12 / 20
1章-1
ビビオは新種族の説明を聞く1
しおりを挟む
ガランはまた始まったか、くらいの感情でそういった目に慣れているため受け流すことができるが、ビビオは大丈夫かと隣を見ると、全く何を考えているかわからないぼやっとした表情だった。
実際のところビビオはもともと鈍いというのもあるが、学校で散々出自をバカにされ成績を妬まれたせいかさらに鈍さに磨きがかかり、侮蔑の目など心にかすりもしていなかった。
ただしすれ違った鬼族には、出会ったときから相いれない何かを感じ取っていた。
「よお、悪いなガラン忙しいのに」
にやにやと嫌な笑いを浮かべながら一人のエルフが声をかけてきた。
「問題ない。新しく誕生した部族の調査も俺たちの管轄だからな」
できるだけ手短に進めようとするガランだが、いやがらせがガランに通じないと思ったのかすぐにビビオへ視線を向けた。
「なんだ、役立たずの部署の新入りか?確か首席で卒業したのに分館へ飛ばされた無能だとか。やっと中央に移れてよかったな?」
誰も彼も、みんな自分のことをよく知ってるものだな、とビビオは感心した。
「みなさん私のことをよくご存じで、驚いています。わたしは誰のことも存じ上げず申し訳ないです」
素直にそう言ったビビオにその場の空気が凍り付く。ガランは笑いたいのをこらえたために口元がおかしなかたちになっていたが。
「おい、こちらも忙しい。さっさと説明を済ませるんだ」
例の鬼族が鋭く声をかけると嫌味を言っていたエルフはびくっと体をゆらし、二人を会議机に座らせた。
エルフが杖を振ると、机の上に地図が浮かび上がった。
「新種が見つかったのはここから南東に位置するリブスタレオス連合国、100年ほど前に複数の国が合併してできた国だ。貴族や王族の血筋は残っているが一応議会があり金持ちの市民も議員として参加している。我々国家歴史調査部はリブスタレオスの歴史に疑義があり調査をしていた」
「どんな疑義があったんだ」
ガランが聞くと、エルフは不愉快そうに顔をしかめた。
「お前たちには関係のないことだ、今回のこととは関係がない」
「そうでしょうか」
急に反論したビビオに誰もが驚いた顔をした。
「新種についてはいまだ未知数なところが多く発生理由は明確ではありませんが、何か強い現象が起きて発生するという報告書が多数あります。調査するにあたってあらゆる可能性を知っておく必要があります」
「小娘の言う通りだ」
同意したのは鬼族の男だった。同意されたにもかかわらず小娘呼ばわりされたビビオは「は?」という恐ろしく冷めた声を出して男にがん飛ばした。
「しかしティタニウス、疑義については我々の調査で問題ないと結果がでたはずだ」
「可能性の話だ」
別の司書が声を上げたが、ティタニウスと呼ばれた鬼族は一刀両断した。
「何が理由となるのかわからないと言っている。ここは図書館だ、すべての情報は余すことなくつまびらかにしろ」
腕を組み冷めた目で言うティタニウスは、それ以上説明する気はないとでも言うようにだまりこんだ。説明役のエルフは不承不承という様子を隠すことなく彼らがリブスタレオスを調査をしていた理由についてこちらに説明を始めた。
実際のところビビオはもともと鈍いというのもあるが、学校で散々出自をバカにされ成績を妬まれたせいかさらに鈍さに磨きがかかり、侮蔑の目など心にかすりもしていなかった。
ただしすれ違った鬼族には、出会ったときから相いれない何かを感じ取っていた。
「よお、悪いなガラン忙しいのに」
にやにやと嫌な笑いを浮かべながら一人のエルフが声をかけてきた。
「問題ない。新しく誕生した部族の調査も俺たちの管轄だからな」
できるだけ手短に進めようとするガランだが、いやがらせがガランに通じないと思ったのかすぐにビビオへ視線を向けた。
「なんだ、役立たずの部署の新入りか?確か首席で卒業したのに分館へ飛ばされた無能だとか。やっと中央に移れてよかったな?」
誰も彼も、みんな自分のことをよく知ってるものだな、とビビオは感心した。
「みなさん私のことをよくご存じで、驚いています。わたしは誰のことも存じ上げず申し訳ないです」
素直にそう言ったビビオにその場の空気が凍り付く。ガランは笑いたいのをこらえたために口元がおかしなかたちになっていたが。
「おい、こちらも忙しい。さっさと説明を済ませるんだ」
例の鬼族が鋭く声をかけると嫌味を言っていたエルフはびくっと体をゆらし、二人を会議机に座らせた。
エルフが杖を振ると、机の上に地図が浮かび上がった。
「新種が見つかったのはここから南東に位置するリブスタレオス連合国、100年ほど前に複数の国が合併してできた国だ。貴族や王族の血筋は残っているが一応議会があり金持ちの市民も議員として参加している。我々国家歴史調査部はリブスタレオスの歴史に疑義があり調査をしていた」
「どんな疑義があったんだ」
ガランが聞くと、エルフは不愉快そうに顔をしかめた。
「お前たちには関係のないことだ、今回のこととは関係がない」
「そうでしょうか」
急に反論したビビオに誰もが驚いた顔をした。
「新種についてはいまだ未知数なところが多く発生理由は明確ではありませんが、何か強い現象が起きて発生するという報告書が多数あります。調査するにあたってあらゆる可能性を知っておく必要があります」
「小娘の言う通りだ」
同意したのは鬼族の男だった。同意されたにもかかわらず小娘呼ばわりされたビビオは「は?」という恐ろしく冷めた声を出して男にがん飛ばした。
「しかしティタニウス、疑義については我々の調査で問題ないと結果がでたはずだ」
「可能性の話だ」
別の司書が声を上げたが、ティタニウスと呼ばれた鬼族は一刀両断した。
「何が理由となるのかわからないと言っている。ここは図書館だ、すべての情報は余すことなくつまびらかにしろ」
腕を組み冷めた目で言うティタニウスは、それ以上説明する気はないとでも言うようにだまりこんだ。説明役のエルフは不承不承という様子を隠すことなく彼らがリブスタレオスを調査をしていた理由についてこちらに説明を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~
こじまき
ファンタジー
【読んでいただいて♡いただいて、ありがとうございます。王城編準備中のため、12月12日からしばらく更新お休みします。考えてた構成が「やっぱなんか違う」ってなり、慌てております…汗】
「こんな転生先だなんて聞いてないっ!」六年間付き合った彼氏に婚約を解消され、傷心のまま交通事故で亡くなった保育士・サチ。異世界転生するにあたり創造神に「能力はチートで、広い家で優しい旦那様と子だくさんの家庭を築きたい」とリクエストする。「任せといて!」と言われたから安心して異世界で目を覚ましたものの、そこはド田舎の山小屋。周囲は過疎高齢化していて結婚適齢期の男性なんていもしないし、チートな魔法も使えそうにない。創造神を恨みつつマニュアル通り街に出ると、そこで「魔力持ち」として忌み嫌われる子どもたちとの出会いが。「子どもには安心して楽しく過ごせる場所が必要」が信条のサチは、彼らを小屋に連れ帰ることを決め、異世界で保育士兼りんご農家生活を始める。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる