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54話 ゴミ掃除、開始
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「ぅ……うぅうっ……ケホッ、ケホッ」
信じてきたすべてが崩れ去ったアルウィンは、急に嘔吐し始める。
その場に跪いて、目じりに涙を溜めて、この陰湿な空気とおぞましい匂いにつられて、すべてを吐き出した。
「ケホッ、ケホッ……げぇ、げぇええ……えほっ、けほっ、けぁ、あ、ぁあ、ああああ…………」
「ち、違うんだ!アルウィン、これは……!!」
「あ、あぁ……あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その次に出たのは、悲鳴のような叫び声。
嫌悪、悲痛、絶望、驚愕。すべてが入り混じった叫び声は、アルウィンの喉を焼くようにかすめながら突き出る。
なにか言い訳をしようとした教皇は、その勢いに圧倒されてびくっと体を震わせてしまった。
そして、アルウィンの暴走を見たクロエはすぐさま、彼女を抱きしめるようにして立ち上がらせる。
「アルウィン、アルウィン……!!し、しっかりして、アルウィン!!」
「ああ……あぁ……………えほっ、あぁ、え……げぇ………あぁあああああ………………あぁあああぁああ…………」
「アルウィン……!」
「……クロエ、彼女をお願い」
修羅場の中、俺はクロエに声をかけながらも振り返って、アルウィンの状態を確かめた。目が死んでいる。
……やっぱり、連れてくるべきじゃなかったかもしれない。そんなことを思ってしまうほど、アルウィンの状態は酷いものだった。
何はともあれ、アルウィンの悲鳴を聞いた男たちはちらほらと、廊下で姿を表す。
「なんだ?何が起きてるんだ!?」
「おい、今のは教皇様の部屋で……!」
そして、教皇の周りに立っていた男たち二人は、俺たちを見たとたんにすぐ顔をしかめる。
「チッ、なんなんだよ、お前ら。急に来やがって……!」
「カイ」
「……うん」
「殺してもいい?」
その質問を投げたニアは、既に目隠しの結び目を解いている状態だった。こいつらを生かそうとは思ってないのだろう。
そして、それは全くもって俺も同感だった。
ニアの真っ赤な瞳が光るのと同時に、俺は体内の魔力を湧き上がらせる。それから、教皇を指さしながら答えた。
「あいつを除いてね」
あんなクズをあっさり死なせてはいけない。
最大限の苦痛を与えなければ。教会に従わない人々を火あぶりにして、シスターになるためにここへ来た純粋な女性たちを、徹底的に弄んで。
絶対に、絶対に生かしてはならない。
なにがあっても、ズタズタにしてから殺す。
「あ、悪魔!?!?」
「か、影が……!くそ、なんでここを……!」
「……………………………………」
二人の男たちが目を見開く。その後すぐに破れかぶれと言わんばかりに襲ってきたが、ニアの魔法が圧倒的に早かった。
俺とニアがシュビッツ収容所に閉じ込められていた時。ニアの魔法が暴走していた時に見せた、悪魔の顕現。
彼女から生み出されるオーラ―が悪霊の形になり、そのまま二人の体を手でつかんだのだ。
「くはっ!?は、離せ―――ケホッ、カっ……」
「オエッ……かぁっ………!!」
そのまま握りつぶすと、声にならない声が上がってからすぐに血が飛び散る。
口から血を吐き出して無様に死んだ姿は、やはりアルウィンに見せられるようなものじゃなかった。
「う、うぁああああああああああああああああ!?!?!?」
教皇の惨めな悲鳴を無視して、俺は振り返る。アルウィンはもはや憤怒を通り越して虚ろな顔をしていて、目の前のすべてを見届けていた。
「ニア、目隠しちょっと借りるね」
「うん」
俺は、床に落ちている目隠しを拾って彼女に近づく。
アルウィンが「え……?」と疑問の声を上げるが、気にせず俺は彼女の目に目隠しをした。
「……ごめんね、アルウィン。連れてきて」
「………………ぁ」
「クロエ、アルウィンを安全な場所まで連れて行ってくれる?ここは俺たち二人でなんとかするから」
「でも……!いや、うん。わかった」
普段のクロエなら、なにがあっても俺たちと一緒にいようとするだろう。だけど、アルウィンの様子を見てさすがに放っておくことはできないらしい。
クロエはすぐに頷いて、部屋を出て階段を駆け上ろうとする。
「貴様ら……!!影だろうがなんだろうが、生きて帰れると思うな!!」
「奇襲とか卑怯な真似しやがって!!!死ねぇ!!!!」
「……はっ」
しかし、異変が起きたと気付いた十字軍の男たちが続々と部屋から出て、姿を表す。
どちらともパンツ一枚か真っ裸の状態で、滑稽極まりない風景だった。
「クロエ、アルウィンの耳」
「うん」
短い指示だったのに、クロエは的確に意味を察してアルウィンの耳を両手で塞ぐ。
男たちが襲い掛かってくる。中には剣から黄色い光を纏わせている奴もいて、武装するやつらもちらほらいた。
それをすべて確認してから、俺は左目に魔力を集中させる。パチン、と指を鳴らした。
次の瞬間、地獄が広がった。
「ぷはっ……!え、え?お、まえ………」
「え………お、俺じゃない!!俺じゃないんだ!俺はなにもやってな……きゃはっ、きひひひひっ、きへへへへっ!!」
「な、なんだ!!なにが起こっ……くほっ!?」
「きひゃははははははは!!きあああああああああああああああああああ!!」
武器を持っている男たちが、素手の仲間たちを殺し始めたのだ。
剣のオーラ―を振り下ろして、お腹に剣を刺しこんで、切って。残酷な仲間同士の虐殺劇が、目の前に開かれる。
「こ、こいつらどうかしてるぞ!!あ、悪魔だ!あいつが、あいつが……うぁあああああああ!!」
「きひっ、けへへへへへ……あ、ぷふぅっ!?!?」
「いひひっ、ひひひひ……」
仲間を殺したヤツが、また次の仲間に殺される。そいつはもっと強い仲間に殺されて。
瞬く間に十数人だった男たちが一人になってしまい、ヤツはそのまま腹をかっさばいて、自決した。
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「……カイ、先に行ってるね」
「うん」
アルウィンはもはやメンタルが崩壊してしまったらしく、なにも言わない。
耳が聞こえなくても、殺人が繰り返される不快な空気が彼女を伝染させたかもしれない。
……傍にいるのがクロエだから、肉体的な傷を負うことはないだろう。だけど、これはちゃんと面倒を見てあげなきゃダメな気がした。
クロエは俺と頷き合ってから、さきに階段を駆け上る。残った俺とニアは見つめ合いながら、教皇に目をやった。
「ひ、ひいいいいっ………!?!?」
今すぐにでも殺したい。
あいつは人間じゃない。指一本触るのも不愉快だし、今すぐにでもリエルに連れて行って死ぬ寸前までコテンパンにしたかった。
だけど、俺たちはまだまだやるべきことがある。
「ニア」
「うん」
「久々に、ゴミ掃除でもやろうか」
さっきまで嫌悪で顔をしかめていたニアは、淡い笑みを浮かべてから言った。
「うん」
信じてきたすべてが崩れ去ったアルウィンは、急に嘔吐し始める。
その場に跪いて、目じりに涙を溜めて、この陰湿な空気とおぞましい匂いにつられて、すべてを吐き出した。
「ケホッ、ケホッ……げぇ、げぇええ……えほっ、けほっ、けぁ、あ、ぁあ、ああああ…………」
「ち、違うんだ!アルウィン、これは……!!」
「あ、あぁ……あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その次に出たのは、悲鳴のような叫び声。
嫌悪、悲痛、絶望、驚愕。すべてが入り混じった叫び声は、アルウィンの喉を焼くようにかすめながら突き出る。
なにか言い訳をしようとした教皇は、その勢いに圧倒されてびくっと体を震わせてしまった。
そして、アルウィンの暴走を見たクロエはすぐさま、彼女を抱きしめるようにして立ち上がらせる。
「アルウィン、アルウィン……!!し、しっかりして、アルウィン!!」
「ああ……あぁ……………えほっ、あぁ、え……げぇ………あぁあああああ………………あぁあああぁああ…………」
「アルウィン……!」
「……クロエ、彼女をお願い」
修羅場の中、俺はクロエに声をかけながらも振り返って、アルウィンの状態を確かめた。目が死んでいる。
……やっぱり、連れてくるべきじゃなかったかもしれない。そんなことを思ってしまうほど、アルウィンの状態は酷いものだった。
何はともあれ、アルウィンの悲鳴を聞いた男たちはちらほらと、廊下で姿を表す。
「なんだ?何が起きてるんだ!?」
「おい、今のは教皇様の部屋で……!」
そして、教皇の周りに立っていた男たち二人は、俺たちを見たとたんにすぐ顔をしかめる。
「チッ、なんなんだよ、お前ら。急に来やがって……!」
「カイ」
「……うん」
「殺してもいい?」
その質問を投げたニアは、既に目隠しの結び目を解いている状態だった。こいつらを生かそうとは思ってないのだろう。
そして、それは全くもって俺も同感だった。
ニアの真っ赤な瞳が光るのと同時に、俺は体内の魔力を湧き上がらせる。それから、教皇を指さしながら答えた。
「あいつを除いてね」
あんなクズをあっさり死なせてはいけない。
最大限の苦痛を与えなければ。教会に従わない人々を火あぶりにして、シスターになるためにここへ来た純粋な女性たちを、徹底的に弄んで。
絶対に、絶対に生かしてはならない。
なにがあっても、ズタズタにしてから殺す。
「あ、悪魔!?!?」
「か、影が……!くそ、なんでここを……!」
「……………………………………」
二人の男たちが目を見開く。その後すぐに破れかぶれと言わんばかりに襲ってきたが、ニアの魔法が圧倒的に早かった。
俺とニアがシュビッツ収容所に閉じ込められていた時。ニアの魔法が暴走していた時に見せた、悪魔の顕現。
彼女から生み出されるオーラ―が悪霊の形になり、そのまま二人の体を手でつかんだのだ。
「くはっ!?は、離せ―――ケホッ、カっ……」
「オエッ……かぁっ………!!」
そのまま握りつぶすと、声にならない声が上がってからすぐに血が飛び散る。
口から血を吐き出して無様に死んだ姿は、やはりアルウィンに見せられるようなものじゃなかった。
「う、うぁああああああああああああああああ!?!?!?」
教皇の惨めな悲鳴を無視して、俺は振り返る。アルウィンはもはや憤怒を通り越して虚ろな顔をしていて、目の前のすべてを見届けていた。
「ニア、目隠しちょっと借りるね」
「うん」
俺は、床に落ちている目隠しを拾って彼女に近づく。
アルウィンが「え……?」と疑問の声を上げるが、気にせず俺は彼女の目に目隠しをした。
「……ごめんね、アルウィン。連れてきて」
「………………ぁ」
「クロエ、アルウィンを安全な場所まで連れて行ってくれる?ここは俺たち二人でなんとかするから」
「でも……!いや、うん。わかった」
普段のクロエなら、なにがあっても俺たちと一緒にいようとするだろう。だけど、アルウィンの様子を見てさすがに放っておくことはできないらしい。
クロエはすぐに頷いて、部屋を出て階段を駆け上ろうとする。
「貴様ら……!!影だろうがなんだろうが、生きて帰れると思うな!!」
「奇襲とか卑怯な真似しやがって!!!死ねぇ!!!!」
「……はっ」
しかし、異変が起きたと気付いた十字軍の男たちが続々と部屋から出て、姿を表す。
どちらともパンツ一枚か真っ裸の状態で、滑稽極まりない風景だった。
「クロエ、アルウィンの耳」
「うん」
短い指示だったのに、クロエは的確に意味を察してアルウィンの耳を両手で塞ぐ。
男たちが襲い掛かってくる。中には剣から黄色い光を纏わせている奴もいて、武装するやつらもちらほらいた。
それをすべて確認してから、俺は左目に魔力を集中させる。パチン、と指を鳴らした。
次の瞬間、地獄が広がった。
「ぷはっ……!え、え?お、まえ………」
「え………お、俺じゃない!!俺じゃないんだ!俺はなにもやってな……きゃはっ、きひひひひっ、きへへへへっ!!」
「な、なんだ!!なにが起こっ……くほっ!?」
「きひゃははははははは!!きあああああああああああああああああああ!!」
武器を持っている男たちが、素手の仲間たちを殺し始めたのだ。
剣のオーラ―を振り下ろして、お腹に剣を刺しこんで、切って。残酷な仲間同士の虐殺劇が、目の前に開かれる。
「こ、こいつらどうかしてるぞ!!あ、悪魔だ!あいつが、あいつが……うぁあああああああ!!」
「きひっ、けへへへへへ……あ、ぷふぅっ!?!?」
「いひひっ、ひひひひ……」
仲間を殺したヤツが、また次の仲間に殺される。そいつはもっと強い仲間に殺されて。
瞬く間に十数人だった男たちが一人になってしまい、ヤツはそのまま腹をかっさばいて、自決した。
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「……カイ、先に行ってるね」
「うん」
アルウィンはもはやメンタルが崩壊してしまったらしく、なにも言わない。
耳が聞こえなくても、殺人が繰り返される不快な空気が彼女を伝染させたかもしれない。
……傍にいるのがクロエだから、肉体的な傷を負うことはないだろう。だけど、これはちゃんと面倒を見てあげなきゃダメな気がした。
クロエは俺と頷き合ってから、さきに階段を駆け上る。残った俺とニアは見つめ合いながら、教皇に目をやった。
「ひ、ひいいいいっ………!?!?」
今すぐにでも殺したい。
あいつは人間じゃない。指一本触るのも不愉快だし、今すぐにでもリエルに連れて行って死ぬ寸前までコテンパンにしたかった。
だけど、俺たちはまだまだやるべきことがある。
「ニア」
「うん」
「久々に、ゴミ掃除でもやろうか」
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「うん」
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