Clear Color

松山秋ノブ

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Clear Color.29(Side B回想)

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 メロンソーダで、と言った後で、あっ、と思った。そして、やっぱりちょっと待ってください、とメニューを広げてみた。慌てすぎてメニューの文字なんて全然入ってこなかったけれど、それでも変えなきゃと思った。別にミサにいいところを見せようとかそういうことじゃない。でも何か自分の弱みを見られたみたいでつい反射的にやってしまった。

「えっ、メニュー間違えたの?」

ミサが身を乗り出して僕のメニューを覗き込んでくる。僕も咄嗟のことでメニューを変えようとしたから、何か上手く返すことが出来なくて、あっうん、としか言えなかった。そうなんだ、とミサは言うと、何か僕のことをじろじろと見始めた。何だよ、と僕が怪訝そうに目を逸らそうとすると、ミサはひゅっと僕のメニューを取って、そしてメニューをしまって店員さんに改めて言った。

「ごめんなさい、やっぱりメロンソーダ2つで。」

へぇ、と僕は力の抜けた声を出してしまった。

「これでいいでしょ。私もメロンソーダが飲みたかったし。」

余りの笑顔であっさりと言われるものだから。僕ももう、あぁ、としか言えなかった。ミサはどこまで僕のことを分かっているのだろうか。それとも慌てる僕の姿を見かねて、とりあえずメロンソーダを2つと言ってみただけなのだろうか。考えても結論は出そうになかった。メニューが決まった後もちょっと不思議そうな顔をしていたからであろうか、

「メニューも決まったし、さっきの話の続きをしようよ。」

とミサが改めて身を乗り出してきた。

「私はこの曲の『もういいかい、まだだよ。を繰り返して振りかえってそこにあったのは、もう君が微笑まない世界』っていう部分の歌詞が気になっているんだけど。」

「それはオレもそう思っていたよ。ミサが気になっていたのは、良い意味?」

「うん、本当は良い意味なんだけど、ちょっと足りない気がする。」

ミサの言葉に僕の気分も高揚してくる。

「オレもそうなんだよ。で、考えたんだけど。」

「おっ、表現者としての意見やね。どう変えたら良いと思う?」

「オレはね、この『振り返ってそこにあったのは』という部分が良くないと思うんだ」

「おぉ、どういう風に?」

「この『もういいかい、まだだよ』っていうのは2人のやり取りだよな」

「きっとそうだろうね。」

「だから『振り返って君が微笑まない』のは、そのやり取りの結果、2人が選んだことだと思うんだ」

「確かにそうだね。」

ミサが感心して頷いている。

「だからここは『もういいかい、まだだよを繰り返して、振り返って手に入れたのは、もう君が微笑まない世界』にした方が良いと思う」

「『手に入れる』かぁ。良くないことを手に入れるってちょっと変じゃない?」

「確かにそうだね。でも、良いことも悪いこともきっと、これまでのすべてのことを考えても、やっぱり自分で選択して手に入れてきたんだと思う」

「フミもそうなの?」

ミサの言葉に僕はこれまでの自分のことを思い出してみた。

「そうだね、良いことも悪いことも自分で選んできたんだと思う。」
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