Clear Color

松山秋ノブ

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Clear Color.39(Side B)

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 次の呼び出しはとても急だった。休みの日であった金曜日、僕はいつものように昼近くまで寝ているつもりだった。別段、普段の仕事の時から早起きをしている訳ではないのに、休みの日は、たまになんだからとたくさん寝るようにしていた。趣味はたくさんあった。朝から活動していないと時間が足りないくらいに趣味があるはずなのに、僕は休みの日にそれをする気にならない。休みの日に自分の好きなことに時間を費やすことが勿体ない気がするのだ。よくよく考えると、何が勿体ないのかは全く分からない。別に休みなのだから自分の好きに使えばいいのにとも思う。自分でも思うのだから相当なのだろう。結果、当たり障りの無い自分の好きなことである「寝る」という行為が選ばれる。本当はゆっくり起きることは好きではあるが得意ではない。寝過ぎると頭痛持ちである僕は高確率で頭痛を起こしてしまうからだ。ならば寝なきゃいいと思う。けれども、それでも寝てしまう。というよりも寝る以外の選択肢を選びたがらない。


 その日も僕はゆっくりと起きるつもりだった。携帯電話の音は入れてある。呼び出されるからではない。携帯電話のアラームを目覚まし時計代わりにしているからだ。滅多に電話が掛かってくることはない。それもあって、電話が掛かってきた時、僕はアラームを止める素振りをしてしまった。画面を見ると、彼女の名前が映し出されている。あれっ、いつの間に彼女と電話番号を交換したんだっけ、どうして電話が掛かってきたんだろう、いろいろと考えるところはあったけれども、ともかく寝起きの僕は留守電に切り替わる前に慌てて電話を取った。

 電話の彼女は相変わらず元気そうな声だった。けれども春の空気に合っている感じ。彼女の声を聞きながら、僕はまだ夢の中にいるようだった。起しちゃいましたか、と言う彼女に、僕は大丈夫だよ、と回らない舌で話す。今から出てこれますか、という問いに、僕は少し時間をもらえたら、と返した。それなら、と彼女は場所をしていした。その場所は僕の耳馴染みがある場所だったので、当たり前のように了解した。そして電話を切ると、僕はもっそりと起き上がり、顔を洗いに行った。あの場所に行くのなんて久しぶりだな、と心が躍る。2度、3度顔を洗って、ふぅとひと息をつくと、僕はもう一度鏡を見なおした。そして、急にさっきの電話の内容の真偽を問いだした。もしかしてあれば夢だったのではなかろうか。僕は慌てて電話を見に行った。着信履歴には確かに彼女の名前があった。だとすると、彼女は確実にあの場所を言ったことになる。どうして?考えれば考えるほど理由は分からなかった。彼女が言った場所が正しいかどうは僕は確信があった。余りに耳馴染みがあるその場所を聞き間違えるはずがない。まだ数回しかあったことのない彼女だけれども、ミサの妹ということもあり、意味も無く彼女が場所を決めるはずがなかった。たくさんのどうしてがひしめく中で、僕はもう考えても無駄だということに気付いた。今までだって僕は彼女の言う通りの場所に赴いてきた。そしてそこから幽かな違和感のようなものや疑念を感じてきた。今回も彼女の言う通りにすれば、あの違和感や疑念が形になって現れるかもしれない。覚悟を決めた。そして僕は早々に家を出る準備をした。
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