再会した幼馴染が記憶喪失になっていた。しかも原因が俺にあるようなので責任を取りたい

瀬口恭介

文字の大きさ
16 / 31

一之瀬湊の暴走 1

しおりを挟む

 沢野と友達になった日。
 俺はいつものように放課後、一之瀬の家に向かっている。
 いつもと違うところは、隣に秋野と沢野がいるところだ。
 俺は一之瀬に事情を説明して、ゴールデンウィーク辺りで思い出巡りに連れて行こうと考えている。

「一之瀬、掃除したよな?」
「もちろん。したに決まってんじゃん」
「だよな、悪い疑っちまって」

 もちろん、一之瀬には事前に知らせてある。
 少し遅れて俺たちがやってきたのは、一之瀬に部屋の掃除をさせるためだ。

「さ、みんな入って入って。ゲームやろうゲーム」

 今日は大事な話をするために四人で集まると言ったのに、一之瀬はゲームをする気満々らしい。
 話さえ終わればゲームなどをするつもりだったのでいいんだが、緊張感がない。

「お前なぁ……まあいいか、お邪魔します」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」

 俺に続いて二人が一之瀬の家に入る。
 一之瀬に案内されて部屋の前まで行き、扉が開かれる。
 その部屋は、確かに床の埃などが消え、空気もある程度良くなっていた。
 のだが。テーブルの上にある物やベッドの上にある漫画などはそのままだった。

「これ……もっとどうにかできただろ」
「ええ!? 掃除したよ! 綺麗でしょ!!」
「いつもに比べたらな」

 一之瀬の部屋に、二人はかなり引いているようだった。
 せめてテーブルの上くらいはどうにかならなかったのか。

「一之瀬くん、掃除してこれ……なのかしら?」
「そうだけど?」
「いい? 一之瀬くん。人を家に呼ぶときは多少なりともテーブルの上を片付けるべきなのよ」

 全くもってその通り。一之瀬の部屋に比べて、秋野の部屋はとても綺麗だった。
 普段一之瀬の部屋に行っているから余計に綺麗に感じたのだろう。

「えー、友達だしいいじゃん」

 一之瀬の言葉に、秋野が反応する。

「友達……確かに、友達なら……」
「おい流されるな秋野。俺も普通に嫌だったわ」
「なら言えよ!」
「言ってたけど聞かなかったろお前」

 俺はいつも一之瀬に部屋を片付けろと言っていた。
 まあ男二人だしいいかとしつこくは言わなかったが、流石に散らかりすぎて気になっていたことも多い。

「とりあえずテーブルの上だけでも片付けましょう。何も置けないわ」
「だそうだ。ほら一之瀬早くしろ。見ててやるから」
「いや見てないで手伝ってくださいよ!?」

 仕方ない。俺も片付けを手伝い、テーブルの上にあった漫画やコップを片付けた。
 テーブルから物が消えただけでかなりすっきりする。やはり視界がごちゃごちゃしていないのはいい。
 全員分の飲み物を用意し、四人で四角テーブルを囲むように座る。

「で、話って何さ」

 準備が終わり、一之瀬が早速切り出した。

「実はな、一之瀬と沢野に頼みがあってきたんだ」
「頼み?」
「何かしら」

 一応、沢野には昼に教えていたので演技をしてもらう。
 話す内容は、秋野の今の状況について。

「秋野、自分から言えるか?」
「うん。えっとね、あたし記憶喪失なんだー」
「マジ!?」

 秋野の言葉に一之瀬は驚き、沢野は真剣な表情で考え込んでいる。
 改めて、過去の記憶などを辿っているのだろう。

「……でも、普通にしているわよね。何を忘れてしまったの?」
「小学校低学年からもっと小さい頃までの思い出。忘れてすぐの頃の記憶も、曖昧になってるよ」
「あっ、ここはどこ私は誰? みたいなのじゃないのかぁ……」
「なんで残念そうにしてんだお前」

 不謹慎ではあるが記憶喪失が本当にあるのかと興味がわく気持ちは分かる。
 だが今は真剣に聞いてほしいところだ。

「……確かに、あの頃の秋野さんは少し様子がおかしかったわね」
「お、覚えてるの!?」
「ええ。あまり接点はなかったけれど、突然学校に来なくなったのを覚えているわ」

 一時期不登校になっていたのか。
 秋野が周りと仲良くなろうとしたのは、いつからなのだろう。
 沢野が覚えていないということは、大きく変わったのは高学年の頃か、中学の頃か。
 あるとすれば、イメチェンできる中学か。

「そっか……それでね、あたし、どうしても思い出したいんだ」
「それは、どうして?」
「何でだろう。もちろん家族との思い出もあると思う。それ以外にも、忘れちゃいけない思い出があったような気がするの」
「忘れちゃいけない思い出……そうね、確かに、それは思い出すべきだわ」

 その思い出は……俺との思い出か。
 しかし心当たりはあまりない。特定の場所なんて、秋野の家か俺の家、公園か学校くらいだ。
 駄菓子屋は少し行ったことがあるくらい。秋野との関わりは少ない。

「なるほどねー。それで、お願いって何さ?」
「思い出巡りに、協力してほしいの」
「思い出巡りぃ?」

 それは一体何をするんだと疑問に思う二人。

「うん。杉坂くんには一回協力してもらってるよ。昔行った場所に行ったら思い出せるんじゃないかってことで、この前駄菓子屋に行ったの」
「あっ、あの時のか!」

 俺と秋野が駄菓子屋にいたときのことを思い出す一之瀬。
 あの時は事情を説明できなかったが、これで納得できたようだ。

「そう。そんな感じで、公園に行ったり、小学校に行ったりしたいの」
「私たちはそれについていけばいい、ということね」
「そういうこと。大丈夫かな?」
「もちろん。私は大丈夫よ」
「ま、僕もいいけどさ。小学校違うからあんまり協力できないと思うよ」

 一之瀬は小学校が俺たち三人とは違う。
 隣の小学校だったか、俺も当時の一之瀬のことは知らない。

「それでもいいんじゃないか? 大勢で行って楽しかったら思い出すかもしれないだろ?」
「ん、楽しめばいいのか! なら参加する!」

 ちょろすぎる、この男。
 実際、あの頃みたいに楽しく感じたら記憶が戻るかもしれない。
 だから楽しめばそれでいいのだ。記憶喪失を治す方法なんて、誰にも分からないのだから。

「それが一つ目のお願い。二つ目はね……」

 記憶喪失の話を切り上げ、二つ目の話に入る。
 内容は、秋野に仲のいい友達がいなく、この前友達を信じられなくなってしまったことだ。
 あの日、周りに合わせ無理をして倒れてしまったことも、全て話していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん
恋愛
 「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。  卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。  親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって─── 〈注〉 このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。

処理中です...