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1章
自由な公爵令嬢
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考えられることは3つある。
一つは、猫のような種族でも当たり前のように人間が生まれてくるという可能性。未だ猫科の人々しか見たことがないが、外には当たり前のように猫種族から生まれた人間がいるのかもしれない。それどころか別の種族もいるのではないだろうか。
もう一つは、自分は人間だと思い込んでいるが実は猫科種族なのではということ。前世の記憶があるために自分が人間であると錯覚している?周りからは人間に見えていないのかもしれない。
そして最後は、本当はみんな人間で、ジェシカだけが猫科種族に見えているのではないかということ。
呪いなのか生まれつきの仕様なのか分からないが、ジェシカとしてはこの説が一番有力だ。
なぜこの説が最有力かと言えば、手の使い方だがおかしいのだ。
今のミラもそうだが、当たり前のように手でクシを持っている。
握っているならまだわかるが、手に吸い付くようにくっついているのだ。
物理的におかしい。こちらの物理法則などよく知らないが。
これらの説を考えてはいるが、まだ誰にも「全員猫科の生き物に見える」などとは口にしていない。
まだ幼いために本気で捉えてもらえないかもしれないし、宗教観や世間の常識によっては悪魔憑きだとかなんとか言われて糾弾されることもあるかもしれない。
とにもかくにも、ジェシカは今のところ周りが猫科種属ばかりでも問題はない。皆愛情いっぱいに育ててくれているし、生活は全く不自由していないのだから。
「お嬢様、本日は何をして遊びましょうか」
「おさんぽする」
「よろしいですね、天気もいいし。ではお着替えを致しましょう」
水色の動きやすいドレスに着替えると、ミラと手をつないで庭園にでる。
季節は春めいていて、園芸用品種の花から野草のような花の群生まで、この庭は多様な植物を育てている。
野草の花畑周辺は小川まで流れ、川には小魚もいる。
川の先には池があり、ボートで遊ぶことも可能だ。子供が走り回ったり摘んだりしてもいいようにあえて作っているのだそう。
2歳の足でとにかく走り回り、小川の魚をながめて手を突っ込み、しまいには靴を脱いで足までつかってびちゃびちゃと遊ぶ。
前世大人の記憶があるわけだが、体も心も結局は2歳で、好奇心の前には理性など全くはたらかない。
公爵家のお嬢様としてはきっとやってはならないことだらけのはずだが、教育方針なのか咎められることはない。
侍女たちや護衛たちは微笑ましそうに見ているだけだ。ちなみにみんな猫である。
「さあさ、お嬢様。そろそろお昼ご飯の時間ですよ」
川遊びをしていたジェシカをミラが抱き上げるともう一人の侍女がタオルで手足を拭う。近くの木陰には絨毯と小さな椅子に机、ランチがすでに用意されていた。
「おなかすいた」
「そうでしょうとも。たくさん遊びましたからね」
ミラはそのままジェシカを椅子に座らせて、お茶を入れる。
ミラのお茶を待ちながら、ジェシカは改めて自分の家が所有する庭園をながめる。
「おにわ、ひろいね」
「パントラ公爵家が保有する邸宅の中では最も広い庭園です。こことは別に街中にもお屋敷があるのですよ」
ジェシカはふーむ、と頷いた。
便利な街中ではなく自然豊かなここで生活をしているのは何か理由があるのだろうか。
考えても分かることではないが、とにかく2歳がべらべらとそんなことを聞き出したらみんな恐ろしいと思うだろう。
生活していく上で知ることもあるか、と深く考えず、ジェシカは食事に取り掛かった。
一つは、猫のような種族でも当たり前のように人間が生まれてくるという可能性。未だ猫科の人々しか見たことがないが、外には当たり前のように猫種族から生まれた人間がいるのかもしれない。それどころか別の種族もいるのではないだろうか。
もう一つは、自分は人間だと思い込んでいるが実は猫科種族なのではということ。前世の記憶があるために自分が人間であると錯覚している?周りからは人間に見えていないのかもしれない。
そして最後は、本当はみんな人間で、ジェシカだけが猫科種族に見えているのではないかということ。
呪いなのか生まれつきの仕様なのか分からないが、ジェシカとしてはこの説が一番有力だ。
なぜこの説が最有力かと言えば、手の使い方だがおかしいのだ。
今のミラもそうだが、当たり前のように手でクシを持っている。
握っているならまだわかるが、手に吸い付くようにくっついているのだ。
物理的におかしい。こちらの物理法則などよく知らないが。
これらの説を考えてはいるが、まだ誰にも「全員猫科の生き物に見える」などとは口にしていない。
まだ幼いために本気で捉えてもらえないかもしれないし、宗教観や世間の常識によっては悪魔憑きだとかなんとか言われて糾弾されることもあるかもしれない。
とにもかくにも、ジェシカは今のところ周りが猫科種属ばかりでも問題はない。皆愛情いっぱいに育ててくれているし、生活は全く不自由していないのだから。
「お嬢様、本日は何をして遊びましょうか」
「おさんぽする」
「よろしいですね、天気もいいし。ではお着替えを致しましょう」
水色の動きやすいドレスに着替えると、ミラと手をつないで庭園にでる。
季節は春めいていて、園芸用品種の花から野草のような花の群生まで、この庭は多様な植物を育てている。
野草の花畑周辺は小川まで流れ、川には小魚もいる。
川の先には池があり、ボートで遊ぶことも可能だ。子供が走り回ったり摘んだりしてもいいようにあえて作っているのだそう。
2歳の足でとにかく走り回り、小川の魚をながめて手を突っ込み、しまいには靴を脱いで足までつかってびちゃびちゃと遊ぶ。
前世大人の記憶があるわけだが、体も心も結局は2歳で、好奇心の前には理性など全くはたらかない。
公爵家のお嬢様としてはきっとやってはならないことだらけのはずだが、教育方針なのか咎められることはない。
侍女たちや護衛たちは微笑ましそうに見ているだけだ。ちなみにみんな猫である。
「さあさ、お嬢様。そろそろお昼ご飯の時間ですよ」
川遊びをしていたジェシカをミラが抱き上げるともう一人の侍女がタオルで手足を拭う。近くの木陰には絨毯と小さな椅子に机、ランチがすでに用意されていた。
「おなかすいた」
「そうでしょうとも。たくさん遊びましたからね」
ミラはそのままジェシカを椅子に座らせて、お茶を入れる。
ミラのお茶を待ちながら、ジェシカは改めて自分の家が所有する庭園をながめる。
「おにわ、ひろいね」
「パントラ公爵家が保有する邸宅の中では最も広い庭園です。こことは別に街中にもお屋敷があるのですよ」
ジェシカはふーむ、と頷いた。
便利な街中ではなく自然豊かなここで生活をしているのは何か理由があるのだろうか。
考えても分かることではないが、とにかく2歳がべらべらとそんなことを聞き出したらみんな恐ろしいと思うだろう。
生活していく上で知ることもあるか、と深く考えず、ジェシカは食事に取り掛かった。
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