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図書館でみつける
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笹花が以前まで通っていた図書館は街の中心部から少し郊外の静かな場所にある。周囲は整地され芝生や彫刻があり、散歩に歩いている人が多々見られた。
図書館は郊外に造られているだけあって規模は大きい。公共施設だけあって建物自体は四角四面だが、天窓から光が差し込むようになっていたり、児童書コーナーが靴を脱いでゆっくりとくつろげるようになっていたりと温かみがあった。
中に入ると、朝一なためか人はあまりいなかった。笹花はまずおすすめコーナーへ向かい、新刊や季節ごとのフェアをチェックする。
「あ、あの作家さんの新作が出てる。あれ、この本まだ続巻が出てたんだ」
次々と目移りしながら、笹花はあれもこれもと手に取った。貸出期間2週間で読み切れるかはわからない、でも借りたい。図書館で久しぶりの感覚を楽しみながら、笹花は「梅雨」をテーマにしたおすすめ図書へも意識を向けた。
雨をテーマにした絵本や小説はもちろん、真新しいのは表紙のみが飾られ、近くに大きなタッチパネル式の画面があり、電子書籍を紹介していることだろうか。しかも音までついているという。
備え付けられたヘッドホンを耳にあて、試しに『雨音・雨の言葉事典』をタッチすると、検索ワードや五十音順の索引項目がでてきた。検索ワードに「山 雨」と打ち込むと、「山雨」「私雨」山で降る雨の言葉がでてくる。
言葉をさらにタッチすると、言葉の意味や由来、写真、さらに山にふる雨の音が聴こえてきたのだ。
「素敵……」
思わず笹花は呟いた。
貸出方法は、図書館のアプリをインストールし、自分のIDを登録して本に貼り付けてあるQRコードを読み込めば貸出完了のようだ。2週間たったら読むことができなくなるという仕組みになっている。
笹花はさらに『カエルとカエルの鳴き声事典』や『いろいろ猫の鳴き方』『調理音は癒しの音』など、音付き電子書籍を次々選び、あっという間に貸出上限に達してしまった。新しいもの好きなことをさいかくにんしつつ、紙の書籍も借りてホクホクと図書館をあとにした。
図書館近くのカフェでお茶と軽食をとりながら、さっそくアプリを開く。ワイヤレスイヤホンを耳に装着し、言葉を検索したりただフリックしてページをめくったりしながら、夢中になって目を走らせた。
ふと我に返って、そういえば趣味を探しに出たはずであった、と今になって笹花は思い出した。しかし、とても心惹かれる出会いはあった。これを参考にできないかと考え……。
「私も音付きの自分図鑑を作ってみたらいいかもしれない」
笹花はとても凄いことを思いついたような高揚感を覚えた。
「イラストを入れて、できれば写真と音を入れて、言葉も」
思いつきをスマホのメモ帳に記入していく。しかし、途中で手が止まる。
「でもいったい何を図鑑にすればいいんだろう」
やるのはいいが趣味がないではないか、とまた降り出しに戻る。
何かヒントはないかともう一度図書館のアプリを開いて借りた本を見たとき、笹花は山の雨音をもう一度聴きたいと思った。山の雨音は、雨粒が地面を打つ音ではなく、背の高い木々の葉に雨が当たる音と、葉からパラパラとこぼれる雨の雫の音だ。さらに川の音も入っていた。
自然豊かなところには発見も多くあるのだろう、とぼんやりとでも思い当たった。
そこで笹花はとても安易に考えた。そうだ、自分も山に行ってみようと。
図書館は郊外に造られているだけあって規模は大きい。公共施設だけあって建物自体は四角四面だが、天窓から光が差し込むようになっていたり、児童書コーナーが靴を脱いでゆっくりとくつろげるようになっていたりと温かみがあった。
中に入ると、朝一なためか人はあまりいなかった。笹花はまずおすすめコーナーへ向かい、新刊や季節ごとのフェアをチェックする。
「あ、あの作家さんの新作が出てる。あれ、この本まだ続巻が出てたんだ」
次々と目移りしながら、笹花はあれもこれもと手に取った。貸出期間2週間で読み切れるかはわからない、でも借りたい。図書館で久しぶりの感覚を楽しみながら、笹花は「梅雨」をテーマにしたおすすめ図書へも意識を向けた。
雨をテーマにした絵本や小説はもちろん、真新しいのは表紙のみが飾られ、近くに大きなタッチパネル式の画面があり、電子書籍を紹介していることだろうか。しかも音までついているという。
備え付けられたヘッドホンを耳にあて、試しに『雨音・雨の言葉事典』をタッチすると、検索ワードや五十音順の索引項目がでてきた。検索ワードに「山 雨」と打ち込むと、「山雨」「私雨」山で降る雨の言葉がでてくる。
言葉をさらにタッチすると、言葉の意味や由来、写真、さらに山にふる雨の音が聴こえてきたのだ。
「素敵……」
思わず笹花は呟いた。
貸出方法は、図書館のアプリをインストールし、自分のIDを登録して本に貼り付けてあるQRコードを読み込めば貸出完了のようだ。2週間たったら読むことができなくなるという仕組みになっている。
笹花はさらに『カエルとカエルの鳴き声事典』や『いろいろ猫の鳴き方』『調理音は癒しの音』など、音付き電子書籍を次々選び、あっという間に貸出上限に達してしまった。新しいもの好きなことをさいかくにんしつつ、紙の書籍も借りてホクホクと図書館をあとにした。
図書館近くのカフェでお茶と軽食をとりながら、さっそくアプリを開く。ワイヤレスイヤホンを耳に装着し、言葉を検索したりただフリックしてページをめくったりしながら、夢中になって目を走らせた。
ふと我に返って、そういえば趣味を探しに出たはずであった、と今になって笹花は思い出した。しかし、とても心惹かれる出会いはあった。これを参考にできないかと考え……。
「私も音付きの自分図鑑を作ってみたらいいかもしれない」
笹花はとても凄いことを思いついたような高揚感を覚えた。
「イラストを入れて、できれば写真と音を入れて、言葉も」
思いつきをスマホのメモ帳に記入していく。しかし、途中で手が止まる。
「でもいったい何を図鑑にすればいいんだろう」
やるのはいいが趣味がないではないか、とまた降り出しに戻る。
何かヒントはないかともう一度図書館のアプリを開いて借りた本を見たとき、笹花は山の雨音をもう一度聴きたいと思った。山の雨音は、雨粒が地面を打つ音ではなく、背の高い木々の葉に雨が当たる音と、葉からパラパラとこぼれる雨の雫の音だ。さらに川の音も入っていた。
自然豊かなところには発見も多くあるのだろう、とぼんやりとでも思い当たった。
そこで笹花はとても安易に考えた。そうだ、自分も山に行ってみようと。
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