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Clear Color.28(Side B回想)
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「それで、フミは新曲の歌詞についてどう思う」
ミサは僕がどんなことをしている時も平気で話しかけてくる。その日も僕は考え事をしながら街中を歩いていた。まぁ、特に何もしていなかったといえばそうなので、別に話しかけられるのは不自然なことではない。そんなことでいちいち「割り込んできた」と思うのは、僕のわがままなところなのかもしれない。ミサにも全く悪気は無いので、僕はミサの質問に答える準備をする。ミサが言っている「新曲」とは、きっと来週発売される共通に好きなバンドの新曲のことだ。田舎に住んでいると、なかなか新曲の情報は入ってこない。都会では発売前の早々に情報が手に入るのに対して、田舎では発売直前がほとんどだ。下手をすると、発売をしてから新曲の存在に気づく、なんてこともある。僕にもミサにも、そのバンドの新曲の情報が耳に入ってきてからすぐの出来事だった。
「ミサはどう思うんだよ。」
思考や情報を整理するために僕はミサに話を振る。ミサは勉強の面ではそんなに頭は良くなかったけれど、自分の考えをしっかりと持っている人間だった。それと同時に、話している相手の考えもしっかりと読める人間だった。うかつに口から出まかせをミサに話すことはできない。けれども、この時間稼ぎも無駄だということは分かっている。
「いや、フミの考えを聞かせてよ」
そう、いつだってミサの方が一枚上手だ。僕はいつもそれにやられてしまう。分かっているなら始めからそんな質問返しをしなければいいのにと思うかもしれない。けれども僕はそんなミサに負けてしまうことが何となく好きなのかもしれなかった。あちゃ、またやられてしまったか、やっぱりミサには敵わないな。と言いながら僕は苦笑の中に幸せを感じているのかもしれない。
「あ~、まだちょっと考えがまとまってない」
僕は正直に話す。ミサに嘘は通じない。通じているのかもしれない。けれど、きっとミサは嘘を見破ってもそれを追及したりはしない。分かっていて彼女は話を合わせようとする。そんなミサを見るのはちょっと心苦しい。じゃぁ、そこの店で考えをまとめようよ。とミサと僕はちょっと古いカフェに入った。流行に乗ったがやがやした店よりは、落ち着いた雰囲気の店の方が考えがまとまりやすいということもミサは知っている。そういう細かいところも含めて、ミサはやっぱり僕のことをよく分かっているんだと思う。ミサの提案は僕の意見を外したことがない。好きな音楽も好きな映画も好きな本も外さない。もしかしたら外していないのではなくて、そもそも思考が似ているのかもしれなかった。ミサには深い考えが無くて、ただ単純に心のままに動いていることが僕と重なっていたのかもしれない。それでも、僕はどちらでも良かった。これまでの人生でこんなに自分を分かってもらえたことは無かった気がする。まぁ、人間付き合いなんてそんなもんだ、と思っていた節もあるけれど。
テーブルに着くと、ミサはメニューをにこにこしながら見始めた。お腹が空いていたのかもしれない、デザートのページを見ては、あれもいい、これもいい、と迷っている。しばらくして、よしっ、と言うと、僕にメニューを見せた。
「私は決まったよ。フミは」
僕はこういう場所で迷うことは余り無く、すぐに決めてしまう。
「じゃぁ、オレはメロンソーダで。」
ミサは僕がどんなことをしている時も平気で話しかけてくる。その日も僕は考え事をしながら街中を歩いていた。まぁ、特に何もしていなかったといえばそうなので、別に話しかけられるのは不自然なことではない。そんなことでいちいち「割り込んできた」と思うのは、僕のわがままなところなのかもしれない。ミサにも全く悪気は無いので、僕はミサの質問に答える準備をする。ミサが言っている「新曲」とは、きっと来週発売される共通に好きなバンドの新曲のことだ。田舎に住んでいると、なかなか新曲の情報は入ってこない。都会では発売前の早々に情報が手に入るのに対して、田舎では発売直前がほとんどだ。下手をすると、発売をしてから新曲の存在に気づく、なんてこともある。僕にもミサにも、そのバンドの新曲の情報が耳に入ってきてからすぐの出来事だった。
「ミサはどう思うんだよ。」
思考や情報を整理するために僕はミサに話を振る。ミサは勉強の面ではそんなに頭は良くなかったけれど、自分の考えをしっかりと持っている人間だった。それと同時に、話している相手の考えもしっかりと読める人間だった。うかつに口から出まかせをミサに話すことはできない。けれども、この時間稼ぎも無駄だということは分かっている。
「いや、フミの考えを聞かせてよ」
そう、いつだってミサの方が一枚上手だ。僕はいつもそれにやられてしまう。分かっているなら始めからそんな質問返しをしなければいいのにと思うかもしれない。けれども僕はそんなミサに負けてしまうことが何となく好きなのかもしれなかった。あちゃ、またやられてしまったか、やっぱりミサには敵わないな。と言いながら僕は苦笑の中に幸せを感じているのかもしれない。
「あ~、まだちょっと考えがまとまってない」
僕は正直に話す。ミサに嘘は通じない。通じているのかもしれない。けれど、きっとミサは嘘を見破ってもそれを追及したりはしない。分かっていて彼女は話を合わせようとする。そんなミサを見るのはちょっと心苦しい。じゃぁ、そこの店で考えをまとめようよ。とミサと僕はちょっと古いカフェに入った。流行に乗ったがやがやした店よりは、落ち着いた雰囲気の店の方が考えがまとまりやすいということもミサは知っている。そういう細かいところも含めて、ミサはやっぱり僕のことをよく分かっているんだと思う。ミサの提案は僕の意見を外したことがない。好きな音楽も好きな映画も好きな本も外さない。もしかしたら外していないのではなくて、そもそも思考が似ているのかもしれなかった。ミサには深い考えが無くて、ただ単純に心のままに動いていることが僕と重なっていたのかもしれない。それでも、僕はどちらでも良かった。これまでの人生でこんなに自分を分かってもらえたことは無かった気がする。まぁ、人間付き合いなんてそんなもんだ、と思っていた節もあるけれど。
テーブルに着くと、ミサはメニューをにこにこしながら見始めた。お腹が空いていたのかもしれない、デザートのページを見ては、あれもいい、これもいい、と迷っている。しばらくして、よしっ、と言うと、僕にメニューを見せた。
「私は決まったよ。フミは」
僕はこういう場所で迷うことは余り無く、すぐに決めてしまう。
「じゃぁ、オレはメロンソーダで。」
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