1 / 1
ロルフの大好きなクララ
しおりを挟むエーベルシュタイン公爵家の嫡男、ロルフは、ふわふわの淡い金髪に、青い瞳を持つ、天使のような子どもだった。
両親も使用人も、誰もがロルフを可愛がったが、ロルフがいちばん懐いたのは、五歳のときに専属メイドとなったクララだ。専属になる前から、クララはどのメイドよりも熱心にロルフの世話をしてくれて、いつもロルフの側にいてくれた。
優しくて、いつもギュッと抱きしめてくれる。お母様とは違う、もっと甘くてやわらかい感触。
忙しい両親の代わりにクララがいてくれたから、ロルフは寂しい気持ちを抱えずにすんだ。
ロルフが六歳のとき、公爵家に一つの変化が訪れた。
お母様から話を聞いたロルフは、まっさきにクララに伝える。
「クララっ! きいてきいて!」
「お坊ちゃま。廊下を走るのは行儀が悪いですよ?」
「も~! クララ、だめ!」
クララはときどき、ロルフを他のメイドみたいに「おぼっちゃま」って呼ぶ。
だいたい、ロルフのマナーが悪いときだ。
「クララはぼくのメイドなんだから、ロルフってよばないとダメなの!」
そんなワガママをぶつけると、クララがクスクスと笑う。
四つはなれてるだけなのに、クララは大人みたいで、すごくきれいなんだ。
クララはロルフの乱れた襟元を整えて、にっこり微笑んだ。
「ふふ。ロルフ様、ですね」
「うん!」
「それで、お話とは?」
「あ、そうだった! ぼくね、おにいちゃんになるんだよ!」
「まあ! ロルフ様がお兄様に?」
「うん! きょう、おかあさまがおしえてくれたんだ! こんど、おとーとか、いもーとが生まれるって!」
「では、ロルフ様は立派なお兄様にならないといけませんね」
クララはニコニコしながら、ロルフの頭を撫でてくれる。
本当は、使用人がそんなことをすると、ブレイだって、クララが怒られる。
だからロルフは、クララが怒られないように、二人きりのときだけ、頭をなでてもらった。
「ロルフ様に、ご兄弟が誕生するなんて……」
クララは、しみじみとつぶやく。
あめ色みたいな瞳は、遠くを見ていて、ロルフは首をかしげた。
「クララ?」
「あっ、すみません……ロルフ様は、ずっと一人っ子だと思っていたので」
そう言ったクララのまなじりに、涙が浮かんでいる。
「どうしたの? だれか、クララをいじめたの?」
「いいえ。ロルフ様のご家族をお守りできたことで、まさか、新しい命が……っ」
クララは声を震わせる。
でも、泣いているのに、笑顔なんだ。
(どうして?)
ロルフにはよく分からない。でも、クララは喜んでるみたいだった。
「本当によかったですっ」
「クララ……ぼく、いいおにいちゃんに、なるから!」
「まあ! ロルフ様ったら、何てお優しいのでしょう!」
クララが、ぎゅっと抱きしめてくれる。
良い兄になると、クララが喜んでくれるらしい。
「ぼく、いいおにいちゃんになって……クララのことも、まもるからね?」
「っ! 天使だわっ!」
クララが感激の声を上げ、満面の笑顔でロルフを見つめる。
大好きだって言われてる気がして、ロルフも嬉しくなった。
「だいすき、クララ」
ロルフがニッコリ笑うと、クララがまたぎゅうっと抱きしめてくれた。
(終わり)
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる