再会した幼馴染が記憶喪失になっていた。しかも原因が俺にあるようなので責任を取りたい

瀬口恭介

文字の大きさ
25 / 31

杉坂そらの嫉妬 4

しおりを挟む

 半分が地面に埋まったカラフルなタイヤや、同じくカラフルな謎の丸太の遊具、雲梯を軽く回り体育館にやってきた。
 同じように体育館倉庫にバスケットボールを取りに行き、そこにあった跳び箱などを見て懐かしんだ。
 倉庫に閉じ込められるという恒例のイベントは起きなかった。連絡手段もあるので閉じ込められたところですぐに出れるのだが。

 早速、一之瀬はバスケットボールを構えゴールに向けて放った。

「よっと、ありゃ……入らねぇ」
「下手くそか? 見てろって。ほっ……あれ?」
「下手くそか?」

 同じく外した俺は何も言い返せなかった。
 悔しい。こればかりは実力勝負だ。

「私もやってみようかしら。ふっ……」

 沢野は床に転がったバスケットボールを拾い、ゴールに向かって放る。
 それっぽい構えでシュートをするが、枠に弾かれてゴールにはならなかった。

「あら、難しいわね」
「あたしもー」
「そらもやるー」

 落ちた二つのバスケットボールを秋野とそらが持つ。
 二人とも構えは素人で、両手を使ったシュートだ。
 二人そろって届かない。枠にすら当たらない。
 この場にいる五人が全員外した。全員下手くそである。

「よし! みんなでシュート対決だ!」
「お兄ちゃん頑張って!」
「お前も頑張るんだよ」
「えー!」

 頑張ってじゃなくお前も頑張るんだよ!
 そらがある程度運動ができるようになって嬉しいが、無理はさせたくない。
 シュート勝負はちょうどいい運動になるので、ぜひそらには頑張ってほしい。

「ルールは五回投げた中で一番多くシュートを成功させた人が勝ち! 以上!」
「おーけー。絶対勝つからな」

 一之瀬が簡単にルールを決めたが、悪くない。五回ならば運よく入ることもあり、経験の少ない女子組も勝てる確率が高くなる。
 一之瀬のルールに全員が賛成し、一之瀬、俺、沢野、秋野、そらの順番でシュートを打つことになった。

「まずは僕からぁ!!!」

 最初に一之瀬がシュートをする。
 先ほどと同じようにシュートを構え、放つ。
 綺麗な弧を描きながら、一之瀬の放ったボールは枠に当たり、ぐるぐると回転する。
 入るか……! と思われたが、回転しながら外側に落ちてしまった。

「なんでさ!!!」
「これは勝ったな」

 二つ目のボールを持ち、ゴールを見据える。
 さっきは上手くいかなかったが、今度こそ入れて見せる。

「よっ……っと」

 シュートし、ボールが弧を描く。
 そのまま、パスッとネットを揺らした。
 枠にも当たらないゴールだ。やった!

「杉坂くんすごい!」
「お兄ちゃん流石!」
「ふはは、まあな」

 内心めちゃくちゃ喜びながら、次のシュートを打つ沢野に位置を譲る。
 沢野は、先ほどと同じようにシュートをした。

「ダメね……難しいわ」
「あー、でも惜しかったよ!」
「ですです! 届くだけでもすごいですよ」

 俺たちが打っているのは、スリーポイントシュートだ。
 それなりの距離があるので、ある程度筋力がないと厳しいだろう。

「お前らはもう少し近づいていいぞ」

 秋野とそらは遠くに投げることができなかったので、近づいて打つことになった。
 バスケの試合で指定の場所からシュートする位置よりも少し前進した辺りから投げるくらいがちょうどいいか。

「そいっ」

 秋野がシュートをする。一之瀬と同じように枠をぐるぐると回転した。
 外れるか、と思いきやボールは回転しながら内側に入っていく。
 そのまま、ボールは輪をくぐり落下した。秋野もゴールだ。

「やった! 入ったよ!」
「いい感じだな。これは誰が勝つか分からないぞ」

 次にそらが投げる。

「りゃー!」

 相変わらず両手で投げるが、今度は距離が足りたようで黒い枠にボールがガンっとぶつかる。
 そのまま赤いゴールの枠にもゴンっとぶつかり、回転することなくネットを揺らした。
 入った。入ったぞ。そらがゴールを入れた。入った!!!!!

「おおお!! すごい!!! やったなそら!!!」
「うん!!!」

 俺はそらに駆け寄り、ハイタッチをした。
 自分が入れた時よりも嬉しい。そらが運動している、バスケでシュートを入れた。それが本当に嬉しい。

「そ、そらちゃんの時だけ喜び過ぎじゃない?」
「秋野ちゃん、あれがいつも通りだよ」
「シスコンね。まあそれもありだわ」
「委員長何言ってるの!?」

 ごちゃごちゃ言っているが、そんなにおかしいだろうか。
 確かに他の兄妹よりも距離が近いことは自覚しているが、そこまでじゃないと思っていた。
 まあ、気にしても仕方ない。これが俺だ。

 これで全員が一回投げたことになる。
 入れたのは俺、秋野、そらの三人。それぞれあと四回あるため、まだまだ勝負は分からない。
 この戦い、絶対に勝つ!

* * *

 五回目のシュート。パスッとネットを揺らし、落下する。
 一度シュートが入ればある程度感覚は掴めた。まあこれが実際の試合で動きながら入れるとなったら難易度は一気に跳ね上がるのだろう。スポーツは難しい。

 続けて沢野、秋野、そらが連続でゴールを決めた。
 結果発表。
 俺、四ポイント。
 沢野、三ポイント。
 秋野、二ポイント。
 そら、二ポイント。
 一之瀬、一ポイント。

「ちくしょー!!!!!!!」
「よっし、飯おごれよ」
「そんな話出てなかったでしょおっ!?」

 結果、ボロ勝ちである。
 沢野は最初こそ外したが、構えがしっかりしていることもあり三回も入れていた。
 秋野とそらは最初と最後だけゴール。たまたまかもしれないが上手く入り、同点で三位だ。
 一之瀬は……うん、なんで入らなかったんだろうか。分からない。

「でもどうせだし飲み物買ってきてくれないか。コンビニが近くにあったはずだ」
「まあ、そのくらいなら。というか僕も杉坂に行かせるつもりだったし」
「こいつ……」

 結果的に一之瀬が全員分の飲み物を買ってくることになった。
 その間、ボールを片付けて倉庫にカギを掛ける。

「いやぁ、楽しかったな」
「そうね。たまには運動もいいものだわ」
「疲れたけど、楽しかったよー」

 沢野とそらは楽しんでくれていたようだ。特にそら、本当に良かった。連れてきてよかった。
 勝負を振り返っていると、俯いている秋野が目に入った。どうしたのだろうか。

「……」
「秋野?」
「……あ、ご、ごめん。ぼーっとしてたかも」
「そうか? 汗かいたからな。しばらく休むか」

 五月に入り日差しも強くなってきた。梅雨で暑かったり寒かったりするので体調管理に気を付けなければならない。
 一之瀬が帰ってくるまで、風通しのいい場所で座っていよう。

 一之瀬が帰ってきてからも、しばらくは雑談を続けた。
 そのタイミングで、そらに秋野の思い出巡りについても軽く話した。
 もうほとんど察してくれていたので長々説明する必要がなく助かった。

「明日どうする?」
「公園に行こう。ほら、ここの近くにあるだろ」
「あー、あそこかぁ。僕も昔あそこで遊んでたね」

 一之瀬も例の公園で遊んだことがあるようだ。
 しかし一之瀬の住んでいる地域の小学校付近にも公園はあったはず。何故ここまで来て遊んでいたのか。

「なんで? もっと近い公園あっただろ」
「占領されてたんだよ」
「……いたよな、そういうやつ」

 少人数で公園を占領し、他の子供を遊べなくする害悪小学生。どこの学校にもいるらしい。
 何はともあれ、明日は公園に行くことになった。それこそ学校よりも遊具があるため暇も潰せそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん
恋愛
 「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。  卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。  親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって─── 〈注〉 このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。

処理中です...