独立国家【図書館】

九鈴小都子

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1章-1

ビビオは新種族の説明を聞く2

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「我々がリブスタレオスを調査した理由は、旧王族による国家転覆と王政復古の疑いがあったからだ」
「王国を復活させようとしたのか」
「そうだ。しかし我らにとって奴らの首がすげ代わり再び王制になろうとなんら問題はない。ただリブスタレオスは直近の歴史書の提出において、議会は旧貴族、旧王族からの推薦があるもの、また市民の代表者は市民からの推薦がある者が選ばれ、“滞りなく遂行されている”と記されていた。もし王国復活の疑いがあったならば滞りなく遂行されたとは言い切れない」

こじつけのようでもあるが、要は国が不安定であるならばはぐらかすことなくそれを伝えておけということなのだ。もちろん国が不安定であるなどと諸外国にばれるとつけ入る空きができるのだが、正しく情報を提出された場合には一定期間シュバニアルが全面的に支援をすることも約束している。
つまり、他国に乗っ取られないようにこの国の技術と人員を投入して防衛しますということだった。
そして防衛という名の介入は、他国が乗っ取りなど考える気も起きないほど頑強だ。

「しかし問題なかったということは、その疑いは払拭されたということか」
「そうだ。ことの顛末としては、市民階級の子供や孤児が大量に行方不明になる事件があり、市民から選ばれた議員の一人が旧王族による人体実験、あるいは人身売買ではないかと糾弾したのだ。どうやら旧王族の中に他国と繋がっている疑いがある一派がいてそいつらを追い詰めようとしたらしいな。結局は愉快犯による連続誘拐殺人事件で、そいつは捕まって旧王族たちの疑いは晴れ解決したということだった」
「本当に旧王族たちは他国とつながっていなかったのか?殺人犯を仕立て上げて市民側議員の失墜をねらったのでは?」

ガランが納得いかないというように腕を組むと、エルフは不愉快そうに舌打ちした。

「そのようなことなど我らとて考慮した。しかし我らが調査した範囲では、格差がなくならない市民たちが旧王族や旧貴族たちに向けた敵愾心が高まった結果糾弾したと考えられる。市民代表の議員は確たる証拠があったわけではなく、勢い余って言ったと公式な謝罪もしている。また殺人犯は動物を虐殺して喜んでいる異常者で、子供たちも殺して適当に埋めたと罪を認めた。実際埋めたと言った場所に子供たちの死体が見つかったのだ」

手に持っている杖をぱしぱしと片手に叩きつけ、エルフは自分たちの調査が間違いないことを主張した。

「糾弾した市民代表の議員は信用を落とすも、追放されることなく今も議員を続けている。もし旧王族が権力を取り戻すつもりならば市民の意見を言う代表者なぞ邪魔なだけだろう。結果、我らは提出情報について疑義なしと判断した」
「なるほどな」

ガランは頷いた。ビビオは聞いた限りでは調査に問題があるとは思えなかったが、どこかで「事件の流れが出来すぎているのでは?」という疑問も消せなかった。

「そして新種をみつけたのは、我らが情報の疑義を調べ尽くし、本国へ帰還する途中だった」
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