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1章 始まりの街
9話 狩り
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リサは、アヤネを連れて始まりの街を出ていた。野次馬から逃げるようにフィールドへ出ると、右上のマップを確認し、プレイヤーの少ない場所へと歩いていく。
マップにはプレイヤーは青、敵は赤、NPCは緑と色分けがされている。リサは時折何かを確認するようにしながら歩き、アヤネは不思議そうに見つめていた。
「なぁ、運営からメールってよく届くのか?」
「え? ん~質問したら回答でメールは来るけど。後はゲーム内のお知らせとか?」
「個人宛なメールは?」
「ええと…どうだろう?」
アヤネも分からないらしい。リサは小さな電子音に気づき、視線を向けた。ウィンドウのメールマークに1と数字があり、開くと運営からのメールだった。
件名:決闘初勝利祝い
差出人:TDO運営
宛先:リサ様
本文:初心者プレイヤーとして、初めての決闘体験、及び、初勝利おめでとうございます。課金プレイヤーを相手に、LV:1で勝利したリサ様に、運営からささやかなプレゼントをお送りします。
これからも、TDOを楽しんでください。運営一同、リサ様のこれからのご健闘に期待しております。
メールと一緒に、添付されているファイルがある。プレゼントと書かれていたのでウィルスの類じゃないと思う。リサはファイルを開くと、ゴーレムクリエイターの専用スキルが入っていた。
ゴーレムBOT:MPゴーレム及び、ゴーレムクリエイトで作成したゴーレムをBOTとして操作できる。ログアウト中でも、ゴーレムは残り、決められた時間まで狩りをして、自動で消える。LV×2時間で、1日の使用回数は1回。日付の変更と共にリセットされる。時間が経過すると、ゴーレムは消えるが、ゴーレムが得た経験値や、回収したドロップアイテムは、プレイヤーがログインすると還元される。尚、BOT化したゴーレムは準NPC扱いとなり、PKの対象にはならない。プレイヤーの攻撃及び、プレイヤーの間接的な攻撃のダメージを無効にする。PTを組んだ状態でゴーレムBOTを使用しても、PTメンバーの扱いになる、PTを組んでいるプレイヤーにも経験値、及び、ドロップアイテムが配布される。
思わず顔がにやけてしまう。誰かが戦ってくれる職業と選んで正解だった。ゴーレムBOTは後で使うとして、もう1つ、オマケでステータスと、スキルのポイントが付いていた。
運営に優遇されているような気がするが、リサはその分、課金しないようにしていた。何故なら、課金の設定をOFFにしているからだ。1人暮らしのリサは、生活費をバイトで稼ぐのが精いっぱいで、課金する余裕は無かった。
リサと同じように無課金のプレイヤーもいる。TDOの攻略掲示板を見る限り、課金プレイヤーとの差を埋める為、無課金のプレイヤーには、一定の優遇処置が行われる。リサも対象の様だった。
無課金プレイヤーへの優遇に、課金プレイヤーが文句を言いそうだが、運営は区別をしている。課金プレイヤーにしか入れないタワーを設け、クリアの景品を豪華な物にしている。反感や批判を回避しており、課金プレイヤーは一応、納得はしている。
「いいな~私も運営からプレゼント欲しかったな」
「アヤネも何か、成し遂げたら? 多分、職業に合ったイベントとかもあると思うけど」
「そういえば…涼子さんが言ってたね。出版社として、投資しているから、イラストを描くイベントを時々開いてるとか?」
涼子って誰だろう? と思いながらリサは、オマケで貰ったポイントを振り分ける。それぞれ100ずつ貰っていたので、ステータスとスキルに振り分ける。
リサ
種族:人間
職業:ゴーレムクリエイター
LV:1
HP:510/510
MP:710/710
STR:80
VIT:150
AGI:140
DEX:70
INT:250
LUK:30
ステータスポイント:0【600】
共通スキル
HPアップ:LV2…+200【15】
MPアップ:LV2…+200【15】
STRアップ:LV2…+20【15】
VITアップ:LV2…+20【15】
AGIアップ:LV2…+20【15】
DEXアップ:LV2…+20【15】
INTアップ:LV2…+20【15】
LUKアップ:LV2…+20【15】
全異常耐性:LV2【15】
全属性耐性:LV2【15】
専用スキル
MPゴーレム作成:LV2【60】
HP自動回復:LV1【50】
MP自動回復:LV1【50】
共有スキル:LV2【60】
ゴーレムクリエイト:LV1【50】
魔改造強化:LV1【50】
パーツ作成:LV1【50】
ゴーレム格納庫:LV1【50】
ゴーレムBOT:LV3【30】※プレゼントスキル
スキルポイント:0【600】
自分でも思う。呆れるほど強くなった。無課金なのに、こんなに強くて良いのか? と疑問を抱いてしまう程のステータスになった。だが、上がりやすいのは最初だけで、スキルのレベルが上がると、成長しにくくなる。
スキルのレベルを上げる時のポイントが増えていくからだ。共通スキルと専用スキルと共に、2倍ずつ必要なポイントが増える。
LV1→LV2…5ポイント
LV2→LV3…10ポイント
LV3→LV4…20ポイント
LV4→LV5…40ポイント
L V5→LV6…80ポイント
共通スキルは最初、5ポイントから始まり、LV5までなら比較的、初心者でも上げやすい。しかし、専用スキルは違う。
LV1→LV2…10ポイント
LV2→LV3…20ポイント
LV3→LV4…40ポイント
LV4→LV5…80ポイント
LV5→LV6…160ポイント
10ポイントから始まる。専用スキルを成長させるには、共通スキルより多くのスキルポイントを集めなくてはいけない。だが、このポイントは様々な場所で得る事が出来る。
リサが受け取った運営からのプレゼントもあれば、開催されるイベントの報酬でも貰える。ギルドから出されるクエストでも貰えて、冒険者のランクを上げると、より多くのポイントがもらえるクエストを受けられる。
その為、無課金のプレイヤーでも、課金プレイヤーに劣らない程の実力を得る事が出来る。違うところは、効率の問題で、課金プレイヤーは課金装備で領域討伐が行えるが、無課金プレイヤーは、NPCで購入した武器や、鍛冶屋で作ってもらった武器でしか討伐が出来ない。
リサは焦らず、のんびりとプレイするつもりなので、効率性は求めていない。求めていないが、プレゼントで貰ったスキルを考えると、
(ゴーレムBOTで、バイト中もレベル上げが出来るな)
つい楽して使いたくなる。バイトで生活費を稼がなくてはいけないので、ログインするのは、夜の短時間か、休みがメインになる。その為、出来るだけ、ゴーレムBOTのレベルを上げて、狩りをしてもらう。
自分で命令しなくても、自動で動いて狩りをしてくれる。スキルを発動させると、詳細な設定画面があり、モンスターの対象や、狩りをしているプレイヤーの獲物を取らない様にする事が出来た。
「ねぇ、リサちゃん。ステ振り終わったの?」
「ん? ああ、終わって少し、新しいスキルを見ていた」
確認を終えると、リサは右肩に乗せていたウッドゴーレムを地面に下ろした。
「ギルドではありがとう。また、街に入る時は作るからな」
ウッドゴーレムは嬉しそうに頷くと、解除と共に木の枝へと戻ってしまった。
「本当に、木の枝で出来てたんだ。凄いね」
「まぁ…凄いのは、これからだぞ」
リサはウッドゴーレムから回収したMPを使い、次のMPゴーレムを作成する。レベルを上げた事で、作れるゴーレムの種類が増えていた。搭乗型のゴーレムが作れるようになり、消費するMPによってオプションスキルを付与する事が出来る。
今は、MPに余裕が無いのでオプションスキルは付与できない。最低限のMPを消費し、搭乗型のゴーレムを作成する。
「今から作るゴーレムは、乗る事の出来るタイプだ」
MPゴーレム作成のスキルを起動させ、リサはウィンドウを見ながら詳細設定を行う。高さは2m程で、体形はマッスル系にして、背中に箱の様な入れ物を背負うように作り出す。
リサはゴーレムに命令すると、背中に乗りやすい位置まで座ってもらう。隣でアヤネがポカンと口を開けて驚いていた。
「どうかした?」
「リサちゃん…このゴーレム、ヤバくない? 強すぎだと思うよ」
「そりゃ…700もMPを使ってるからね」
トウジョウ君
種族:ストーンゴーレム
HP:1910/1910
MP:2110/2110
STR:780
VIT:850
AGI:860
DEX:770
INT:950
LUK:730
共有スキル
全属性耐性:LV2
AGIアップ:LV2…+20
弱点:風
MPゴーレム作成のレベルが上がり、新たに作れたゴーレムにはネームが出来る。搭乗するゴーレムでトウジョウ君と適当に付けてみたが、センスがない。苦笑いを浮かべ、乗り込むと、アヤネが箱の中で不安そうに見つめてきた
「大丈夫なの?」
「大丈夫だ。この箱の強度も高いから、攻撃を受けても壊れる事は無い」
言われた通り、VIT:850を超えるダメージを与えるモンスターは、始まりの街周辺にはいない。アヤネもモンスターの種類は熟知していたので、大丈夫だとは思っていた。
しかし、それでも不安はある。一応、フィールドにはボスモンスターが生息しており、出会えば、初心者プレイヤーだと即死だ。熟練のプレイヤーは、そもそも始まりの街には来ない。中級のプレイヤーが束に掛かっても倒せない設定だと、聞いていた。
アヤネの不安そうな顔を見ながら、リサはトウジョウ君に歩くように命じた。ゆっくりと立ち上がると、地響きを立てて歩き出す。乗り込んだ感想は、アヤネも同じ事を思っていたのか、
「お尻、痛いよ」
「尻が痛いな」
だった。石から作られているので、材質は固い。そこで、アヤネが何かを取り出した。
「NPCの店で売られているクッションだけど、使う?」
「ああ、使わせてもらうよ」
箱の中で、アヤネから受け取ったクッションに座り、トウジョウ君に揺られる。今のトウジョウ君は、ゴーレムBOTを使用して、自動で狩りをするようにしていた。リサが命令しなくても、設定された動きをしてくれる。
・ゴブリンをメインに探して討伐
・道中で出会ったモンスターも討伐
・狩りをしているプレイヤーのモンスターは避ける
・18時には始まりの街に帰還するので、周辺で狩りをする
この4つを設定した。時刻は、ギルドの決闘のせいでかなり過ぎていた。狩りをする時間も減った。20時に、亜里沙と会う約束をしている為、遠くには行けない。その事を踏まえ、始まりの街周辺で狩りをするようにした。
「あ! そうだ、アヤネ、フレンド登録しないか?」
「え? そ、そうだね! 忘れてたよ」
思い出したように、リサはアヤネにフレンド申請を行う。直ぐに承認された。
「後さ、PT組まないか? 今、トウジョウ君で狩りをしているから、アヤネも経験値を貰えばいいよ」
「いいの? 何もしてなくて?」
「いいって、私も何もしてないから」
ゴーレムBOTによる自動狩りで、リサは何もしていない。だから、アヤネにも経験値を分けようと思っていた。自分だけが楽をして経験値を稼ぐのは気まずいからだ。
PT申請をするとアヤネの情報が記された。LV:21と記されていた。
「結構、上げてるんだな」
「うん、ハンターウルフとか、倒してたから。でも、こんなに早く、経験値は集まらなかったよ」
「それは良い事だ」
満面の笑みを浮かべながら、リサは自分のレベルが上がるのを確認していた。トウジョウ君は的確にモンスターを探して、倒していた。2mの巨体と石の体を使った体当たり、踏みつけ攻撃で、次々とモンスターを倒し、そのドロップアイテムがインベントリへと入ってきた。
経験値も凄い勢いで増えていき、順調にレベルが上がっていく。リサはアヤネと共に、箱の中でトウジョウ君に揺られながら、雑談をしていた。引っ越してからの生活や、TDOでの経験など、アヤネと話しながら、予定通りの18時に、始まりの街へと帰還するのだった。
マップにはプレイヤーは青、敵は赤、NPCは緑と色分けがされている。リサは時折何かを確認するようにしながら歩き、アヤネは不思議そうに見つめていた。
「なぁ、運営からメールってよく届くのか?」
「え? ん~質問したら回答でメールは来るけど。後はゲーム内のお知らせとか?」
「個人宛なメールは?」
「ええと…どうだろう?」
アヤネも分からないらしい。リサは小さな電子音に気づき、視線を向けた。ウィンドウのメールマークに1と数字があり、開くと運営からのメールだった。
件名:決闘初勝利祝い
差出人:TDO運営
宛先:リサ様
本文:初心者プレイヤーとして、初めての決闘体験、及び、初勝利おめでとうございます。課金プレイヤーを相手に、LV:1で勝利したリサ様に、運営からささやかなプレゼントをお送りします。
これからも、TDOを楽しんでください。運営一同、リサ様のこれからのご健闘に期待しております。
メールと一緒に、添付されているファイルがある。プレゼントと書かれていたのでウィルスの類じゃないと思う。リサはファイルを開くと、ゴーレムクリエイターの専用スキルが入っていた。
ゴーレムBOT:MPゴーレム及び、ゴーレムクリエイトで作成したゴーレムをBOTとして操作できる。ログアウト中でも、ゴーレムは残り、決められた時間まで狩りをして、自動で消える。LV×2時間で、1日の使用回数は1回。日付の変更と共にリセットされる。時間が経過すると、ゴーレムは消えるが、ゴーレムが得た経験値や、回収したドロップアイテムは、プレイヤーがログインすると還元される。尚、BOT化したゴーレムは準NPC扱いとなり、PKの対象にはならない。プレイヤーの攻撃及び、プレイヤーの間接的な攻撃のダメージを無効にする。PTを組んだ状態でゴーレムBOTを使用しても、PTメンバーの扱いになる、PTを組んでいるプレイヤーにも経験値、及び、ドロップアイテムが配布される。
思わず顔がにやけてしまう。誰かが戦ってくれる職業と選んで正解だった。ゴーレムBOTは後で使うとして、もう1つ、オマケでステータスと、スキルのポイントが付いていた。
運営に優遇されているような気がするが、リサはその分、課金しないようにしていた。何故なら、課金の設定をOFFにしているからだ。1人暮らしのリサは、生活費をバイトで稼ぐのが精いっぱいで、課金する余裕は無かった。
リサと同じように無課金のプレイヤーもいる。TDOの攻略掲示板を見る限り、課金プレイヤーとの差を埋める為、無課金のプレイヤーには、一定の優遇処置が行われる。リサも対象の様だった。
無課金プレイヤーへの優遇に、課金プレイヤーが文句を言いそうだが、運営は区別をしている。課金プレイヤーにしか入れないタワーを設け、クリアの景品を豪華な物にしている。反感や批判を回避しており、課金プレイヤーは一応、納得はしている。
「いいな~私も運営からプレゼント欲しかったな」
「アヤネも何か、成し遂げたら? 多分、職業に合ったイベントとかもあると思うけど」
「そういえば…涼子さんが言ってたね。出版社として、投資しているから、イラストを描くイベントを時々開いてるとか?」
涼子って誰だろう? と思いながらリサは、オマケで貰ったポイントを振り分ける。それぞれ100ずつ貰っていたので、ステータスとスキルに振り分ける。
リサ
種族:人間
職業:ゴーレムクリエイター
LV:1
HP:510/510
MP:710/710
STR:80
VIT:150
AGI:140
DEX:70
INT:250
LUK:30
ステータスポイント:0【600】
共通スキル
HPアップ:LV2…+200【15】
MPアップ:LV2…+200【15】
STRアップ:LV2…+20【15】
VITアップ:LV2…+20【15】
AGIアップ:LV2…+20【15】
DEXアップ:LV2…+20【15】
INTアップ:LV2…+20【15】
LUKアップ:LV2…+20【15】
全異常耐性:LV2【15】
全属性耐性:LV2【15】
専用スキル
MPゴーレム作成:LV2【60】
HP自動回復:LV1【50】
MP自動回復:LV1【50】
共有スキル:LV2【60】
ゴーレムクリエイト:LV1【50】
魔改造強化:LV1【50】
パーツ作成:LV1【50】
ゴーレム格納庫:LV1【50】
ゴーレムBOT:LV3【30】※プレゼントスキル
スキルポイント:0【600】
自分でも思う。呆れるほど強くなった。無課金なのに、こんなに強くて良いのか? と疑問を抱いてしまう程のステータスになった。だが、上がりやすいのは最初だけで、スキルのレベルが上がると、成長しにくくなる。
スキルのレベルを上げる時のポイントが増えていくからだ。共通スキルと専用スキルと共に、2倍ずつ必要なポイントが増える。
LV1→LV2…5ポイント
LV2→LV3…10ポイント
LV3→LV4…20ポイント
LV4→LV5…40ポイント
L V5→LV6…80ポイント
共通スキルは最初、5ポイントから始まり、LV5までなら比較的、初心者でも上げやすい。しかし、専用スキルは違う。
LV1→LV2…10ポイント
LV2→LV3…20ポイント
LV3→LV4…40ポイント
LV4→LV5…80ポイント
LV5→LV6…160ポイント
10ポイントから始まる。専用スキルを成長させるには、共通スキルより多くのスキルポイントを集めなくてはいけない。だが、このポイントは様々な場所で得る事が出来る。
リサが受け取った運営からのプレゼントもあれば、開催されるイベントの報酬でも貰える。ギルドから出されるクエストでも貰えて、冒険者のランクを上げると、より多くのポイントがもらえるクエストを受けられる。
その為、無課金のプレイヤーでも、課金プレイヤーに劣らない程の実力を得る事が出来る。違うところは、効率の問題で、課金プレイヤーは課金装備で領域討伐が行えるが、無課金プレイヤーは、NPCで購入した武器や、鍛冶屋で作ってもらった武器でしか討伐が出来ない。
リサは焦らず、のんびりとプレイするつもりなので、効率性は求めていない。求めていないが、プレゼントで貰ったスキルを考えると、
(ゴーレムBOTで、バイト中もレベル上げが出来るな)
つい楽して使いたくなる。バイトで生活費を稼がなくてはいけないので、ログインするのは、夜の短時間か、休みがメインになる。その為、出来るだけ、ゴーレムBOTのレベルを上げて、狩りをしてもらう。
自分で命令しなくても、自動で動いて狩りをしてくれる。スキルを発動させると、詳細な設定画面があり、モンスターの対象や、狩りをしているプレイヤーの獲物を取らない様にする事が出来た。
「ねぇ、リサちゃん。ステ振り終わったの?」
「ん? ああ、終わって少し、新しいスキルを見ていた」
確認を終えると、リサは右肩に乗せていたウッドゴーレムを地面に下ろした。
「ギルドではありがとう。また、街に入る時は作るからな」
ウッドゴーレムは嬉しそうに頷くと、解除と共に木の枝へと戻ってしまった。
「本当に、木の枝で出来てたんだ。凄いね」
「まぁ…凄いのは、これからだぞ」
リサはウッドゴーレムから回収したMPを使い、次のMPゴーレムを作成する。レベルを上げた事で、作れるゴーレムの種類が増えていた。搭乗型のゴーレムが作れるようになり、消費するMPによってオプションスキルを付与する事が出来る。
今は、MPに余裕が無いのでオプションスキルは付与できない。最低限のMPを消費し、搭乗型のゴーレムを作成する。
「今から作るゴーレムは、乗る事の出来るタイプだ」
MPゴーレム作成のスキルを起動させ、リサはウィンドウを見ながら詳細設定を行う。高さは2m程で、体形はマッスル系にして、背中に箱の様な入れ物を背負うように作り出す。
リサはゴーレムに命令すると、背中に乗りやすい位置まで座ってもらう。隣でアヤネがポカンと口を開けて驚いていた。
「どうかした?」
「リサちゃん…このゴーレム、ヤバくない? 強すぎだと思うよ」
「そりゃ…700もMPを使ってるからね」
トウジョウ君
種族:ストーンゴーレム
HP:1910/1910
MP:2110/2110
STR:780
VIT:850
AGI:860
DEX:770
INT:950
LUK:730
共有スキル
全属性耐性:LV2
AGIアップ:LV2…+20
弱点:風
MPゴーレム作成のレベルが上がり、新たに作れたゴーレムにはネームが出来る。搭乗するゴーレムでトウジョウ君と適当に付けてみたが、センスがない。苦笑いを浮かべ、乗り込むと、アヤネが箱の中で不安そうに見つめてきた
「大丈夫なの?」
「大丈夫だ。この箱の強度も高いから、攻撃を受けても壊れる事は無い」
言われた通り、VIT:850を超えるダメージを与えるモンスターは、始まりの街周辺にはいない。アヤネもモンスターの種類は熟知していたので、大丈夫だとは思っていた。
しかし、それでも不安はある。一応、フィールドにはボスモンスターが生息しており、出会えば、初心者プレイヤーだと即死だ。熟練のプレイヤーは、そもそも始まりの街には来ない。中級のプレイヤーが束に掛かっても倒せない設定だと、聞いていた。
アヤネの不安そうな顔を見ながら、リサはトウジョウ君に歩くように命じた。ゆっくりと立ち上がると、地響きを立てて歩き出す。乗り込んだ感想は、アヤネも同じ事を思っていたのか、
「お尻、痛いよ」
「尻が痛いな」
だった。石から作られているので、材質は固い。そこで、アヤネが何かを取り出した。
「NPCの店で売られているクッションだけど、使う?」
「ああ、使わせてもらうよ」
箱の中で、アヤネから受け取ったクッションに座り、トウジョウ君に揺られる。今のトウジョウ君は、ゴーレムBOTを使用して、自動で狩りをするようにしていた。リサが命令しなくても、設定された動きをしてくれる。
・ゴブリンをメインに探して討伐
・道中で出会ったモンスターも討伐
・狩りをしているプレイヤーのモンスターは避ける
・18時には始まりの街に帰還するので、周辺で狩りをする
この4つを設定した。時刻は、ギルドの決闘のせいでかなり過ぎていた。狩りをする時間も減った。20時に、亜里沙と会う約束をしている為、遠くには行けない。その事を踏まえ、始まりの街周辺で狩りをするようにした。
「あ! そうだ、アヤネ、フレンド登録しないか?」
「え? そ、そうだね! 忘れてたよ」
思い出したように、リサはアヤネにフレンド申請を行う。直ぐに承認された。
「後さ、PT組まないか? 今、トウジョウ君で狩りをしているから、アヤネも経験値を貰えばいいよ」
「いいの? 何もしてなくて?」
「いいって、私も何もしてないから」
ゴーレムBOTによる自動狩りで、リサは何もしていない。だから、アヤネにも経験値を分けようと思っていた。自分だけが楽をして経験値を稼ぐのは気まずいからだ。
PT申請をするとアヤネの情報が記された。LV:21と記されていた。
「結構、上げてるんだな」
「うん、ハンターウルフとか、倒してたから。でも、こんなに早く、経験値は集まらなかったよ」
「それは良い事だ」
満面の笑みを浮かべながら、リサは自分のレベルが上がるのを確認していた。トウジョウ君は的確にモンスターを探して、倒していた。2mの巨体と石の体を使った体当たり、踏みつけ攻撃で、次々とモンスターを倒し、そのドロップアイテムがインベントリへと入ってきた。
経験値も凄い勢いで増えていき、順調にレベルが上がっていく。リサはアヤネと共に、箱の中でトウジョウ君に揺られながら、雑談をしていた。引っ越してからの生活や、TDOでの経験など、アヤネと話しながら、予定通りの18時に、始まりの街へと帰還するのだった。
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