームへと向かう僕は、彼女の後ろ姿を見ながら、やはりミサのことを思い出そうとしていた。
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