TowerDungeonOnline(タワーダンジョンオンライン)

小佐古明宏

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1章 始まりの街

18話 街へ帰還

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 綾からLINEが届き、返事を返した後、今度は亜里沙からもLINEが届いた。今からログインするという内容だったので、理沙も今からログインする事を伝える。

 目を覚ましたのはゲームの中で、小屋に備え付けていたベッドの上だった。並んだベッドの隣に、アリサも現れ、目を覚ます。

「おはよう、リサお姉ちゃん」

「おはよう。って、リアルは夜だけどな」

 互いに笑い合うと、アリサはベッドから降りる。リサも降りようと思ったが、表示されたウィンドウに視線を向ける。

「おぉ…マジか?」

 トウジョウ君が得た経験値と、ドロップアイテムが一気に、リサへと流れ込んだ。インベントリへ入るドロップアイテムのログが大量に流れ、レベルアップを知らせる音が鳴り響く。

 気づけばLV:45にまで上がっていた。

「凄く上がったな」

「そうなの? いくつ?」

「45まで上がった」

「うはっ…私と同じだ」

 半笑いのアリサを見つつ、ベッドに座りながらポイントの振り分けを行う。

「時間かかりそうだ」

「そう? じゃ、先に外に出てるね」

 そう言って、アリサが外へと出ていく。リサは、スキルを見ながら、MPを上げる為、共有スキルにポイントを振る。残りはBOTの時間を上げる為に、振り分けて、ログアウト中のトウジョウ君の稼働時間を伸ばす。

(DPを全て使い果たしたか…)

 時間制限の中、トウジョウ君はゴブリンを4万体、討伐していた。その4万体は、全て魔石がドロップしており、討伐部位の左耳も4万個ある。

 クエストのゴブリンの討伐では、ステータス、スキルを上げるのは1度きりしか出来ない。しかし、上限数達成報酬は何度でも得られる。何故なら、手に入るアイテムが消耗品だからである。

 耐久時間があり、ログインしている時間により減り、壊れてしまう。なので、ストックとして持っておく必要がある。

「ゴブリンの討伐は…上限数達成報酬が1000体だから…4万体と言う事は…」

40個受け取る事が出来る。思わず笑みがこぼれる。手に入れたアイテムは、合成を行う事で、耐久時間を延ばす事が出来る。合成には、合成の巻物というアイテムがいる。

 合成の巻物はNPCの店で購入できるが、1つ、10万ギルの値段がする。LUKが低いと失敗する為、殆どのプレイヤーが合成を行わない。中には、LUKを重点的に上げているプレイヤーがおり、代わりに合成をしてもらう事も出来る。

 その場合は、報酬として、合成したアイテムを要求される。LUKの高いプレイヤーは、苦労せずに、合成したアイテムを手に入れる事が出来る。戦闘に不向きな事が多いが、上げているプレイヤーは、殆どが生産職だという。

 物づくりにもLUKが関係しており、運が悪いと失敗する。その為、鍛冶師のプレイヤーは、戦闘が苦手な代わり、とてつもない富を得ている。リサの場合は、自身のLUKは低いが、トウジョウ君に合成をしてもらえば成功する。

 トウジョウ君がアイテムを使用できるか、試してみないと分からない。討伐部位をギルドに提出し、報酬を得てから試す必要がある。他にも受けたいクエストもあるので、まとめて消化する。

「よし、これでいいかな?」

 ステータスもスキルも、ポイントを振り終える。

 リサ
 種族:人間
 職業:ゴーレムクリエイター
 LV:45
 HP:690/690
 MP:1330/1330
 STR:95
 VIT:190
 AGI:170
 DEX:80
 INT:410
 LUK:40

 ステータスポイント:0【845】

 共通スキル
 HPアップ:LV3…+300【25】
 MPアップ:LV5…+500【85】
 STRアップ:LV2…+20【15】
 VITアップ:LV3…+30【25】
 AGIアップ:LV2…+20【15】
 DEXアップ:LV2…+20【15】
 INTアップ:LV3…+30【25】
 LUKアップ:LV2…+20【15】
 全異常耐性:LV2【15】
 全属性耐性:LV2【15】

 専用スキル
 MPゴーレム作成:LV2【60】
 HP自動回復:LV1【50】
 MP自動回復:LV1【50】
 共有スキル:LV3【80】
 ゴーレムクリエイト:LV1【50】
 魔改造強化:LV1【50】
 パーツ作成:LV1【50】
 ゴーレム格納庫:LV1【50】
 ゴーレムBOT:LV5【150】※プレゼントスキル

 スキルポイント:5【845】

 称号:ゴブリンハンター【20/20】ダンジョンマスター【0/0】

 やっとMPが1000を超えた。これでトウジョウ君も強くなる。

「ん~少し足らない」

 トウジョウ君にオプションスキルを2つ付けるには、後500、MPが足らない。

 オプションスキルは、MP900、MP1800、MP3600、MP7200と2倍ずつ毎に付与出来る。とても、強力な為に、必要MPを高く設定されていた。出来れば、MP3600まで上げて、3つまでオプションスキルを使用できるようにしたい。

 リサは、ステータスを確認し終えると、小屋を出る。マップでアリサを確認すると、3つの青い印が表示されていた。1人はアリサで、もう1人はアヤネだと確信した。

 残る1つの反応は、アヤネの連れの者だと思う。LINEで、編集者と一緒に行動していると言っていた。リサは、小屋を出ると、3つの青い印の場所へと向かう。

 行くと何故か、アリサと、猫耳の少女が睨み合っていた。プレイヤー名はリコと言う名前で、アヤネの連れだった。リコから、自己紹介を受けて、フレンド登録を行った。

 フレンドリストには、名前と、相手のレベルが表示される。リコのレベルが60と高くて驚いた。リコは、何やら、アヤネのレベル上げを手伝っている様子だった。なら、ダンジョンコアを使えば効率よく狩りが出来る。

「ダンジョンマスターなら、ホブゴブリンを召喚出来ますわね? ドロップアイテムの魔石を渡すので、大量に出してもらえませんか?」

 ゴブリンの集落を管理下に置いた事で、ダンジョンマスターと認識された。当然、誤魔化すつもりもないので、正直に話す。

(手伝いたいけど、今は、クエストの報酬を優先したい)

 なので、アリサに丸投げする事にした。

「あ~、これから始まりの街に戻ろうと思ったけど…アリサ」

「なに?」

「コアの前に行くぞ。街に戻っている間、サブマスターにするから、リコさんと、アヤネの狩りの手伝いをしてくれ」

「うぅ…私もリサお姉ちゃんと、街に戻りたかったのに」

 拗ねながらも、仕方がないと諦めて聞いてくれた。リコにお礼を言われていたが、何か不機嫌な様子だった。話を聞いてみると、決闘で負けたらしい。その事が今も気に入らないようで、アリサ的に、リコをライバル視しているように見える。

 そんな、アリサとリコの関係に苦笑いを浮かべながら、3人を小屋に案内する。アリサにサブマスターを任命させると、昨日と同じように500体の討伐をDPに変換させ、5万DPをチャージする。

「リコさん、だったね?」

「ええ、何かしら?」

「…アヤネの事、よろしく頼む」

 自分の事を優先する為に、リコに迷惑をかける。申し訳ない気持ちで頭を下げた。

「分かりましたわ。大切な仕事仲間ですもの、守り抜きますわ」

「アリサ、調子に乗って、大量に召喚するなよ。リコさんの実力なら問題ないと思うが、アヤネもいるんだし、加減しろよ」

「わ、分かってるよ~」

 アリサに調子に乗らない様に忠告すると、不機嫌そうに返事をする。コアの操作を見守り、リサは小屋を後にする。

「じゃ、私は街に戻るから。クエストの更新したら戻ってくる」

「分かりましたわ」

「うん、待ってるね」

 リコとアヤネと別れたリサは、小屋を飛び出すと、駆け出してフィールド外へと逃げる。アリサが召喚したホブゴブリンを現れたのを確認すると、MPゴーレム作成を使用する。

 消費するMPによりカスタマイズが出来るようになり、乗り心地の改善を行う事にした。トウジョウ君、内部搭乗型を選択する。今までは背中に箱の様な物を背をわせて、乗り込み運んでもらっていた。

 今度は、胸の部分が割れて、中に背もたれの付いた椅子があり、乗り込むようになった。完全にトウジョウ君の中に入る事で、周囲を石で覆い、守りを上げる。

「何だか、ガ〇ダムとかのMSを思い浮かべるな」

 実際、2mから、5mへと巨大になり、手足が伸びた。頭の部分は兜を付けたような角が生えている。MPを1300も消費した事で、トウジョウ君は、より強固な存在になり、誰にも負けないゴーレムへと進化した。

 トウジョウ君【一体型】
 種族:ストーンゴーレム
 HP:3290/3290
 MP:3930/3930
 STR:1395
 VIT:1490
 AGI:1470
 DEX:1380
 INT:1710
 LUK:1340

 共有スキル
 全属性耐性:LV2
 AGIアップ:LV2…+20
 STRアップ:LV2…+20

 弱点:風
 
 オプションスキル:弾岩砲…消費MP×10のダメージを与える岩石の弾丸を飛ばす。連射が可能。

 トウジョウ君の中に乗り込んだ事で、一体化されて、リサの体の一部となった。中に入る事で視界が遮られ、真っ暗になるが、トウジョウ君の見ている光景が、ウィンドウに表示される。

 少し問題があるとすれば、乗り心地が良くない事だ。

「クッション、貰っててよかった」

 アヤネからクッションを貰っており、お尻が痛いので、石で出来た椅子の上に敷く。リサは、ウィンドウの淡く光る画面を明かり代わりにして、トウジョウ君に、始まりの街へと変えるように命じた。

「トウジョウ君、道中のモンスターを倒しながら、始まりの街へ帰還」

 リサの命令を聞き、トウジョウ君が動き出す。背中に乗せられた時より、振動が激しい。

「…内部を柔らかくする方法を考えないと、乗り心地が最悪だな」

 ウィンドウを操作しながらリサは揺られる。内部の構造をカスタマイズで柔らかくする方法を探る。MPゴーレム作成のレベルが上がれば、素材を合成してゴーレムの作成が可能となるらしい。

 外を石に、中を柔らかい粘土を利用し、衝撃を和らげる事が出来る。始まりの街でクエストを更新すれば、MPゴーレム作成のレベルを上げてもいいと考えた。

「うん?」

 前方に見覚えのある巨大なオークが現れた。ウィンドウの画面越しに、近づいてくる光景が映り、次の瞬間、トウジョウ君に殴られて、倒された。ログが流れ、ジャイアントオークの魔石とオークの肉【大】をドロップアイテムとして回収した。

 オークの肉は、食材として使用されているらしく、豚肉のような味がする。オークは見た目が二足歩行する豚なので、それをイメージしての、設定らしい。ファンタジーの世界にありがちである。

「あっけなく倒したな」

 トウジョウ君と出会い頭に遭遇したようで、襲われる前に、殴り飛ばした。ジャイアントオークは4mに対し、今のトウジョウ君は5mになる。体格差により、楽勝に倒せた。

 リサは、右上のマップを確認し、始まりの街が近づいてくると、トウジョウ君の速度を落とした。街が近づくと、プレイヤーの数が多くなる。5mの巨体を持つ、石の巨人が現れたら、驚く。自重する事を学び、リサはトウジョウ君に命令を行った。
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