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1章
家族の団欒
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たっぷり遊んで午睡をし、目を覚ましたときにはちょうどティータイムの時間であった。
「お嬢様、奥様がお茶をご一緒しましょうと言われておりますよ」
「おかあさまが?いく!」
貴族だからであろうか、母のミュロがジェシカをよく抱いていたのは0歳までで、1歳も半ばになると小さなレディとして扱うようである。一日のうち家族と顔を合わせる時間は今回のようなお茶の時間や食事の時間で、頻繁に顔を合わせることがなくなるのだ。
小さなジェシカにとっては耐え難い寂しさで、一時期は夜に母を呼んで泣いていた。そうするとミラが母代わりとなってあやしてくれたり、ときには兄が(子供の黒豹)一緒に寝てくれたりとなんとか寂しさをしのいできた。
だいぶ慣れてはきたがそれでも会えるとなったらとても嬉しく、ジェシカは逸る気持ちを抑えて母が待っている庭のあずまやへ向かった。
「ジェシカ、いらっしゃい」
ミュロは両手を伸ばしてジェシカの頬を挟むと、ちゅっとおでこにキスをした。ジェシカも母の頬らしきあたりにキスを返すのだが、なにせ毛で覆われているのでよくわからない。ちなみにジェシカの頬をはさむ手は家猫のようなぷにぷに感ある肉球だし、キスをされるとヒゲが当たる。
「こんにちは、おかあさま」
「うふふ、上手に言えたわね」
ジェシカがイスにつくと、小さな黒豹、兄のジェロールもやってきた。
「おにいさまもいっしょ?」
「そうだよ、ジェシカ」
ジェロールは少し大きくなり、教育の成果もあってかきりっとした顔をしていたが、嬉しそうに尻尾をフリフリとしている。
「可愛い……」
「なにか言った?」
「ううん」
3人でお茶とお菓子を楽しみながら、勉強の進み具合や楽しかった遊びなどを子供たち二人は母へ報告した。ちなみに父は仕事のため領地で生活をしており、たまに休暇がてらこちらにやってきて子供たちと遊びを楽しんだり母と語らったりしている。
母は頻繁に父に会えず寂しくはないのだろうかと思うが、生粋のお嬢様であるミュロはもともと人間関係が希薄で夫婦がいつも一緒にいるという考えがそもそもないようだった。そう考えると、頻繁ではないがこうして子供たちの頬にキスをしたりお茶をしたりするのは母にとってかなり愛情深い行為なのだろう。
どちらかというと父のライガのほうが情の深いタイプで、会えば抱きしめともに外を走り(四足で走らないかわくわくしたが普通に二足だった)川へ入り、昔語りのようなこともしてくれる。高位の貴族であるのに普通の子供のような遊び方は本当に不思議だ。
ひとしきり話し終えたあと、母はあらそういえば、と切り出した。
「明日ぐらいにお父様がいらっしゃるみたいですよ」
「「お父様が!」」
ジェシカとジェロームは揃って声をあげた。二人とも楽しい遊びを教えてくれる父が大好きなのだ。
「お父様をお迎えするために、お花でも摘みに行きましょうか」
「「はーい」」
ジェシカは今からどんな遊びをしようかと心を踊らせる。しかし、楽しい遊びのことだけを考えていられる時間は父の到着によって終わりを告げることになる。
「お嬢様、奥様がお茶をご一緒しましょうと言われておりますよ」
「おかあさまが?いく!」
貴族だからであろうか、母のミュロがジェシカをよく抱いていたのは0歳までで、1歳も半ばになると小さなレディとして扱うようである。一日のうち家族と顔を合わせる時間は今回のようなお茶の時間や食事の時間で、頻繁に顔を合わせることがなくなるのだ。
小さなジェシカにとっては耐え難い寂しさで、一時期は夜に母を呼んで泣いていた。そうするとミラが母代わりとなってあやしてくれたり、ときには兄が(子供の黒豹)一緒に寝てくれたりとなんとか寂しさをしのいできた。
だいぶ慣れてはきたがそれでも会えるとなったらとても嬉しく、ジェシカは逸る気持ちを抑えて母が待っている庭のあずまやへ向かった。
「ジェシカ、いらっしゃい」
ミュロは両手を伸ばしてジェシカの頬を挟むと、ちゅっとおでこにキスをした。ジェシカも母の頬らしきあたりにキスを返すのだが、なにせ毛で覆われているのでよくわからない。ちなみにジェシカの頬をはさむ手は家猫のようなぷにぷに感ある肉球だし、キスをされるとヒゲが当たる。
「こんにちは、おかあさま」
「うふふ、上手に言えたわね」
ジェシカがイスにつくと、小さな黒豹、兄のジェロールもやってきた。
「おにいさまもいっしょ?」
「そうだよ、ジェシカ」
ジェロールは少し大きくなり、教育の成果もあってかきりっとした顔をしていたが、嬉しそうに尻尾をフリフリとしている。
「可愛い……」
「なにか言った?」
「ううん」
3人でお茶とお菓子を楽しみながら、勉強の進み具合や楽しかった遊びなどを子供たち二人は母へ報告した。ちなみに父は仕事のため領地で生活をしており、たまに休暇がてらこちらにやってきて子供たちと遊びを楽しんだり母と語らったりしている。
母は頻繁に父に会えず寂しくはないのだろうかと思うが、生粋のお嬢様であるミュロはもともと人間関係が希薄で夫婦がいつも一緒にいるという考えがそもそもないようだった。そう考えると、頻繁ではないがこうして子供たちの頬にキスをしたりお茶をしたりするのは母にとってかなり愛情深い行為なのだろう。
どちらかというと父のライガのほうが情の深いタイプで、会えば抱きしめともに外を走り(四足で走らないかわくわくしたが普通に二足だった)川へ入り、昔語りのようなこともしてくれる。高位の貴族であるのに普通の子供のような遊び方は本当に不思議だ。
ひとしきり話し終えたあと、母はあらそういえば、と切り出した。
「明日ぐらいにお父様がいらっしゃるみたいですよ」
「「お父様が!」」
ジェシカとジェロームは揃って声をあげた。二人とも楽しい遊びを教えてくれる父が大好きなのだ。
「お父様をお迎えするために、お花でも摘みに行きましょうか」
「「はーい」」
ジェシカは今からどんな遊びをしようかと心を踊らせる。しかし、楽しい遊びのことだけを考えていられる時間は父の到着によって終わりを告げることになる。
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