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1章 始まりの街
16話 リコとアヤネ
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件名:明日からについて
差出人:リサ
宛先:アヤネ
本文:今日はバイトが休みだからログインしているけど、明日からは夜にしか来れない。もし、日中に狩りをしたいのなら、トウジョウ君を貸す。ログアウト中でも、トウジョウ君は準NPCとして、プレイヤーとPTが組めるから、一緒に行動すれば、レベル上げが出来るぞ。
ログインすると、メールが1通届いていた。リサから送られたもので、レベル上げを手伝うという内容だった。アヤネは返事を返す。
件名:ありがとう!
差出人:アヤネ
宛先:リサ
本文:ありがとう! レベルを上げたい時はPTを組むよ。
それから、リサちゃんに会いたいっていう人がいるの。私の専属の編集者の人だけどいいかな? 良ければメールをください。
送信をすると、アヤネは個室を後にする。
「待ち合わせは…噴水だったね」
涼子と待ち合わせの場所へと向かう。事前に、キャラの名前と容姿を伝えていたので、向こうから探してくれる。リサと待ち合わせした、噴水前に立つと、周辺を見渡す。
「ん?」
背中を突かれる。振り返ると、小柄で猫耳を生やした少女が立っていた。
「お待たせニャン」
可愛く、手を握りしめて猫を招くような仕草をする少女は、リコいうネームが頭に浮かんでいた。
「……恥ずかしくないですか? 涼子さん」
「うぅ…素で言わないでほしいわ」
顔を真っ赤にするリコは、ポカポカとアヤネを殴る。可愛らしくて思わず頭を撫でてしまう。
「りょう…あ~リコさん?」
「リコでいいわよ。アヤネさん」
アヤネの手を払いのけると、フレンド申請の画面が表示される。YESを選択すると、リサに続き、2人目のフレンドが追加された。そう、2人目だ。アヤネはフレンドを作らず、今までソロで活動していた。
男性プレイヤーからPTを誘われる事もあったが、その都度、逃げるようにして走り去った。おかげで、アヤネは始まりの街でも、孤立した存在になっていた。女性プレイヤーから、声を掛けられ、PTに誘われる事もあったが、丁寧に断った。
「……リコちゃんでいいですか?」
「ん~、別にいわよ。私はアヤネって呼ぶわね」
頭に生えた耳をピクピク動かす猫耳少女。リコは縞模様の尻尾を揺らし、アヤネを見上げる。アヤネもリコを見下ろす。
「その、凄く強いのですね」
「始まりの街では、負けないわよ」
自信ありげに話すリコは、鑑定眼鏡で見る限り、始まりの街ではトッププレイヤーになる実力を持っていた。
リコ
種族:獣人【猫】
職業:怪盗キャット
LV:60
HP3330/3330【毎分20回復】
MP:2330/2330【毎分20回復】
STR:560【+500】
VIT:360【+1000】
AGI:1060【+1000】
DEX:560
INT:360【+500】
LUK:1060
ステータスポイント:0【3600】
共通スキル
HPアップ:LV6…+600【165】
MPアップ:LV6…+600【165】
STRアップ:LV6…+60【165】
VITアップ:LV6…+60【165】
AGIアップ:LV6…+60【165】
DEXアップ:LV6…+60【165】
INTアップ:LV6…+60【165】
LUKアップ:LV6…+60【165】
全異常耐性:LV6【165】
全属性耐性:LV6【165】
専用スキル
キャットウォーク:LV5【200】
気配遮断:LV5【200】
飛行脚:LV5【200】
見切り:LV5【200】
盗み手:LV5【200】
投擲:LV5【200】
無音脚:LV5【200】
幻術魔法:LV6【310】※プレゼントスキル
スキルポイント:240【3600】
称号:ゴブリンハンター【100/100】ホブゴブリンハンター【100/100】王殺【500/500】獣ハンター【100/100】破壊神【1000/1000】タワー制覇者【500/500】
リサのトウジョウ君を考えると、不思議とリコのステータスに圧倒に凄いとは感じない。リコは自慢げに胸を張っているが、アヤネ的には感動も何も感じない。
「その装備、ガチャの代物ですか?」
「そう、メインで引いて職業が適正じゃないから、こっちにプレゼントで送ったの」
リコの装備は、全身が黒いタイツに覆われ、その上に、ラフなシャツにショートパンツ、ブーツを履いている。この全てがガチャで出た装備らしい。武器は、短剣を持っている。投げても手元に戻ってくる短剣らしい。
「アヤネも強くなるわよ。私のあげた物、使ってるでしょ?」
「はい、消耗品として使ってますよ。おかげでレベルが上がりました」
アヤネは自分のステータスを確認する。
アヤネ
種族:人間
職業:イラストクリエイター
LV:25
HP:910/910
MP:810/810
STR:30【+10】
VIT:50【+300】
AGI:30【+10】
DEX:30
INT:100【+200】
LUK:15
ステータスポイント:0【255】
共通スキル
HPアップ:LV2…+200【15】
MPアップ:LV2…+200【15】
VITアップ:LV1…+10【10】
INTアップ:LV2…+20【15】
専用スキル
コピーライター:LV1【50】
モノクロ武器:LV1【50】
ペイント召喚:LV1【50】
カラーリング魔法:LV1【50】
スキルポイント:0【255】
称号:ゴブリンハンター【30/30】
消耗品で、インクを貰い、これを使う事でスキルが使用できる。イラストライターはリアルマネーを消費するスキルがあり、ペイント召喚、カラーリング魔法がそれにあたる。
TDOでは、カラーインクはNPCの店では売っておらず、課金でしか販売されていない。その為、モノクロでしか書けないが、アヤネの場合は、リコから譲り受けたインクのおかげで、カラフルに描かれる。
同じイラストライターの職業でも、アヤネは一歩有利に進んでいる。全て、リコのおかげである。何となく、リコの頭を撫でてしまう。
「アヤネ、恥ずかしい」
「あ、ごめんなさい、リコちゃん」
リアルの涼子は理沙と同じで背が高く、スタイルもいい。でも、ゲーム内では子供の姿にしてキャラを作っている。そのギャップに自然と手が動いてしまう。
「リコちゃん、今から何処か行くの?」
「そうだね。アヤネのレベル上げでも手伝うよ。友達はまだ来れないでしょ?」
「うん、リサちゃんは、バイトだから20時ぐらいにしか来れないよ」
時刻は14時を過ぎており、アヤネはリコとPTを組む事にした。まだ、タワーに挑戦できないので、冒険者のランクを上げる為にクエストを行う。
リコの話ではEランクのクエストは、Fランクと似ており、ゴブリンの討伐が、ホブゴブリンの討伐になる。ホブゴブリンは、ゴブリンより背が高く力も強い。集団で襲われると、負けてしまう。
「ホブゴブリンは北西に多く住んでるわ。ゴブリンと同じ、上限数達成報酬は1000体で、加護の指輪が貰えるわ。HPが回復する指輪ね」
リコに見せてもらうと、右手の中指に2つの指輪を嵌めていた。MPを使うスキルが多い為、MPが回復する祝福の指輪は必要品である。HPが回復する加護の指輪は、それ程必要と感じないが、HPを消費するスキルがあるので、欲しい人は手に入れる。
「面倒だからやらないけど、同じ指輪を集めて合成すると、回復量が増えるの。でも、LUKが低いと失敗するわね」
失敗すると、壊れてなくなるらしい。ゴブリンを討伐して手に入る指輪は、消耗品でもあり、時間の経過で耐久力が無くなり壊れてしまう。合成で、耐久時間が伸びて、最終まで合成させると、壊れない指輪になる。それまでに最低でも2回の合成が必要になる。
祝福の指輪+祝福の指輪=祝福の指輪改
祝福の指輪改+祝福の指輪改=祝福の指輪完
失敗を考えずにすると、全部で4個の指輪が必要になる。そうなると、ゴブリンを4000体倒す必要性があるが、
「4000もゴブリンを倒すのも面倒だし、探すのも疲れるわ」
溜息交じりで話す。その面倒な事をリサはゴーレムBOTを使い行っている。よくよく考えると、チートだと思う。
(今頃、トウジョウ君だけでゴブリンを倒してるんだろうな…)
アヤネの考えている通り、トウジョウ君はゴブリンを倒し終えていた。8時間と言う稼働時間を過ぎ、今は消えてしまっているが、経験値とドロップアイテムは記録されている。
リサがログインした時、還元されるが、あまりにも多い事に驚くが、まだ、本人は来ていない。
アヤネは、マップを確認し、始まりの街を出たフィールドを歩く。リコが楽しそうに尻尾を揺らして歩いていた。
「そういえば、リコちゃんのメインは、ログインしなくていいの?」
「いいわよ。メインの方は飽きたから」
新鮮さが無く飽きて、攻略しているディアナのタワーが、難しくて、挫折したと話す。
「本当に、プレイヤー殺しの場所だわ。罠も多いし、モンスターも凶暴だし、ソロじゃ無理ね」
「PTは組まないの?」
「組んだわ。組んでも10階層までしか行けないの。ほら、ソロで10階層に到達したプレイヤーがいたでしょ? あれ、ソロって言うけど、私達とPTを組んでたのよ」
リコのメインキャラは、アヤネと同じイラストライターと言う職業で、廃課金キャラである。仲間の聖女、勇者、ソルジャー、アサシンの5人でPTを組んで挑み、ソルジャーのプレイヤーが生き延びた。
1人1人が1カ月、100万円課金している廃課金プレイヤーのPT構成で挑んだが、結果は10階層到達で終わった。罠に苦しめられ、モンスターの脅威に晒され敗北。
「そうなんだ…」
「いくら課金しても、勝てない。それなら、他のキャラを作り気分転換をする。そのつもりで、リコを作ったけど、今は、こっちが主体になってきたわ。初めての職業で、ポイントも多かったしね」
「う、リコちゃんもなの? 羨ましい」
リサも初めての職業でポイントを多く貰えたと話していた。最初にステータス、スキルのポイントが、500ポイントもあれば、育成も有利になる。
「それに、検証で、無課金プレイヤーは優遇されるって示されたから、リコは、当初のメインキャラより、高いステータスよ」
アヤネも涼子…否、リコに言われて、課金を一切していない。今は、リコからの支援で、消耗品の課金アイテムを使えるが、何時まで使えるか分からない。消耗品が無くなれば、アヤネは弱体化する。
「アヤネも、無課金を通す方がいいわよ。その方が、優遇されるわ。因みに、チュートリアルタワーを全てクリアすれば、レアアイテムやスキルが報酬で貰えるわね」
タワーとして存在する代表的なフィールドを経験する事が出来るのは、始まりの街にあるチュートリアルタワーだけである。
1階層=森
2階層=草原
3階層=海
4階層=砂漠
5階層=墓場
6階層=火山地帯
7階層=雪山地帯
8階層=浮遊島
9階層=遺跡
10階層=異空間
他にも種類はあるが、代表的なフィールドは10階層しかなく、広さはそれ程でもない。出現するモンスターも弱いらしいが、地形を超えるのが苦労する。準備を怠れば死ぬと言う事を経験させる為のチュートリアルタワーである。
リコは全てをクリアしており、プレゼントで幻術魔法を手に入れている。アイテムも貰っているようで、首輪を嵌めている。身代わりの首輪と言うらしくて、中央に魔石が3つ嵌められている。
モンスターを倒せばドロップする魔石は、LUKが高くないと手に入らない。リコは1000以上のLUKを持つので、モンスターを倒した時、魔石を手に入れている。魔石なら何でも使用でき、首輪に嵌める事で、3回まで、即死ダメージを身代わりで受けてくれる。
魔石さえあれば何度でも使える装備品で、耐久値は無く、壊れない仕様である。これが、チュートリアルタワーの全階層をクリアした報酬になる。只、同じ物が貰えるとは限らない。職業により変わり、無課金でクリアすれば、報酬も多くなる。
アヤネはリコと話をしながら、狩りを行う。見つけたモンスターを倒す前に、リコが短剣を投擲させ、ポリゴン化させて倒してしまう。アヤネの出番がない。
「リコちゃん、私も…」
「いいよ、インク代も掛かるし、私だけで十分だし!」
木々の後ろにいたゴブリンへ短剣を投擲する。木を貫通させてゴブリンを突きさす。刺さった短剣が消えるとリコの手元に戻る。帰還の短剣と呼ばれる装備で、投擲用の武器になる。
NPCの店で購入するナイフや短剣は、投擲するとその場に残る。回収する手間が省ける素晴らしい武器である。ガチャから出た武器で、リコはこれを複数所持している。
(いいのかな?)
申し訳なく思いながらも、リコに寄生しながら、アヤネはフィールドを歩く。昨日の狩りを思うと、効率は下がるが、それでも、経験値は多く入っていた。リコも少しは経験値を受け取っているが、レベル差で、アヤネの方が多く貰えた。
差出人:リサ
宛先:アヤネ
本文:今日はバイトが休みだからログインしているけど、明日からは夜にしか来れない。もし、日中に狩りをしたいのなら、トウジョウ君を貸す。ログアウト中でも、トウジョウ君は準NPCとして、プレイヤーとPTが組めるから、一緒に行動すれば、レベル上げが出来るぞ。
ログインすると、メールが1通届いていた。リサから送られたもので、レベル上げを手伝うという内容だった。アヤネは返事を返す。
件名:ありがとう!
差出人:アヤネ
宛先:リサ
本文:ありがとう! レベルを上げたい時はPTを組むよ。
それから、リサちゃんに会いたいっていう人がいるの。私の専属の編集者の人だけどいいかな? 良ければメールをください。
送信をすると、アヤネは個室を後にする。
「待ち合わせは…噴水だったね」
涼子と待ち合わせの場所へと向かう。事前に、キャラの名前と容姿を伝えていたので、向こうから探してくれる。リサと待ち合わせした、噴水前に立つと、周辺を見渡す。
「ん?」
背中を突かれる。振り返ると、小柄で猫耳を生やした少女が立っていた。
「お待たせニャン」
可愛く、手を握りしめて猫を招くような仕草をする少女は、リコいうネームが頭に浮かんでいた。
「……恥ずかしくないですか? 涼子さん」
「うぅ…素で言わないでほしいわ」
顔を真っ赤にするリコは、ポカポカとアヤネを殴る。可愛らしくて思わず頭を撫でてしまう。
「りょう…あ~リコさん?」
「リコでいいわよ。アヤネさん」
アヤネの手を払いのけると、フレンド申請の画面が表示される。YESを選択すると、リサに続き、2人目のフレンドが追加された。そう、2人目だ。アヤネはフレンドを作らず、今までソロで活動していた。
男性プレイヤーからPTを誘われる事もあったが、その都度、逃げるようにして走り去った。おかげで、アヤネは始まりの街でも、孤立した存在になっていた。女性プレイヤーから、声を掛けられ、PTに誘われる事もあったが、丁寧に断った。
「……リコちゃんでいいですか?」
「ん~、別にいわよ。私はアヤネって呼ぶわね」
頭に生えた耳をピクピク動かす猫耳少女。リコは縞模様の尻尾を揺らし、アヤネを見上げる。アヤネもリコを見下ろす。
「その、凄く強いのですね」
「始まりの街では、負けないわよ」
自信ありげに話すリコは、鑑定眼鏡で見る限り、始まりの街ではトッププレイヤーになる実力を持っていた。
リコ
種族:獣人【猫】
職業:怪盗キャット
LV:60
HP3330/3330【毎分20回復】
MP:2330/2330【毎分20回復】
STR:560【+500】
VIT:360【+1000】
AGI:1060【+1000】
DEX:560
INT:360【+500】
LUK:1060
ステータスポイント:0【3600】
共通スキル
HPアップ:LV6…+600【165】
MPアップ:LV6…+600【165】
STRアップ:LV6…+60【165】
VITアップ:LV6…+60【165】
AGIアップ:LV6…+60【165】
DEXアップ:LV6…+60【165】
INTアップ:LV6…+60【165】
LUKアップ:LV6…+60【165】
全異常耐性:LV6【165】
全属性耐性:LV6【165】
専用スキル
キャットウォーク:LV5【200】
気配遮断:LV5【200】
飛行脚:LV5【200】
見切り:LV5【200】
盗み手:LV5【200】
投擲:LV5【200】
無音脚:LV5【200】
幻術魔法:LV6【310】※プレゼントスキル
スキルポイント:240【3600】
称号:ゴブリンハンター【100/100】ホブゴブリンハンター【100/100】王殺【500/500】獣ハンター【100/100】破壊神【1000/1000】タワー制覇者【500/500】
リサのトウジョウ君を考えると、不思議とリコのステータスに圧倒に凄いとは感じない。リコは自慢げに胸を張っているが、アヤネ的には感動も何も感じない。
「その装備、ガチャの代物ですか?」
「そう、メインで引いて職業が適正じゃないから、こっちにプレゼントで送ったの」
リコの装備は、全身が黒いタイツに覆われ、その上に、ラフなシャツにショートパンツ、ブーツを履いている。この全てがガチャで出た装備らしい。武器は、短剣を持っている。投げても手元に戻ってくる短剣らしい。
「アヤネも強くなるわよ。私のあげた物、使ってるでしょ?」
「はい、消耗品として使ってますよ。おかげでレベルが上がりました」
アヤネは自分のステータスを確認する。
アヤネ
種族:人間
職業:イラストクリエイター
LV:25
HP:910/910
MP:810/810
STR:30【+10】
VIT:50【+300】
AGI:30【+10】
DEX:30
INT:100【+200】
LUK:15
ステータスポイント:0【255】
共通スキル
HPアップ:LV2…+200【15】
MPアップ:LV2…+200【15】
VITアップ:LV1…+10【10】
INTアップ:LV2…+20【15】
専用スキル
コピーライター:LV1【50】
モノクロ武器:LV1【50】
ペイント召喚:LV1【50】
カラーリング魔法:LV1【50】
スキルポイント:0【255】
称号:ゴブリンハンター【30/30】
消耗品で、インクを貰い、これを使う事でスキルが使用できる。イラストライターはリアルマネーを消費するスキルがあり、ペイント召喚、カラーリング魔法がそれにあたる。
TDOでは、カラーインクはNPCの店では売っておらず、課金でしか販売されていない。その為、モノクロでしか書けないが、アヤネの場合は、リコから譲り受けたインクのおかげで、カラフルに描かれる。
同じイラストライターの職業でも、アヤネは一歩有利に進んでいる。全て、リコのおかげである。何となく、リコの頭を撫でてしまう。
「アヤネ、恥ずかしい」
「あ、ごめんなさい、リコちゃん」
リアルの涼子は理沙と同じで背が高く、スタイルもいい。でも、ゲーム内では子供の姿にしてキャラを作っている。そのギャップに自然と手が動いてしまう。
「リコちゃん、今から何処か行くの?」
「そうだね。アヤネのレベル上げでも手伝うよ。友達はまだ来れないでしょ?」
「うん、リサちゃんは、バイトだから20時ぐらいにしか来れないよ」
時刻は14時を過ぎており、アヤネはリコとPTを組む事にした。まだ、タワーに挑戦できないので、冒険者のランクを上げる為にクエストを行う。
リコの話ではEランクのクエストは、Fランクと似ており、ゴブリンの討伐が、ホブゴブリンの討伐になる。ホブゴブリンは、ゴブリンより背が高く力も強い。集団で襲われると、負けてしまう。
「ホブゴブリンは北西に多く住んでるわ。ゴブリンと同じ、上限数達成報酬は1000体で、加護の指輪が貰えるわ。HPが回復する指輪ね」
リコに見せてもらうと、右手の中指に2つの指輪を嵌めていた。MPを使うスキルが多い為、MPが回復する祝福の指輪は必要品である。HPが回復する加護の指輪は、それ程必要と感じないが、HPを消費するスキルがあるので、欲しい人は手に入れる。
「面倒だからやらないけど、同じ指輪を集めて合成すると、回復量が増えるの。でも、LUKが低いと失敗するわね」
失敗すると、壊れてなくなるらしい。ゴブリンを討伐して手に入る指輪は、消耗品でもあり、時間の経過で耐久力が無くなり壊れてしまう。合成で、耐久時間が伸びて、最終まで合成させると、壊れない指輪になる。それまでに最低でも2回の合成が必要になる。
祝福の指輪+祝福の指輪=祝福の指輪改
祝福の指輪改+祝福の指輪改=祝福の指輪完
失敗を考えずにすると、全部で4個の指輪が必要になる。そうなると、ゴブリンを4000体倒す必要性があるが、
「4000もゴブリンを倒すのも面倒だし、探すのも疲れるわ」
溜息交じりで話す。その面倒な事をリサはゴーレムBOTを使い行っている。よくよく考えると、チートだと思う。
(今頃、トウジョウ君だけでゴブリンを倒してるんだろうな…)
アヤネの考えている通り、トウジョウ君はゴブリンを倒し終えていた。8時間と言う稼働時間を過ぎ、今は消えてしまっているが、経験値とドロップアイテムは記録されている。
リサがログインした時、還元されるが、あまりにも多い事に驚くが、まだ、本人は来ていない。
アヤネは、マップを確認し、始まりの街を出たフィールドを歩く。リコが楽しそうに尻尾を揺らして歩いていた。
「そういえば、リコちゃんのメインは、ログインしなくていいの?」
「いいわよ。メインの方は飽きたから」
新鮮さが無く飽きて、攻略しているディアナのタワーが、難しくて、挫折したと話す。
「本当に、プレイヤー殺しの場所だわ。罠も多いし、モンスターも凶暴だし、ソロじゃ無理ね」
「PTは組まないの?」
「組んだわ。組んでも10階層までしか行けないの。ほら、ソロで10階層に到達したプレイヤーがいたでしょ? あれ、ソロって言うけど、私達とPTを組んでたのよ」
リコのメインキャラは、アヤネと同じイラストライターと言う職業で、廃課金キャラである。仲間の聖女、勇者、ソルジャー、アサシンの5人でPTを組んで挑み、ソルジャーのプレイヤーが生き延びた。
1人1人が1カ月、100万円課金している廃課金プレイヤーのPT構成で挑んだが、結果は10階層到達で終わった。罠に苦しめられ、モンスターの脅威に晒され敗北。
「そうなんだ…」
「いくら課金しても、勝てない。それなら、他のキャラを作り気分転換をする。そのつもりで、リコを作ったけど、今は、こっちが主体になってきたわ。初めての職業で、ポイントも多かったしね」
「う、リコちゃんもなの? 羨ましい」
リサも初めての職業でポイントを多く貰えたと話していた。最初にステータス、スキルのポイントが、500ポイントもあれば、育成も有利になる。
「それに、検証で、無課金プレイヤーは優遇されるって示されたから、リコは、当初のメインキャラより、高いステータスよ」
アヤネも涼子…否、リコに言われて、課金を一切していない。今は、リコからの支援で、消耗品の課金アイテムを使えるが、何時まで使えるか分からない。消耗品が無くなれば、アヤネは弱体化する。
「アヤネも、無課金を通す方がいいわよ。その方が、優遇されるわ。因みに、チュートリアルタワーを全てクリアすれば、レアアイテムやスキルが報酬で貰えるわね」
タワーとして存在する代表的なフィールドを経験する事が出来るのは、始まりの街にあるチュートリアルタワーだけである。
1階層=森
2階層=草原
3階層=海
4階層=砂漠
5階層=墓場
6階層=火山地帯
7階層=雪山地帯
8階層=浮遊島
9階層=遺跡
10階層=異空間
他にも種類はあるが、代表的なフィールドは10階層しかなく、広さはそれ程でもない。出現するモンスターも弱いらしいが、地形を超えるのが苦労する。準備を怠れば死ぬと言う事を経験させる為のチュートリアルタワーである。
リコは全てをクリアしており、プレゼントで幻術魔法を手に入れている。アイテムも貰っているようで、首輪を嵌めている。身代わりの首輪と言うらしくて、中央に魔石が3つ嵌められている。
モンスターを倒せばドロップする魔石は、LUKが高くないと手に入らない。リコは1000以上のLUKを持つので、モンスターを倒した時、魔石を手に入れている。魔石なら何でも使用でき、首輪に嵌める事で、3回まで、即死ダメージを身代わりで受けてくれる。
魔石さえあれば何度でも使える装備品で、耐久値は無く、壊れない仕様である。これが、チュートリアルタワーの全階層をクリアした報酬になる。只、同じ物が貰えるとは限らない。職業により変わり、無課金でクリアすれば、報酬も多くなる。
アヤネはリコと話をしながら、狩りを行う。見つけたモンスターを倒す前に、リコが短剣を投擲させ、ポリゴン化させて倒してしまう。アヤネの出番がない。
「リコちゃん、私も…」
「いいよ、インク代も掛かるし、私だけで十分だし!」
木々の後ろにいたゴブリンへ短剣を投擲する。木を貫通させてゴブリンを突きさす。刺さった短剣が消えるとリコの手元に戻る。帰還の短剣と呼ばれる装備で、投擲用の武器になる。
NPCの店で購入するナイフや短剣は、投擲するとその場に残る。回収する手間が省ける素晴らしい武器である。ガチャから出た武器で、リコはこれを複数所持している。
(いいのかな?)
申し訳なく思いながらも、リコに寄生しながら、アヤネはフィールドを歩く。昨日の狩りを思うと、効率は下がるが、それでも、経験値は多く入っていた。リコも少しは経験値を受け取っているが、レベル差で、アヤネの方が多く貰えた。
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