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野バラが王宮にきた理由 9
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「イルミネは研究がしたいって言ってたから見送りはいらないって言っておいたわ」と声をかけ、それを誰も疑うことなく信じて公爵家へ向かう馬車は出発した。
南の山から出たことがない野バラは、広がる平原や山々、宿泊先の町の様子や見たこともない人の数に圧倒されていた。馬車の旅は疲れはするが、無料で移動も宿泊もさせてもらえるならこれはお得なのでは?と大変ポジティブにとらえ、サブリナの小うるさい叱責もなんのそのぐいぐいと外にでて楽しんでいた。
そんな旅程を一週間、野バラたちはようやく王都に到着した。王都ともなると馬車が大きく揺れることもなく、野バラは興味深々に窓の外を眺めた。どこよりも整地され美しい街並みと、地区によって貧富の差が如実にある様子。王の膝元であってもこうなってしまうのねと考えていると、馬車は明らかに貴族が住まう地区へ入っていった。たくさんの豪邸が並ぶなか、もっとも奥まった王城の近くに恐ろしく広大な敷地に入っていった。
(敷地に入ったのにまったく住居に到着する気配がないわ。力があるのねぇ)
美しく整えられた庭を見入ることしばしば、馬車はやっと停車した。
扉が開き、騎士の手をとって地面に降り立つ。目の前には、別邸とはくらべものにならないほどの大きな屋敷が圧するように存在した。野バラが息を飲んでいると、サブリナから「淑女がぼんやりしない!早く歩きなさい」と声をかけて先に進む。
正面玄関は開いており、中へ進むと数人の使用人が入口に並び野バラたちを迎え入れた。
「出迎えご苦労様です」
サブリナが声をかけ、野バラを紹介する。
「こちらがイルミネ様が保護されている野バラ様です、王城へ入るために教育期間中ですので皆様そのつもりで」
そのつもりで、とはいったいどのつもりなのか、野バラはうろんな目でサブリナを見やったがしれっとした表情だ。そんな中、使用人の中でもまとめ役と思われる初老の男性が一歩前へでた。
「野バラ様、こちら侍従長のジョシュアです。使用人たちの取りまとめをしております」
「ようこそおいでくださいました、こちらのお部屋を用意しておりますのでご案内いたします」
一見まったく表情が読めない、こちらをどう思っているのかもわからない目でほほ笑んで、ジョシュアは野バラを案内するために侍女たちに声をかけた。
「本日は晩餐を公爵家の方々がご一緒するとのことです、その際にまたお呼びいたしますのでしばらくお休みください」
無機質な表情で部屋へ案内した二人の侍女は、「御用の際はお呼びください」と野バラに伝えて出て行った。部屋は一般的な客室のようで、品のいい調度品や家具が置かれている。
野バラは疲れを吐き出すように溜息をついてソファに座ると、黙ってともに付いてきていたスアラを見て肩をすくめた。
「晩餐会ねぇ、ちゃんとわたくしが食べられる食事を用意していただけるのかしら?」
「それは……一度確認をしてきましょうか」
「いえ、いいの。わたくしに対する認識をはかりたいからそのままで」
疲れがたまっていたのか急速な眠気に襲われ、目元をもみながら野バラは「でも」と言葉をつづけた。
「念のため果物と野菜、ハーブ、お花を用意しておいてくれると嬉しいわ」
南の山から出たことがない野バラは、広がる平原や山々、宿泊先の町の様子や見たこともない人の数に圧倒されていた。馬車の旅は疲れはするが、無料で移動も宿泊もさせてもらえるならこれはお得なのでは?と大変ポジティブにとらえ、サブリナの小うるさい叱責もなんのそのぐいぐいと外にでて楽しんでいた。
そんな旅程を一週間、野バラたちはようやく王都に到着した。王都ともなると馬車が大きく揺れることもなく、野バラは興味深々に窓の外を眺めた。どこよりも整地され美しい街並みと、地区によって貧富の差が如実にある様子。王の膝元であってもこうなってしまうのねと考えていると、馬車は明らかに貴族が住まう地区へ入っていった。たくさんの豪邸が並ぶなか、もっとも奥まった王城の近くに恐ろしく広大な敷地に入っていった。
(敷地に入ったのにまったく住居に到着する気配がないわ。力があるのねぇ)
美しく整えられた庭を見入ることしばしば、馬車はやっと停車した。
扉が開き、騎士の手をとって地面に降り立つ。目の前には、別邸とはくらべものにならないほどの大きな屋敷が圧するように存在した。野バラが息を飲んでいると、サブリナから「淑女がぼんやりしない!早く歩きなさい」と声をかけて先に進む。
正面玄関は開いており、中へ進むと数人の使用人が入口に並び野バラたちを迎え入れた。
「出迎えご苦労様です」
サブリナが声をかけ、野バラを紹介する。
「こちらがイルミネ様が保護されている野バラ様です、王城へ入るために教育期間中ですので皆様そのつもりで」
そのつもりで、とはいったいどのつもりなのか、野バラはうろんな目でサブリナを見やったがしれっとした表情だ。そんな中、使用人の中でもまとめ役と思われる初老の男性が一歩前へでた。
「野バラ様、こちら侍従長のジョシュアです。使用人たちの取りまとめをしております」
「ようこそおいでくださいました、こちらのお部屋を用意しておりますのでご案内いたします」
一見まったく表情が読めない、こちらをどう思っているのかもわからない目でほほ笑んで、ジョシュアは野バラを案内するために侍女たちに声をかけた。
「本日は晩餐を公爵家の方々がご一緒するとのことです、その際にまたお呼びいたしますのでしばらくお休みください」
無機質な表情で部屋へ案内した二人の侍女は、「御用の際はお呼びください」と野バラに伝えて出て行った。部屋は一般的な客室のようで、品のいい調度品や家具が置かれている。
野バラは疲れを吐き出すように溜息をついてソファに座ると、黙ってともに付いてきていたスアラを見て肩をすくめた。
「晩餐会ねぇ、ちゃんとわたくしが食べられる食事を用意していただけるのかしら?」
「それは……一度確認をしてきましょうか」
「いえ、いいの。わたくしに対する認識をはかりたいからそのままで」
疲れがたまっていたのか急速な眠気に襲われ、目元をもみながら野バラは「でも」と言葉をつづけた。
「念のため果物と野菜、ハーブ、お花を用意しておいてくれると嬉しいわ」
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