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1章
14話 獣王
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ギルドマスターと町長をしていたのは獅子の姿をした獣人の女性だった。女性の獣人は男性より、人間に近い容姿をしている。ボサボサの白い髪をかきながら、俺たちを見つめる。
「あぁ…強い気配を感じていたが、あんたたちかい」
俺は目の前の女性を直感的に強者だと認識していた。
『マスター、お気をつけて…』
『何をだ?』
『彼女、私たちよりレベルは上です。鑑定が出来ません』
俺は鑑定を持っていないので分からない。マリは持っているので、女性を鑑定した。見る事が出来ないと言う事は、レベルは俺たちより高い。
『奈々、彼女は?』
「うん、久しぶりだね。ガーラ!」
「ああ…久しぶりだな?」
首を傾げるガーラを見ながら、奈々が笑う。3度も同じ事が起きる。俺はリーシャに目配りをすると、彼女に闇魔法でミユの顔を覆ってもらった。直後、奈々の顔がドロッ。
「………ふっ…」
ガーラは小さく息を吐くと、
バタッ!
仰向けになり倒れ気絶した。ミユの様に悲鳴は上げていなかったが、奈々の悪戯? は各々に大きな影響を与えた。俺は呆れながら、奈々の頭を軽く叩く。
「いい加減にしろ」
「ははは…反省」
俺に胸に手を乗せ、反省のポーズをする。もう、何でもなれと思いながら、俺はリーシャにミユの闇魔法を解いてもらう。
「あれ、マスターが寝てる?」
「あぁ…疲れてるんだと思う。俺たちが上に運ぶよ」
「そうですか?」
「ミユちゃん、門番の件で話があるんだが…」
ジョーが会話に入り、俺たちからミユの意思を外してくれた。その隙に、俺はガーラを担ぎ、階段を上る。その後ろを奈々たちが付いて着た。
3階、住居となるフロアに上がると、リーシャに応接間を見つけてもらい、ソファーに彼女を寝かせた。目を覚ますまで、時間がかかりそうなので、一端、俺たちは、リーシャの空間魔法で町の外へと抜けだした。
――――小一時間、周辺の森で俺たちは狩りをしていた。初めての戦闘にならす為、ゴブリンを見つけては切り刻んでいた。主に、俺とマリのレベル上げが中心で、ガーラよりレベルを上げた。
奈々の鑑定で、ガーラのレベルは950だという。なので、短時間にレベルを上げる為、裏技を行った。リーシャの超範囲魔法攻撃で、エルジーナのモンスターを一掃した。
「モンスターのみを的確に選んで、超範囲魔法攻撃とか、大和、無茶な事を言うわね」
愚痴りながらも行えるのが凄いと思う。その中に、奈々の眷属であるスライムは除外したという。そして、空間魔法とアイテムボックスの組み合わせで、離れた場所のモンスターの死体も回収した。俺とマリは一気にレベルが上がり2人とも装備込みでレベル1000を超えた。
奈々もリーシャもレベルが上がっており、大量のDPを獲得した。ダンジョンメニューを開き、DPショップを選ぶと、DPの残高が1億を超えている。一掃したと言っても、広大なエルジーナの全てを範囲にする事は出来ない。
範囲外は倒していない。
「……凄くレベルが上がったから、どんなモンスターを倒したのか気になるな」
「普通に、ドラゴンがいたわよ。ワイバーンも含まれていたし、呆気なく、倒したわ。後、ゴブリンの群れも厄介そうだったから、葬ったわ。多分、向こうは…不思議に思うでしょうけどね」
「うん? 向こう?」
「…なんでもないわ」
話を逸らされた気がしたが、リーシャはそれっきり口を開かない。その代わり、奈々と視線を合わせ、念話で話しているようなそぶりを見せていた。
首を傾げていると、
「モンスターは成るべく損傷の内容に仕留めたわ。後で、素材として使える部分を奈々の眷属に用意してもらうわ」
「そうだね。眷属のスライムたちに後で解体してもらうよ」
念話の内容は、解体についてだった。素材として使える為、傷は残さず、心臓を狙い撃ちして潰したと話す。空間魔法と、重力魔法の複合魔法らしい。
リーシャだけは敵に回したくない。
正直そう思う。
「そろそろ、戻るか?」
「そうですね…ガーラさんが目を覚ましそうです」
マリが分身を傍に置き見張りをしている。その分身からの情報を、本人が受け、俺たちに話した。リーシャの空間魔法で転移し、眠るソファーの向かい側に俺たちは座る。マリは分身を消し、ソファーの後ろに佇む。
「ん…あれ? 私は…何を?」
朦朧とした視線で目を覚ましたガーラに俺は声をかける。
「大丈夫ですか? 仕事の疲れで気を失ったようですよ」
「そ、そうか…。で? 君たちは?」
リーシャに、奈々の顔面ドロッ事件の記憶は消してもらった。
「俺たちは、情報提供に、この町へとやってきた冒険者です」
「情報提供だと?」
ガーラに何を話すか、事前に話し合っていた。奈々によると、ガーラは獣王と呼ばれる獣人の王族の生き残りらしい。お姫様と言う話だ。奈々とも仲が良く、出会う度に、肉体言語で語り合っていた。
脳筋と言うやつか?
奈々は、魔法を使わないスライムだ。戦闘は腕を触手にして打撃を行ったり、体を膨張させて、体積を増やしてのしかかったりしていた。時には、手を巨大化させて殴ったりもした。
状態異常無効、物理攻撃無効、魔法攻撃無効の3つの無効化スキルで、奈々は恐れる事無く接近戦に挑んでいた。反則だと思うが、奈々でも、ガーラの相手は大変だったらしい。
「この町に、ラストリアから奴隷商人と、冒険者がやってくる。その事を伝えに俺たちはやってきた」
怪しそうな視線を向けられると、ガーラは問いかけてきた。
「嘘じゃない。その保証はあるのか?」
「ああ、俺たちは嘘をつかない」
実際、本当にやってくるのか怪しいが…。俺はリーシャを見つめる。
「私の感じ取れる範囲だと、確実に何かの集団が接近してるわね。町の東の方向から、ちょうどラストリア方面から来てるわね」
彼女の感知範囲は、レベルも高いので広範囲だ。だから、超範囲魔法攻撃が可能だった。
「なるほど…あんたの言う事は…信用できそうだな」
「そう? 後、私はリーシャよ。あんたじゃないわ」
「悪い、気を付けるよ」
威圧にガーラが怯えた。俺たちには影響していない事から、ピンポイントで与えている。
「俺は、大和、こいつが…」
「奈々だよ」
「マリでございます」
リーシャは俺の右、奈々は左に座り、後ろに立つマリも自己紹介をする。
「マリさんにヤマト君か、それにナナ? もしかして、スライムの嬢ちゃんか?」
「うん、そうだよ」
今度は顔を溶かさずに、右腕を見せてドロッと溶かした。顔は流石に駄目だと理解したようだ。見せるなら、顔以外でも可能なのに、敢えて顔を溶かしたのは、やはり、驚かそうという悪戯心があったように思える。
「そうか、ナナには感謝してるよ。ありがとう」
「いいよ、ガーラとは友達だから!」
「ははは…友達なら、やり合うか?」
「いいよ。この体でやり合うの、楽しそうだし」
何故か、2人がやる気の様だ。殴り合いを行おうという雰囲気に、俺は肩を落とす。
「奈々、嬉しそうにするなよ。問題が迫ってるのに」
「そうかな?」
「ヤマト君と言ったか? 別に大きな問題ではないぞ」
奴隷商人と冒険者が迫ってきているのに、大きな問題ではない。そう話す。
「籠城も可能なように、この町は食料の貯蓄もしっかりとしている。ナナには石板以外にも、貰ったからな」
俺はリーシャを見下ろす。何か思い出すかのように頭をひねり、
『そういえば、大型収納庫を作ったわね』
念話で俺に呟いた。
『それもオブジェクトか?』
『石板を組み合させた大型収納庫よ。種類はオブジェクトになるわね。確か、保管用に時間停止のエンチャントを施したわね。時間停止のONとOFFが可能なようにして』
石板は石壁以外に、大型収納庫の設置にも使っている。だから、10万個と数が多い。
「そういえば、大型収納庫もあげたね」
「あれは凄くいいな。保管した物の時間が止まるから、野菜や肉が新鮮な状態で出し入れができる」
どこに設置しているのかと言うと、地下に埋めているらしい。ギルドが出入り口で、範囲は町と同等の広さを持つ。これは、地下からの侵入を防ぐ役割も考えて、埋設した。
石壁と連結しているので、破られる事はない。鉄壁を誇る。大型収納庫の中は、時間が停止しているが、入る時は、時間を進める事が出来る。切り替えのスイッチが入り口に設けられている。
「籠城をしても、10年は食料に困らない程、蓄えている」
籠城する事を前提で、石板の配置も考えられている。出入り口の木の門の裏に、塞ぐ用の石板を設置できるように工夫をしている。高さ3メートルの石板は、乗り越えることも出来ず、ダンジョンの壁としてオブジェクトを認識させている。
空を飛んで乗り越えようとしても透明な壁が邪魔をする。石板を越えて矢を撃ったり、魔法攻撃を仕掛けようとしても、透明の壁に防がれる。鉄壁の壁だった。
「事務仕事ばかりで、体を動かしたいと思っていた。ナナ、私に付き合え」
「了解~」
俺たちが眼中にない様で、ガーラと奈々が立ち上がる。窓を開くと、3階から飛び降りて、町を掛けていく。
「……追いかけるか?」
「はぁああああ!!!! 馬鹿スライム!!!!!」
「奈々は本当に…仕方がないですね」
俺の問いに、リーシャは苛立ち、マリは呆れる。俺も内心、呆れながら、リーシャに飛んでもらう。どうやら、2人は町を出たらしい。その方向は、東だった。奈々が先導して、ガーラが追いかける。そんな構図だ。
「あぁ…強い気配を感じていたが、あんたたちかい」
俺は目の前の女性を直感的に強者だと認識していた。
『マスター、お気をつけて…』
『何をだ?』
『彼女、私たちよりレベルは上です。鑑定が出来ません』
俺は鑑定を持っていないので分からない。マリは持っているので、女性を鑑定した。見る事が出来ないと言う事は、レベルは俺たちより高い。
『奈々、彼女は?』
「うん、久しぶりだね。ガーラ!」
「ああ…久しぶりだな?」
首を傾げるガーラを見ながら、奈々が笑う。3度も同じ事が起きる。俺はリーシャに目配りをすると、彼女に闇魔法でミユの顔を覆ってもらった。直後、奈々の顔がドロッ。
「………ふっ…」
ガーラは小さく息を吐くと、
バタッ!
仰向けになり倒れ気絶した。ミユの様に悲鳴は上げていなかったが、奈々の悪戯? は各々に大きな影響を与えた。俺は呆れながら、奈々の頭を軽く叩く。
「いい加減にしろ」
「ははは…反省」
俺に胸に手を乗せ、反省のポーズをする。もう、何でもなれと思いながら、俺はリーシャにミユの闇魔法を解いてもらう。
「あれ、マスターが寝てる?」
「あぁ…疲れてるんだと思う。俺たちが上に運ぶよ」
「そうですか?」
「ミユちゃん、門番の件で話があるんだが…」
ジョーが会話に入り、俺たちからミユの意思を外してくれた。その隙に、俺はガーラを担ぎ、階段を上る。その後ろを奈々たちが付いて着た。
3階、住居となるフロアに上がると、リーシャに応接間を見つけてもらい、ソファーに彼女を寝かせた。目を覚ますまで、時間がかかりそうなので、一端、俺たちは、リーシャの空間魔法で町の外へと抜けだした。
――――小一時間、周辺の森で俺たちは狩りをしていた。初めての戦闘にならす為、ゴブリンを見つけては切り刻んでいた。主に、俺とマリのレベル上げが中心で、ガーラよりレベルを上げた。
奈々の鑑定で、ガーラのレベルは950だという。なので、短時間にレベルを上げる為、裏技を行った。リーシャの超範囲魔法攻撃で、エルジーナのモンスターを一掃した。
「モンスターのみを的確に選んで、超範囲魔法攻撃とか、大和、無茶な事を言うわね」
愚痴りながらも行えるのが凄いと思う。その中に、奈々の眷属であるスライムは除外したという。そして、空間魔法とアイテムボックスの組み合わせで、離れた場所のモンスターの死体も回収した。俺とマリは一気にレベルが上がり2人とも装備込みでレベル1000を超えた。
奈々もリーシャもレベルが上がっており、大量のDPを獲得した。ダンジョンメニューを開き、DPショップを選ぶと、DPの残高が1億を超えている。一掃したと言っても、広大なエルジーナの全てを範囲にする事は出来ない。
範囲外は倒していない。
「……凄くレベルが上がったから、どんなモンスターを倒したのか気になるな」
「普通に、ドラゴンがいたわよ。ワイバーンも含まれていたし、呆気なく、倒したわ。後、ゴブリンの群れも厄介そうだったから、葬ったわ。多分、向こうは…不思議に思うでしょうけどね」
「うん? 向こう?」
「…なんでもないわ」
話を逸らされた気がしたが、リーシャはそれっきり口を開かない。その代わり、奈々と視線を合わせ、念話で話しているようなそぶりを見せていた。
首を傾げていると、
「モンスターは成るべく損傷の内容に仕留めたわ。後で、素材として使える部分を奈々の眷属に用意してもらうわ」
「そうだね。眷属のスライムたちに後で解体してもらうよ」
念話の内容は、解体についてだった。素材として使える為、傷は残さず、心臓を狙い撃ちして潰したと話す。空間魔法と、重力魔法の複合魔法らしい。
リーシャだけは敵に回したくない。
正直そう思う。
「そろそろ、戻るか?」
「そうですね…ガーラさんが目を覚ましそうです」
マリが分身を傍に置き見張りをしている。その分身からの情報を、本人が受け、俺たちに話した。リーシャの空間魔法で転移し、眠るソファーの向かい側に俺たちは座る。マリは分身を消し、ソファーの後ろに佇む。
「ん…あれ? 私は…何を?」
朦朧とした視線で目を覚ましたガーラに俺は声をかける。
「大丈夫ですか? 仕事の疲れで気を失ったようですよ」
「そ、そうか…。で? 君たちは?」
リーシャに、奈々の顔面ドロッ事件の記憶は消してもらった。
「俺たちは、情報提供に、この町へとやってきた冒険者です」
「情報提供だと?」
ガーラに何を話すか、事前に話し合っていた。奈々によると、ガーラは獣王と呼ばれる獣人の王族の生き残りらしい。お姫様と言う話だ。奈々とも仲が良く、出会う度に、肉体言語で語り合っていた。
脳筋と言うやつか?
奈々は、魔法を使わないスライムだ。戦闘は腕を触手にして打撃を行ったり、体を膨張させて、体積を増やしてのしかかったりしていた。時には、手を巨大化させて殴ったりもした。
状態異常無効、物理攻撃無効、魔法攻撃無効の3つの無効化スキルで、奈々は恐れる事無く接近戦に挑んでいた。反則だと思うが、奈々でも、ガーラの相手は大変だったらしい。
「この町に、ラストリアから奴隷商人と、冒険者がやってくる。その事を伝えに俺たちはやってきた」
怪しそうな視線を向けられると、ガーラは問いかけてきた。
「嘘じゃない。その保証はあるのか?」
「ああ、俺たちは嘘をつかない」
実際、本当にやってくるのか怪しいが…。俺はリーシャを見つめる。
「私の感じ取れる範囲だと、確実に何かの集団が接近してるわね。町の東の方向から、ちょうどラストリア方面から来てるわね」
彼女の感知範囲は、レベルも高いので広範囲だ。だから、超範囲魔法攻撃が可能だった。
「なるほど…あんたの言う事は…信用できそうだな」
「そう? 後、私はリーシャよ。あんたじゃないわ」
「悪い、気を付けるよ」
威圧にガーラが怯えた。俺たちには影響していない事から、ピンポイントで与えている。
「俺は、大和、こいつが…」
「奈々だよ」
「マリでございます」
リーシャは俺の右、奈々は左に座り、後ろに立つマリも自己紹介をする。
「マリさんにヤマト君か、それにナナ? もしかして、スライムの嬢ちゃんか?」
「うん、そうだよ」
今度は顔を溶かさずに、右腕を見せてドロッと溶かした。顔は流石に駄目だと理解したようだ。見せるなら、顔以外でも可能なのに、敢えて顔を溶かしたのは、やはり、驚かそうという悪戯心があったように思える。
「そうか、ナナには感謝してるよ。ありがとう」
「いいよ、ガーラとは友達だから!」
「ははは…友達なら、やり合うか?」
「いいよ。この体でやり合うの、楽しそうだし」
何故か、2人がやる気の様だ。殴り合いを行おうという雰囲気に、俺は肩を落とす。
「奈々、嬉しそうにするなよ。問題が迫ってるのに」
「そうかな?」
「ヤマト君と言ったか? 別に大きな問題ではないぞ」
奴隷商人と冒険者が迫ってきているのに、大きな問題ではない。そう話す。
「籠城も可能なように、この町は食料の貯蓄もしっかりとしている。ナナには石板以外にも、貰ったからな」
俺はリーシャを見下ろす。何か思い出すかのように頭をひねり、
『そういえば、大型収納庫を作ったわね』
念話で俺に呟いた。
『それもオブジェクトか?』
『石板を組み合させた大型収納庫よ。種類はオブジェクトになるわね。確か、保管用に時間停止のエンチャントを施したわね。時間停止のONとOFFが可能なようにして』
石板は石壁以外に、大型収納庫の設置にも使っている。だから、10万個と数が多い。
「そういえば、大型収納庫もあげたね」
「あれは凄くいいな。保管した物の時間が止まるから、野菜や肉が新鮮な状態で出し入れができる」
どこに設置しているのかと言うと、地下に埋めているらしい。ギルドが出入り口で、範囲は町と同等の広さを持つ。これは、地下からの侵入を防ぐ役割も考えて、埋設した。
石壁と連結しているので、破られる事はない。鉄壁を誇る。大型収納庫の中は、時間が停止しているが、入る時は、時間を進める事が出来る。切り替えのスイッチが入り口に設けられている。
「籠城をしても、10年は食料に困らない程、蓄えている」
籠城する事を前提で、石板の配置も考えられている。出入り口の木の門の裏に、塞ぐ用の石板を設置できるように工夫をしている。高さ3メートルの石板は、乗り越えることも出来ず、ダンジョンの壁としてオブジェクトを認識させている。
空を飛んで乗り越えようとしても透明な壁が邪魔をする。石板を越えて矢を撃ったり、魔法攻撃を仕掛けようとしても、透明の壁に防がれる。鉄壁の壁だった。
「事務仕事ばかりで、体を動かしたいと思っていた。ナナ、私に付き合え」
「了解~」
俺たちが眼中にない様で、ガーラと奈々が立ち上がる。窓を開くと、3階から飛び降りて、町を掛けていく。
「……追いかけるか?」
「はぁああああ!!!! 馬鹿スライム!!!!!」
「奈々は本当に…仕方がないですね」
俺の問いに、リーシャは苛立ち、マリは呆れる。俺も内心、呆れながら、リーシャに飛んでもらう。どうやら、2人は町を出たらしい。その方向は、東だった。奈々が先導して、ガーラが追いかける。そんな構図だ。
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