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贅沢なコーヒー
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次の日、水筒に汲んだ湧き水を持って笹花はhotori へ向かった。天気はやや曇り、しかし雨が降るほどではなさそうである。
hotoriの最寄駅につくと、川沿いを歩き出す。ぼんやりと川をながめながら歩いていると、ふと川の近くに小さな花や野草があるのをみつけた。
すぐにしゃがんで顔を近づけると、名もわからないが可愛らしい小花や不思議なかたちの草がたくさん生えている。
「こんなにたくさんあるんだ」
さっそくスマホを取り出すと、様々な角度から写真を撮る。とっているときにガサガサと草の上を走る音がして、心臓が飛び出るかと思うほど驚き後ろへ飛びのくこともあったが、いったいどんな生物かはわからない。
ある程度撮って満足すると、道に戻って進み出す。
以前は道端の草花にさほど意識を向けることなどなかったのに、今は眼に映るものが知らないものばかりだった。世の中には不思議なものがたくさんあるんだと、笹花は視野が広がった気持ちになった。
hotoriにつくと、笹花は先週とはまったく反対の、やっと素敵なカフェタイムにできる!という前向きな気持ちで戸を引いた。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ。あら、笹花ちゃん」
店の奥から出てきたおばさんは、笹花を見るととても嬉しそうに笑い、中へ案内した。
いつもの窓際に座った笹花は、おばさんに水筒を渡す。
「おばさん、私昨日山に行ってきてね。湧き水を汲んできたんだけど、コーヒーに使えるかな?」
「山って近くにあるあの山?あそこの水は超軟水でね、これでコーヒーを淹れるととってもまろやかで甘くなるの」
おばさんは嬉しそうに水筒を受け取り、「この水に合う豆で淹れてみるわ」とさっそくもっていった。
しばらくすると、コーヒーと白玉をお盆に乗せて、おばさんが戻ってきた。
「笹花ちゃん!すごくいい味になったわ」
おばさんはわくわくとした顔で笹花の前におぼんを置いた。
コーヒーをのぞいてみると、見た目はいつものコーヒーと変わらない。笹花はそっと一口飲んで、はっと驚いたように目を見開いた。
「飲みやすい!」
「そうでしょう」
彼女は頷くと、もう一度口に流す。渋みや苦味が抑えられて、香りよくまろやかな味わいになっている。
「お水が違うだけで、こんなに変わるんですね」
「コーヒーはお水の硬度で味わいがだいぶ変わるのよ」
水をくんだときのことを思い出しながら、笹花はコーヒーを味わった。ブナの木々がおそらく何年もかけてろ過した水は、澄んでいて甘く、生き物の体を潤してくれるんだろうと思った。
hotoriの最寄駅につくと、川沿いを歩き出す。ぼんやりと川をながめながら歩いていると、ふと川の近くに小さな花や野草があるのをみつけた。
すぐにしゃがんで顔を近づけると、名もわからないが可愛らしい小花や不思議なかたちの草がたくさん生えている。
「こんなにたくさんあるんだ」
さっそくスマホを取り出すと、様々な角度から写真を撮る。とっているときにガサガサと草の上を走る音がして、心臓が飛び出るかと思うほど驚き後ろへ飛びのくこともあったが、いったいどんな生物かはわからない。
ある程度撮って満足すると、道に戻って進み出す。
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hotoriにつくと、笹花は先週とはまったく反対の、やっと素敵なカフェタイムにできる!という前向きな気持ちで戸を引いた。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ。あら、笹花ちゃん」
店の奥から出てきたおばさんは、笹花を見るととても嬉しそうに笑い、中へ案内した。
いつもの窓際に座った笹花は、おばさんに水筒を渡す。
「おばさん、私昨日山に行ってきてね。湧き水を汲んできたんだけど、コーヒーに使えるかな?」
「山って近くにあるあの山?あそこの水は超軟水でね、これでコーヒーを淹れるととってもまろやかで甘くなるの」
おばさんは嬉しそうに水筒を受け取り、「この水に合う豆で淹れてみるわ」とさっそくもっていった。
しばらくすると、コーヒーと白玉をお盆に乗せて、おばさんが戻ってきた。
「笹花ちゃん!すごくいい味になったわ」
おばさんはわくわくとした顔で笹花の前におぼんを置いた。
コーヒーをのぞいてみると、見た目はいつものコーヒーと変わらない。笹花はそっと一口飲んで、はっと驚いたように目を見開いた。
「飲みやすい!」
「そうでしょう」
彼女は頷くと、もう一度口に流す。渋みや苦味が抑えられて、香りよくまろやかな味わいになっている。
「お水が違うだけで、こんなに変わるんですね」
「コーヒーはお水の硬度で味わいがだいぶ変わるのよ」
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