再会した幼馴染が記憶喪失になっていた。しかも原因が俺にあるようなので責任を取りたい

瀬口恭介

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沢野佳世との親睦 4

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「……っ!」

 同じ小学校?
 困惑しながらも全力で思い出す。沢野佳世。ダメだ、よく遊んでいた友達の中にはいなかった。
 少し遊んだことのある子か? だったら、なんで俺と秋野を両方知っているんだ?

「それで、二人が……」
「秋野! ちょっとそこで待っててくれ! おい、沢野こっち来い」
「えっ? ええ、いいけれど……」
「あ、あたしも一人なの……?」

 一之瀬と同じ状況になるのは嫌かもしれないが我慢してほしい。これ以上は俺たちの今後に関わってくるのだ。
 秋野から声が聞こえない程度に離れ、向かい合う。沢野は何故二人きりになったのか理解できない様子だった。

「えっと、杉坂くん。どうして秋野さんから離れたの?」
「お前、秋野の事情は知ってるのか?」

 念のため聞いておく。まず知らないだろうけど、知っていて話していたら厄介だ。

「事情……? 昔と全然違うところかしら」

 知らないらしい。
 全部の話をするわけにはいかないが、口止めするにはある程度話す必要があるだろう。

「はぁ……とりあえず、俺にだけさっきの話を聞かせてくれ」
「私は……小学生の頃の二人を知っているの。二人がいつも仲が良かったのを遠目に見ていて、高校になってまた二人が一緒になっていて、嬉しかったのよ」

 やはり特大の爆弾だった。
 あの場で俺と秋野が知り合いであることを話していたら、思い出巡りや友達作りの計画を進められなくなる。
 今秋野に嫌われるわけにはいかないのだ。

「それで? 女子生徒を睨んでたってのは……」

 元の話では、委員長が女子生徒を睨んでいた、という内容だった。
 沢野が昔の俺と秋野を知っていたとして、それがどう繋がるというのか。

「それは……あの秋野さんと杉坂くんが仲良さそうにしているから、彼女たちがその邪魔をしそうで心配だったからよ」
「……すまん、もう一回詳しく頼む」

 脳がショートしそうだった。理解のできない情報が一気に流れ込んできた。
 もう一度、冷静に聞いてみよう。少しは頭に入ってくるかもしれない。

「遊びに誘ったり、秋野さんを会話に入れようとする生徒を睨んでいたの。二人の邪魔になるから」
「うん、分からん」

 なんでそうなった。
 一応、最低限の理解はできた。
 俺と秋野が再び仲良くしているのを見て、その邪魔をする生徒を睨んでいたと。
 どういうことだ。理解できたのに理解できていない。頭がどうにかなりそうだ。

「つまり、お前は秋野と俺に仲良くなってほしいと思っていると?」
「そういうことよ。ええと、そういえばどうして秋野さんに聞かせないようにしたの?」

 話すか、もう話すしかない。
 俺と秋野に仲良くなってほしいと思っているのなら協力してくれるはずだ。もっと言えば、思い出巡りや友達作りに協力してくれるかもしれない。

「全部話す。だからお前も誰にも言わないと約束してくれ。できるか?」
「え、ええ……いいけれど」

 何故ここまで口止めをするのか分からなそうな沢野。
 まさか、秋野が記憶喪失になっているとは思っていないだろう。

「実はな――――」

 俺は沢野に全てを話した。
 転校の理由から、秋野が当時の記憶を失っていること、俺が秋野と知り合いであったことを隠しているということ、現在思い出巡りや友達作りをしているということまで、全て。

「そんなことが……だから、呼び方も違ったのね」
「ああ。後な、俺が当時仲良かったことは秘密にしておいてくれ。ここだけ重要なんだ」
「分かったわ」

 そのうえで、俺が秋野の幼馴染であることは隠してもらうことにした。それだけ隠せば、思い出巡りなどに活かすことができる。
 話を合わせて、秋野に沢野のことを伝えよう。

「……どうして、杉坂くんは秋野さんに隠しているの?」

 秋野の元へ戻ろうと思っていると、沢野がそんなことを聞いてきた。

「最初はさ、向こうが忘れてるなら黙っていようと思ってたんだ。そのまま、よく話すようになって仲良くなっちまった。今まで友達だった奴が嘘をついていたんだ、ショックは大きいだろ?」
「……でも、秋野さんなら」

 ずっと嘘をついていた。
 記憶を思い出すために協力してくれていた友達が、本当は昔仲の良かった幼馴染だった。
 そんなの、疑心暗鬼になってしまっても仕方ない。

「記憶を失ったショックの原因は俺にあって、一気に思い出したら危ないかもしれない。って理由もあるけど、そこはまあ話してみたら案外どうにかなるかもしれない」
「それなら……」
「それ以前にダメなんだ。怖いんだよ、嫌われるのが。確かにいざ話したら普通に思い出すかもしれない。それでも、まだ話すのは怖い。今秋野が向けてくれる視線が変わってしまうと思うと、話せないんだ」

 いっそのこと話してしまえば楽になれるかもしれない。
 だが、秋野が何の疑いもなく受け入れてくれるとは思えない。少なくとも、何故隠していたのかと問い詰められるだろう。
 秋野はいいやつだ。正直に言えばきっと許してくれる。
 それでも、今はダメだ。

「それなら、仕方ないわね」
「ああ、仕方ない。本当に」

 意気地なしだと幻滅されると思っていた。
 それでも、仕方ないと言ってくれた。少し変わっているが、やはり沢野はいい人だ。
 ただ、心の奥底で叱ってほしかった、背中を押してほしかった自分もいた。
 自分が嫌いになりそうだった。こんなのじゃダメだ。昔の俺に笑われてしまう。
 昔の自分は、どうやって前向きに生きていたのだろうか。

「いつか、話すのよね?」
「それは……もちろん」
「いつ?」
「少しでも、あいつが思い出したら話そうかと思ってる」

 これは前から決めていた。
 何も思い出していない今の状況で話しても混乱するだけだ。
 ショックが少ないである思い出し始めから緩やかに開示していくつもりだ。

「それは秋野さんのため?」

 秋野のためか。
 ショックで記憶を失った原因が俺であるので、いきなり刺激を与えるのは危ないという判断から、秋野のためとも言える。
 しかし、実際に話してみてどの程度ショックを受けるかは分からないのだ。何も影響はない、些細なショックかもしれない。だから、秋野のためだけとは言いにくい。

「それもあるけど、俺のためでもある。幼馴染として顔合わせすることから逃げているだけなんだよ、俺は」
「……予定よりも早くなるといいわね」
「だな」

 何はともあれ、秋野が思い出さなければ何も始まらない。
 今後はより一層思い出巡りに力を入れていこう。そして、全てを話すのだ。
 秋野の元に戻った俺たちは、一之瀬に話しても大丈夫な内容だと判断し、チャットで一之瀬を呼び戻した。
 そして、二人に当時知り合っていたことを伏せて沢野が女子に視線を向けていた理由を説明した。
 改めて説明を聞いても、やはり沢野が変な奴だったことしか分からなかった。
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