再会した幼馴染が記憶喪失になっていた。しかも原因が俺にあるようなので責任を取りたい

瀬口恭介

文字の大きさ
17 / 31

一之瀬湊の暴走 2

しおりを挟む

 秋野が倒れたり、親友を欲しているという話を聞いて、一之瀬の部屋は重い空気が流れた。
 真剣な話なんだ、と改めて分かったのだ。
 沢野も、この話は初めて聞いたため驚いていた。

「それで友達に……」
「ご、ごめんね。そんな気持ちで友達になろうとして……」
「いいのよ。私も、秋野さんにことを親友って言えるくらい仲良くなりたいわ」
「ほんと!? ありがとう!」
「ちょっと、急に抱き着いて……ふふっ」

 女の子同士がイチャイチャしている。これは邪魔するわけにはいかない。
 そういえば、思い出したら親友になるという話はしていなかった。まあ、重要な話でもないので伝える必要はないと思ったのだろう。

「まあそういうわけで、あたしは友達が欲しいの。と言っても、もうここにいるメンバーでいいかなって思い始めてるけど」
「そうね。私にも親友と呼べる人はいないし、二人も仲良くなってくれるかしら?」
「まあ、そうだな。これから次第に仲良くもなるだろ」
「だね、委員長とはまだ話慣れてないからあれだけど、杉坂と秋野ちゃんといるのは楽しいしねー」

 俺も沢野とは話慣れてないな。
 そして秋野、どうして俺のことを睨んでくるのだ。
 なんて思っているとスマホが鳴った。チャットが来ている。相手は……目の前にいるはずの秋野からだった。

『あたしとの約束は?』

 気にしていたらしい。
 秋野との約束。秋野が思い出したら、親友になるという話。
 今の流れで、その約束はどうなるのかと思ったのだろう。

『そのままだ。思い出したらな』
『でも、委員長とは親友になるの?』
「……」

 これは、どう返信するのが正解なのだろうか。
 秋野と俺が親友になる約束は、秋野からしたらあまり意味はない。
 思い出したい、という気持ちが強くなるという効果はあるかもしれないがそれだけだ。
 このメンバーで仲良くなれるのなら、あの約束を続ける必要はないのではないか、と思われても仕方がない。

 この約束は俺のためでもあるのだ。
 秋野が忘れたまま、幼馴染ということを隠して親友になりたくないというだけの話。
 声を大にして親友と言えないから、このまま約束を続けたい。

「俺は……」
「みんな。あのさ、さっきの親友の話ちょっといいかな」

 どうすればいいのか迷っていると、秋野が話を始める。

「えっと、あたしがさ、思い出したときに親友になってほしいの」
「あ、秋野……?」
「思い出したとき?」
「どうしてかしら」

 二人からも疑問の声が上がる。
 俺もだ。どうしていきなりそんなことを言ったのか分からない。

「あたしが、思い出さなくてもいいって思わないため」
「……っ」

 俺が考えていたことの一つと、全く同じだった。

「今も思い出したいけど、みんなと一緒に居たらきっと楽しくて、もうこのままでいいって考えちゃうんじゃないかって……だから、思い出したら、みんなを親友って呼ばせて?」
「そういうこと。いいわよ、そうしましょうか」
「なら頑張って思い出させないとだね」

 一之瀬と沢野は何の疑問も持たずに賛成する。

「杉坂くんは?」
「お、俺も……いいと思うぞ」
「そっか。じゃあ決定だね」

 いったいどういうつもりなのだろう。
 俺はチャットに一言『悪い』とだけ打ち込み送信する。
 すると、少しの時間を置いてチャットが送られてくる。

『今度、理由聞かせて』
『分かった』

 本当のことを話すべき、なのだろうか。
 いや、ダメだ。これだけは話せない。まだ覚悟が決まらない。
 俺が幼馴染であることは、伏せるべきだ。せめて話すのなら、自力で気付けるよう匂わせるしかない。
 それがこの立場を最大限利用する方法のはずだ。

「そういえば秋野ちゃん。その酷いこと言ってきた先輩って誰なの?」

 話が終わると、一之瀬がそんな質問をした。
 友達が先輩に酷いことを言われたと知って、相手の名前を知りたくなったのだろう。
 流石にその先輩をどうこうしようと思っているわけではないと思うが。

「岸田先輩だけど……」
「ああ、あの先輩ね」
「有名なのか?」

 岸田先輩、聞いたことはない。

「少しだけね。性格はクズだけど顔はいいから仲のいい女子が多いんだ。男子の間だと嫌ってる人は多いよ」
「お前がその嫌ってる男子筆頭か」
「そう! マジムカつくあの先輩!!!」
「お前彼女欲しくないって言ってなかったか?」

 一之瀬は過去の恋愛にトラウマがあるのか彼女を欲しがらないのだ。

「そうだけども、ムカつくじゃん! なんであんなのがモテるんだよ!」
「外面しか見ない人が多いのよ。一之瀬くんも、女子の外見を重要視しているでしょう?」
「いや、全然。性格が一番重要だから」
「そ、そう……」

 突然真顔で目のハイライトを消した一之瀬に、沢野がドン引きする。
 俺でも一之瀬のトラウマ、よく知らないんだよな。聞いても話してくれないし、女子には気をつけろよ……なんて忠告してくる始末。何があったんだよ。

 その後は重い空気を払拭するようにゲームで遊んだ。人数が増えるとやはり楽しい。
 そらも一緒ならもっと楽しそうだが……一之瀬の家には行かなそうだ。
 そんなことを考えながら帰宅する。今日は色々あって疲れた。休もう。

* * *

『今大丈夫?』
『ああ』
『じゃあ、聞かせて。どうして、あたしにだけ親友になる条件を付けたの?』
『お前の言っていた、思い出さなくてもいいと思わないようにってのが理由だ』
『本当に?』
『おう。嘘じゃない。ただ、もう一つある』
『もう一つ?』
『こっちは、秘密だ。どうしても話せない』
『いつか話してくれる?』
『思い出したときに、理由も話す』
『そっか。じゃあ頑張らなきゃね』
『絶対、思い出してくれよ』
『それじゃ、また明日学校で』
『ああ、おやすみ』
『うん、おやすみなさい』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん
恋愛
 「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。  卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。  親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって─── 〈注〉 このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。

処理中です...