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沢野佳世との親睦 3
しおりを挟む「友達……? えっと、どうしてかしら」
沢野は怪訝そうな顔で秋野を見つめた。
複雑な感情なのだろう。元々友達だと思っていたのならショックだし、そうじゃなくても突然何故と疑問に思う。
秋野は、視線を逸らさずに真っ直ぐ見つめながら口を開いた。
「委員長ってさ、周りのみんなから慕われてて委員会も勉強も頑張ってて、すごいなって思ってたの。でも、あたし全然話したことなくて……話してみて、やっぱりいい人だって分かった。だから、友達になって、またお昼一緒に食べたり、お喋りしたいの」
理由としては、少し浅いかもしれない。
だが、友達なんてそんなものなのだ。また話したい、また遊びたい。そう思ったときにはもう友達。
小学生の頃から、友達の考え方はあまり変わっていない。
だからこそ、今俺が友達を作るのは難しいと思っている。話したい遊びたいと思える相手は、今じゃそう簡単には現れない。
「……そう。私も、同じ気持ちよ。友達になりましょう、秋野さん」
「ほ、ほんと!?」
「ええ」
笑顔で喜ぶ二人を、頬杖を突きながら横目に見る。
最初は秋、話してみたいというだけで友達になろうとしていた。
俺はそれを聞いて本当に大丈夫かと不安になっていたが、どうやら心配はないらしい。
二人の相性は想像以上に良く、楽しそうにしている。
ふと、二人の視線が俺に向けられた。
「あっ、じゃあ杉坂くんとも友達になったら?」
「そうね、どう? 杉坂くん」
「……俺は秋野ほど積極的に話せないと思うぞ」
「別にいいじゃんそれでも! ね、委員長」
「ええ。それとも、杉坂くんは私とはあまり喋りたくない……のかしら?」
その言い方はずるくないだろうか。
「いやいや、そういうわけじゃねぇよ! あーうん、よし。なろう、友達」
「ふふっ、また三人で食べたいわ。あっ、一之瀬くんはどうなのかしら」
確かに、友達なったことで毎回じゃないにしても三人で食べることが増えてくるはずだ。
そうなった場合、一之瀬が一人になってしまう。俺もなんだかんだ一之瀬とだらだら飯を食うのは嫌いではないため、対策を考えなくてはならない。
「あいつは……」
「話は聞かせて貰ったぁ!!!」
突然背後から声が聞こえ、ガタガタっと立ち上がる音も聞こえてきた。
振り向くと、アホがいた。いや、一之瀬がいた。
「何でいるんだよ……」
「お互いに飯を食い終わってたんだ、そらちゃんのお弁当は見てないからセーフ。だろ?」
「無駄に律儀だな」
一応、俺の言いつけは守って弁当を見ないようにしていたらしい。
見たところで問題はないが、言わないでおこう。
問題は、一之瀬が今の会話を聞いていたところだ。自分だけハブられる状況になったのだ、一之瀬が面倒くさくならないはずがない。
「お前らぁ! 僕を差し置いて楽しく喋りやがって!!」
「その文句を言いに来たのか……で、お前も入りたいってことでいいか?」
事情を話さずに一人にしたのは悪かったとは思うが、今来ることはないだろう。
俺たちと沢野が仲良くなったとして、沢野のことを良く思っていない一之瀬がそこに加わるとは思えないが。
「ちがぁう! 委員長に文句があるんだ!!」
「え、わ、私?」
やはりか。
沢野はそれを予想していなかったようで、驚き、困惑している。
「お前、何か隠してるだろ! 二人とも、委員長と仲良くなるのはやめた方がいいって!」
「一之瀬!」
俺は思わず一之瀬の胸倉を掴み、ぐっと押し込んだ。
秋野と沢野は突然のことに動けなくなる。
今一之瀬が大きな声で言った言葉を、周りの生徒は聞いていただろう。
そうしたら、沢野の今まで築いてきた信頼が消えてなくなってしまう。
なので少し強めに一之瀬に当たった。俺と一之瀬が言い合いをしたことにより、ただの男子同士の喧嘩として終わる。
「場所を考えろ、周りの目があるだろうが」
「……悪かったよ」
「場所を変えるぞ」
一之瀬が出てきたことにより、沢野の話を詳しく聞く必要が出てきた。
俺たちは食堂を出て、人気のない中庭の隅に移動する。
先ほどのこともあり多少だが重い空気も流れる。
「で、一之瀬。さっきのはどういうことだ」
「だから、委員長が何かを隠してるってことだよ。思い出してみたら、あの視線は女子生徒が騒いでるときだけじゃなかった」
「……」
沢野は黙り、俯いてしまった。
何となくだが、そんな気もしていた。何かを隠している可能性もある、と。
だが、それを無理に聞く必要はないと思っていた。
「誰にだって、話したくないことはあるだろ」
「そうだよ。あたしだって、あるし」
「そりゃ、そうだけどさ……」
「沢野、話したくないなら、話さなくていい。でも、話せるなら聞かせてくれないか」
ずるい言葉だと思う。よっぽどのことじゃなければ、話してしまうような言葉。
それでも知りたかった。何か隠しごとをしているのなら聞きたいし、後ろめたいことがあるのなら話してほしい。
「……話すわ。でも、一之瀬くんは聞かないでほしい」
「え、また? なんでぇ?????」
うん、それはどうして?
「これは、二人の話だから」
……二人とは、俺と秋野のことか。
女子生徒睨んでいたことが、何故俺たちに関係するのか。想像もつかない。
意味もなく除外されたわけではないと分かった一之瀬は、渋々その場から離れた。
「……それで、なんで俺たちが関係してるんだ?」
俺が意を決して聞くと、沢野は深呼吸をし口を開く。
そして、出てきた言葉は……
「覚えてないかもしれないけれど、私たち、一緒の小学校なの」
考えうる限り最大の爆弾だった。
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