36 / 42
Clear Color.34(Side B)
しおりを挟む
「けれど」
彼女は一瞬言いかけて止めた。その表情はちょっと言ってはいけないことをつい言い過ぎてどきりとしたようなものだった。だから僕は、何?と敢えて訊いてみた。
「いや、ちょっと思っただけです。」
何を?と言うと、僕の返答が予想の範囲内だったからだろうか、さっきまでのどきりとした顔が嘘のように、また意地悪な顔で言った。
「姉と森下さんって言ってることがほとんど一緒だなって。」
あぁ、確かにね。と僕も思い返してみたけれども、確かに僕はミサと言い合いをしたことがない。どちらかと言うと、お互いが言いたいことを言っているのに、どちらもうんうんと相手の話を聞いている。何かを提案しても拒否されたことがないし、僕も拒否をしたことがなかった。
「昔から、そんな感じなんですか?」
「まぁ、昔って言うほどの長い付き合いじゃないけどね」
へぇ、と言うと、彼女は外の景色を見ながら言った。
「気が合うんですね、姉と森下さんは。」
それからも他愛ない話が続いた。しばらくすると展望台から下に降りることにした。降りるときは僕もエレベータを使った。これまでと話のトーンも会話の調子も違わないはずなのに、ちょっと彼女のテンションがさっきまでとは違うと思った。幽かにだけど下がっている具合。返答の言葉が少し減った気がする。語尾が2回に1回は上がっていたのに、4回に1度になった。きっかけは間違いなくさっきのやり取りだった。ミサと僕の気が合うという話をしてからだ。けれどもその理由が分からない。彼女はミサの妹であり、彼女は僕を頼ってミサ捜しを依頼してきた。その時点で僕とミサが友人であることは知っていたはずだ。むしろ仲良くなければ頼ってはこないし、僕も承諾しなかっただろう。恋愛感情とか、そういうものは無かったけれども、ミサは僕のことを良く知っているし、僕もミサのことを知りたいと思っていた。気も合っていた。もし、そのことで彼女の気持ちが下がっているとしたら、僕とミサは気が合ってはならなかったことになる。何故?会った頃からそうだったけれども、彼女は分からない部分が多い。ミサも掴みどころがなかったけれども、彼女はそれ以上だ。ミサが大海を泳ぐイルカのように流線型をしている性格ならば、彼女は流線型をしながら深海で密かに暮らす竜のようなものなのかもしれない。ただ、その下がり具合が余りに幽かすぎて、僕はそれを追求することができなかった。ずっと先を走っている三輪車みたい。僕が懸命に走れば追いつくんだけど、それをしてしまうには罪悪感が大きすぎる。僕は彼女とちょうど良い距離を保ちながら、幽かな変化を確信に変える作業に従事した。彼女は僕が気づいていると思っているのだろうか。もしかすると、僕が分かっているということを知っていながら、敢えて少しずつヒントを出しているのかもしれない。何か僕がまだ知らないモノを知らせるために。
今度は東京タワーを見上げる側に立った時、さっきは大きくて、圧倒されながらも親近感を感じていた。実際にその親近感から上ってみた訳だし。でも、今回は違う。その大きさが不気味な秘密を持っているように見えてならなかった。
彼女は一瞬言いかけて止めた。その表情はちょっと言ってはいけないことをつい言い過ぎてどきりとしたようなものだった。だから僕は、何?と敢えて訊いてみた。
「いや、ちょっと思っただけです。」
何を?と言うと、僕の返答が予想の範囲内だったからだろうか、さっきまでのどきりとした顔が嘘のように、また意地悪な顔で言った。
「姉と森下さんって言ってることがほとんど一緒だなって。」
あぁ、確かにね。と僕も思い返してみたけれども、確かに僕はミサと言い合いをしたことがない。どちらかと言うと、お互いが言いたいことを言っているのに、どちらもうんうんと相手の話を聞いている。何かを提案しても拒否されたことがないし、僕も拒否をしたことがなかった。
「昔から、そんな感じなんですか?」
「まぁ、昔って言うほどの長い付き合いじゃないけどね」
へぇ、と言うと、彼女は外の景色を見ながら言った。
「気が合うんですね、姉と森下さんは。」
それからも他愛ない話が続いた。しばらくすると展望台から下に降りることにした。降りるときは僕もエレベータを使った。これまでと話のトーンも会話の調子も違わないはずなのに、ちょっと彼女のテンションがさっきまでとは違うと思った。幽かにだけど下がっている具合。返答の言葉が少し減った気がする。語尾が2回に1回は上がっていたのに、4回に1度になった。きっかけは間違いなくさっきのやり取りだった。ミサと僕の気が合うという話をしてからだ。けれどもその理由が分からない。彼女はミサの妹であり、彼女は僕を頼ってミサ捜しを依頼してきた。その時点で僕とミサが友人であることは知っていたはずだ。むしろ仲良くなければ頼ってはこないし、僕も承諾しなかっただろう。恋愛感情とか、そういうものは無かったけれども、ミサは僕のことを良く知っているし、僕もミサのことを知りたいと思っていた。気も合っていた。もし、そのことで彼女の気持ちが下がっているとしたら、僕とミサは気が合ってはならなかったことになる。何故?会った頃からそうだったけれども、彼女は分からない部分が多い。ミサも掴みどころがなかったけれども、彼女はそれ以上だ。ミサが大海を泳ぐイルカのように流線型をしている性格ならば、彼女は流線型をしながら深海で密かに暮らす竜のようなものなのかもしれない。ただ、その下がり具合が余りに幽かすぎて、僕はそれを追求することができなかった。ずっと先を走っている三輪車みたい。僕が懸命に走れば追いつくんだけど、それをしてしまうには罪悪感が大きすぎる。僕は彼女とちょうど良い距離を保ちながら、幽かな変化を確信に変える作業に従事した。彼女は僕が気づいていると思っているのだろうか。もしかすると、僕が分かっているということを知っていながら、敢えて少しずつヒントを出しているのかもしれない。何か僕がまだ知らないモノを知らせるために。
今度は東京タワーを見上げる側に立った時、さっきは大きくて、圧倒されながらも親近感を感じていた。実際にその親近感から上ってみた訳だし。でも、今回は違う。その大きさが不気味な秘密を持っているように見えてならなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる