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杉坂裕司の懐古 1
しおりを挟む翌日、俺とそらは公園に向かっていた。
そらも参加することになり、参加人数は五人。これで適当に遊んだり、昔の話をするという予定だ。
公園に到着すると、秋野と沢野が先にいた。のだが。
秋野の隣には明らかに年の離れた大人が混ざっていた。
「お兄ちゃん、あの人って……」
「何でいるんすか……」
「何って、面白そうなことしてっからだろうが。若ぇ奴らが楽しそうにしてんのが羨ましいんだよ大人ってのは」
そこにいたのは、秋野彩斗。秋野の父親だった。
俺が普通に話しかけたことに、秋野は驚いた様子だった。
それもそのはず、秋野は俺と彩斗さんが知り合いであるということを知らないのだ。ここで初めて会ったのに、普通に話しかけてしまった。
「杉坂くん、お父さんと会ったことあったっけ?」
「ま、まあちょっとな」
「栞里と買い物してるときに会って紹介してもらったんだ。調子はどうだ? 裕司」
さらりと上手い嘘をついた彩斗さんは、俺の方にチラリを視線を向けながらそう聞いてきた。
内容は伏せているが、秋野の記憶はどうなっているのかを聞きたいのだろう。
「ぼちぼちですよ」
「ん、そうか。頑張れよっと」
彩斗さんは、まあそんなものかと言いたげな顔で背中を叩いてくる。
昨日は学校に行って少しずつ思い出しそうになっていたが、それだけだ。かなり進んだと報告するにはまだ足りないような気もする。
そんな俺の様子を見て、秋野は悲しそうな顔をした。
「あれ、昨日とか、楽しめてなかったかな……」
「あ、いや。何というか、上手くいかないことが多くてな。昨日も、すごく楽しかったぞ」
俺が充実していないと秋野が勘違いしてしまった。
それを聞いて、秋野は良かったと胸を撫でおろした。
「学校行ったんだろ? オレも誘ってくれればよかったのによぉ」
「呼べるかっ!!!」
誘ったところでバスケ勝負も楽しんでいたのだろうが、流石に学校には子供だけで行きたいので誘えない。
「あら、一之瀬くんも来たみたいよ」
一之瀬も来たらしく、沢野が反応する。
公園の入り口からダルそうに歩いてくる一之瀬。あくびをしているところを見るにギリギリまで寝ているのだろう。
「おっすーみんな。ってどおおお!? 誰!?」
「今気づいたのか……」
「一之瀬つったか? オレは秋野の父親の彩斗だ。よろしくな」
「これはこれは……え、なんで秋野ちゃん保護者同伴なの?」
「公園で遊ぶって言ったらついてきちゃって」
お茶目な人だった。思えば子供の頃も、たまに遊びに混ざってきたような気がする。
「よっし遊ぶか! かくれんぼだな!」
「なんで彩斗さんが仕切ってんですか」
「かくれんぼかぁ、最後にやったのいつだろうねぇ。中学じゃやらないし、小学生ぶりか?」
確かに、かくれんぼと聞いてそんなことをするのかと思ってしまったが、昔はよくやっていた。
それこそ、秋野も参加したことがあるはずだ。
小学生らしいことをした方が、当時を思い出せていいだろう。昔の話はかくれんぼが終わったらすればいい。
「そら、やったことないかも」
「おっそうかそうか。ならやろうぜ。鬼はじゃんけんな!」
この場において一番テンションの高い彩斗さんが会話を進めていく。
六人もいればしっかりとしたかくれんぼができるだろう。公園はそれなりに広く、隠れられる場所も多い。
遊ぶときは全力で遊ぶ。楽しむうえで大切なことだ。
子供の頃はルールが適当であったが、今回は本気の勝負なので勝敗を決めるためしっかりとしたルールを考えることとなった。
・隠れる側の勝利条件
タイマー開始から十分以内に全員見つからなければ勝ち。
移動あり。移動中に鬼に見つかった場合はその時点で負け。
・探す側の勝利条件
タイマー開始から十分以内に全員見つけることができれば勝ち。見つけられなければ負け。
ということになった。単純ではあるが、まあこれでいいだろう。
十分で見つけることができるのか、短いのか長いのか分からないが、物は試しだ。
まずは鬼を決める。じゃんけんで勝てば鬼にはならない。
「「「「「「じゃーんけーん」」」」」」
* * *
確率とは非常なもので、低ければ低いほど当たることが多く感じるものだ。
じゃんけんとは事前のデータがなければ完全に運のゲームであり、その条件で戦った場合必勝法など存在しない。と思う。
ピピピピっとタイマー音が鳴り響き、目を開けて周囲を見回した。
そう、俺が鬼である。くそう。
周囲には小さな子供がぽつんぽつんといるだけで、人が隠れている気配はない。
この公園で隠れやすい場所はどこだろうか。
やはり遊具の陰などだろうか。すべり台の下のスペースを探すが、誰もいない。
うーん、ここは陰になっていて見つかりにくいと思ったのだが。
「バカの兄ちゃんそんなとこで何してんのー?」
「ちょっ!?」
なんて思っていると上からそんな声が聞こえてきた。
口元がニヤリと歪んでしまう。やばい直らない。面白すぎる。
「はいみっけ」
俺はすべり台の階段を上がり、すべり台の上にある足場の隅に座っていた一之瀬を発見する。
開始三十秒のことであった。このペースでいけばすぐに終わってしまうのではないか。
なんて余裕をぶっこいてしまうがまだ分からない。。同じペースで見つけられるとは限らないのだ。
時間の勝負。隠れる場所が多いとはいえ、場所は限られている。その全てを駆け回り、運よく見つけることができれば勝ちだ。
死んだ目でベンチに座った一之瀬を横目に、俺は隠れスポットを巡るべく駆け出した。
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