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Clear Color.24(Side B)
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横断歩道を過ぎると、ちょっと開けた通りに出る。テレビでも見たことのある有名な通り、お昼に近いこともあって、ライトアップも何もされていないその通りはそこまで綺麗だという空気もないが、その先にそびえたつ電波塔は不思議な存在感を放っている。東海道五十三次の橋というべきか、富嶽三十六景の赤富士というべきか、はたまたアニエールの水浴の何かを見つめる男の子というべきか。そんな風景に彼女は興奮したのか、より小走りになって、わぁ、や、すごい、を繰り返した。写真を撮ってあげようか、と言うと、笑って携帯電話を差しだした。はしゃぐ様子はやはり高校生そのものだった。大学生、といっても、それはほんの数日間の話で、まだあどけなさが残っている。初めて見た時から大人っぽさを感じていたので、こうした姿はほっとした。変な意味じゃなくて、子どもは子どもらしい方が良い、僕はそう思うのだ。まぁ、僕自身が子どもっぽくない子どもだったということも大きいが、もっと無邪気に何でも楽しむことができれば良かったと思うことがこれまでに何度もあったからだ。子どもの頃は、せっかく連れて行ってもらった動物園で、ゾウの檻に行くことを嫌がって父親を相当不機嫌にさせた。ゾウの臭いが嫌だったということが原因だった。もっと動物園という状況を無邪気に楽しんでいれば、こうしたことは無かったかもしれない。若しくは、その時の父親の状況、不景気さとか、せっかくの休みを家族サービスに充てる気前をちゃんと理解していれば、もっと違っていたかもしれない。僕はこうしたことを考えられる「大人」ではなく、あくまでも「大人っぽい」というだけで、全然人の優しさとか、支えとか、そういったものに気付けない人間だったのだ。
「森下さんも撮ってあげましょうか」
不意に彼女に言われて、つい、あぁ、うん。と言ってしまった。僕はもうあの頃とは違って「大人」になってしまったと思う。無邪気でいたいという気持ちが強くて、未だに生徒からは「子どもみたい」だと言われているけれども、それはあくまでも「大人」の自分が「子どもっぽい大人」を演じているだけ、素直な気持ちや無邪気さは持ち合わせていない。しかもそれは友人とか、生徒とか、そういった人の前でしか発揮しないから、こうした状況では子どもっぽくいる必要が無かったのに。まぁ、言ってしまったものは仕方がないから、僕も写真を撮ってもらった。数えるほどとはいえ、これまで来たことがあるにも関わらず、写真を撮ったのは初めてだと思う。本来写真も嫌いだった。
「初めて来たけど、いや、大きいですね」
電波塔を見上げて彼女は呟いた。ちょっと首が痛くなるくらいまで見上げないと、もう先までは見ることができない。ここに来たのは初めてなの、と訊くと、彼女は見上げたまま、そうですよ、と返した。あの無邪気さを見れば一目瞭然ではあったが、それでも一応訊いておきたかったのだ。
「ちなみに、今日、ここに来たのは何故?」
僕は彼女に尋ねた。
「森下さんも撮ってあげましょうか」
不意に彼女に言われて、つい、あぁ、うん。と言ってしまった。僕はもうあの頃とは違って「大人」になってしまったと思う。無邪気でいたいという気持ちが強くて、未だに生徒からは「子どもみたい」だと言われているけれども、それはあくまでも「大人」の自分が「子どもっぽい大人」を演じているだけ、素直な気持ちや無邪気さは持ち合わせていない。しかもそれは友人とか、生徒とか、そういった人の前でしか発揮しないから、こうした状況では子どもっぽくいる必要が無かったのに。まぁ、言ってしまったものは仕方がないから、僕も写真を撮ってもらった。数えるほどとはいえ、これまで来たことがあるにも関わらず、写真を撮ったのは初めてだと思う。本来写真も嫌いだった。
「初めて来たけど、いや、大きいですね」
電波塔を見上げて彼女は呟いた。ちょっと首が痛くなるくらいまで見上げないと、もう先までは見ることができない。ここに来たのは初めてなの、と訊くと、彼女は見上げたまま、そうですよ、と返した。あの無邪気さを見れば一目瞭然ではあったが、それでも一応訊いておきたかったのだ。
「ちなみに、今日、ここに来たのは何故?」
僕は彼女に尋ねた。
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