末っ子アイドルは推しと結ばれたい!

早桃 氷魚(さもも ひお)

文字の大きさ
8 / 9

8話 自販機で推しと遭遇!

しおりを挟む





 レディースっぽい服を組み合わせるのが、オレの得意なファッションだ。羽織が肩からずり下がっているのも、計算のうち。夏はそのまま肩を剥き出しにできるけど、もう秋だしな。
 それでも、ゆるっとした着こなしをすると、ファンの子が喜ぶ。
 今から向かうのは、打ち合わせだけど、LiPの時もこんな感じだし、『ナナ』のイメージには合ってるから大丈夫だろう。
 いちおうオシャレ好きで通ってるので、お気に入りのブレスレットとネックレスはそのままにして、伸びた髪を結ぶべきか迷う。
 てか、ドラマの役、髪色がピンクって良いのか?
 大学生だから、アリなのか……オファーのときも、髪色を変えてくれとかは、言われなかったしなぁ。
「まあ、いっか」
 髪も結ばずに、そのまま行くことにする。
 時計を確認すると、まだ数分しか経っていなかった。
 これから、結城くんに会うんだよな……。
 推しに会えるのはめちゃくちゃ嬉しいけど、初対面の挨拶は、絶対に失敗できない。
 今度こそ、オレの方から挨拶して、良い印象を持ってもらうのだ!
 それから、結城くんを含め、周りにもガチファンだと悟られないように、平常心で臨まないと。
「よし! コーヒー飲んで、気合い入れようっ」
 ジッとしていられず、オレは財布を持って控室を出ると、廊下の曲がり角にある自販機へ向かう。
 他のスタジオも撮影はないようで、がらんとしていた。
 スタッフもいないなんて珍しいなと思いながら歩いていると、誰かが自販機の前に立っていた。
「えっ?」
 思わず、足が止まる。
 そのシルエットを見ただけで、息が止まるかと思った。
 えぇぇッ! うそだろ!?
 動揺しながら、その人物を凝視する。
 高身長のすらりとした体型に黒い革ジャンと白いカットソー、黒のスキニーを合わせただけの、シンプルなコーデ。
 あまりにも似合いすぎて「カッコイイ」以外の言葉が見つからない。
 オレに気づいて振り向いた顔は、見惚れるほど端正な顔だった。
 ゆ、ゆゆ結城くん!! なんでここに!?
 驚きすぎて、言葉を失う。
 この前すれ違った時は、吉良くんの背中に隠れてて、ちょっとしか顔を見なかったけど……いや、カッコよすぎだろ!?
 ポーッと見惚れていると、結城くんは穏やかな顔でオレを見つめて、会釈した。
「おはようございます」
「っ! ぁっ、えと……お、おはよう、ございます……!」
 あぁぁっ! また挨拶すんの忘れてた!
 気を悪くしないかヒヤヒヤしたけど、結城くんは少し急いだ様子で自販機から飲み物を取ると、すぐ横に移動した。
「どうぞ」
「えっ!?」
 あ、オレの為に急いでくれたのか!
 結城くんの優しさに感動しながら、吸い寄せられるように自販機までの前に立った。
 爽やかな香りがふわっと薫って、鼓動が跳ね上がる。
「七海くん」
 急に横から名前を呼ばれて、ハッと振り向いた。
 結城くんはまだそこにいて、微笑みながらオレを見ている。それどころかオレに顔を近づけ、内緒話をするように囁いた。
「七海くん、だよね?」
「は、はぃぃっ!」
 とんでもない美声が鼓膜を震わせる。
 何度もテレビで聞いているはずなのに、生の声は破壊力がすさまじかった。
「初めまして」
「ひゃぁっ! あ、あっ、その……!」
「この後、よろしくね」
 動揺するあまり、首を縦に振るだけで精一杯だ。
 てか、推しが! オレに話しかけてる!?
 頭の中はパニックで、まともに返事も返せない。
 挙動不審なオレを見かねたのか、結城くんは自販機に小銭を入れると、商品を指した。
「七海くんは、どれがいい?」
「っ!?」
「好きなの、選んで」
「ぁっ、飲み物……」
 自販機に並ぶ缶を選ぶよう言われ、とっさに目に付いたミルクコーヒーを指さす。
「こ、これっ」
「ミルクコーヒー?」
「うんっ」
「冷たいのでいい?」
「大丈夫ですっ!」
 勢いよく頷くと、結城くんが自販機のボタンを押した。
 ガコンと缶が落ちる音がして、結城くんは屈んでミルクコーヒーを取ると、ハイ、と手渡してきた。
 その一連の仕草すら、うっとりするほどカッコよかった。
「ぁ、ああありがとうっ!」
 受け取る手が震えるし、変にどもってしまった。
 でも結城くんは気にした様子もない。
「七海くんは、甘いの好きなんだ?」
「あっ、いや、た、たまに……」
 適当に選んだとは、口が裂けても言えない。
 でも、ミルクコーヒー好きになれば、嘘じゃなくなるし!
「そっか。じゃあ、また後で」
 結城くんは微笑みを浮かべたまま、軽く会釈して自販機から離れる。
 廊下を歩いて行く後ろ姿も、またカッコイイ。
「……ゆ、夢?」
 でも右手に持ったミルクコーヒー缶は、幻じゃない。
 あの結城くんが、オレに微笑んで、話しかけてくれたのだ。
「……やばすぎるッ!!」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

やけ酒して友人のイケメンに食われたら、付き合うことになった

ふき
BL
やけ酒の勢いで友人に抱かれた榛名は、友人の隠された想いに気付いてしまう。 「お前、いつから俺のこと好きなの?」 一夜をなかったことにしようとする瑞生と、気付いたからには逃げない榛名。 二人の関係が、少しずつ変わっていく。 瑞生(ミズキ)×榛名(ハルナ)

泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。

雪 いつき
BL
 凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。  二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。  それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。 「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」  人前でそんな発言をして爽やかに笑う。  発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。

処理中です...