トップランカーだったゲームに転生した俺、クソみたいな国を滅ぼす悪役集団の団長になる。

黒野マル

文字の大きさ
73 / 111

73話  潰そうか

しおりを挟む
ブリエンの説明を聞き終えた後、俺たちはとりあえずリエルの屋敷に戻った。

ブリエンを襲った化け物が、カルツかもしれない。

その衝撃的な事実に一番困惑したのは、アルウィンだった。その話を聞くなり、彼女は体を震わせながら何度もありえない、とつぶやいていたから。


「……カルツは、死んだはずなのに」


そして、クロエもまたアルウィンに負けず劣らずでショックを受けていた。

屋敷の中で一番広い、リエルの部屋の中。俺はみんなの顔を見ながら口を開く。


「奴らの目的」
「え?」
「スラムの地下施設でゲベルスが言った言葉、覚えてる?奴らの目的はこの国の全員を黒魔法に染めて、一種のエネルギー源として使うことだって。そして、黒魔法をより強化させるために必要なのは、人間の生命力」
「なるほど」


リエルはそれを聞いて、若干緊張した顔で俺を見てくる。


「黒魔法を使って人間の生命力を吸い取って、それを無理やりカルツの死体に注入したってことだよね?」
「うん、俺はそんな方法だと思う。あの化け物がカルツじゃない確率もあるけど、ブリエンほどの実力者がやられたわけだから……カルツって見るのが妥当じゃないかな」


となると、帝国は既に死者を蘇らせる技術まで持っていることになる。なるほど、こんな切り札を隠してたのか。

厄介になったな……カルツの他にまた誰が生き返ってきてもおかしくないし、その死者たちがどれほどの力を持っているかも分からない状態。

しかし、ブリエンはカルツが聖剣を持っていたと言ってたよな?なんで聖剣を使えるんだろう……ヤツは最後に、聖剣に見捨てられたはずなのに。

……まあ、こっちとしては聖剣を使ってもらった方が都合はいいけど。


「益々やつらの心中が分からなくなってきたわね。どうする?」


その言葉を口にしたのはクロエで、彼女は真っすぐな眼差しで俺を見てきた。


「個人的な考えだけど、今のままじゃ情報が足りなすぎると思うんだよね。一度暴れまわる必要があるんじゃない?カイ」
「暴れまわる必要……か」
「私も、そう思う」


そこでクロエの肩を持ったのは、以外にもニアだった。


「向こうが死者を蘇らせるほどの黒魔法を使えるなら、これからなにが起きてもおかしくないはず。先手を打った方がいいと思う」
「……ニアらしくない論理的な発言」
「……カイ?」
「ごめん、ごめんってば!!ちょっとした冗談だって!!あはは……」


速攻で俺の頬を握ろうとしてきたので、思わず身を引いてしまった。雰囲気を少し和ませるための冗談だったのに……!


「でも、そうなると自然とレジスタンスの人たちとの都合も合うね」


次に意見を示したのは、リエルだった。


「彼らはとにかく、一刻も早く戦うことを望んでいるからさ。こっちから仕掛けてみるのも悪くないんじゃない?」
「…………」


さて、どうすべきか。3人の意見はみんな筋が通っていると思う。

ここでぐずぐずしていてもどうせ状況は変わらない。またブリエンみたいな被害者が出ないとも限らないし、今はとにかく圧倒的に情報が足りないのだ。

まさか、転生した身で情報が足りなくなる時が来るなんて……それは置いといて、今は情報収集のためにも襲撃する必要はあるか。

襲撃して、口が軽そうなやつを何人か捕まえて情報を吐かせれば……そうしたら奴らの計画についてもっと詳しく知れるだろう。


「だよな。戦おう」


久々に戦闘の許可が下りたせいか、クロエとニアは満足そうな顔で頷く。リエルはやや緊張が滲んだ顔をしていた。

そんなリエルに向かって、俺は声のトーンを下げてから言う。


「ただし、レジスタンスの人数は20名辺りで絞ろうか」
「え?」
「今回の戦いは、別に全面戦争じゃないから」


リエルは一瞬目を丸くしていたけど、俺の話を聞くなり納得したような顔で頷いた。


「今回の戦闘の目的は、あくまで情報収集のためだけにしておこう。向こうもバカじゃなければなんらかの策を講じるだろうし、どんなヤツが待ち構えているのかも分からないからさ」


そして、と付け加えた後、俺は両手を合わせながら言う。


「そのためには最低でも、己の命を守れる程度の実力とスピードが大事になるんだ。無駄に人数が増えればもたもたしちゃうからね。しかし、やつらに対抗する戦力もある程度必要だから……その適切な線が20名辺りだと、俺は思う」


正直に言うと、今回の戦闘にレジスタンスを巻き込みたくなかった。先ず危険すぎるし、動くとしたら俺たちだけで動くのが絶対に早いはずだから。

しかし、戦おうとしている彼らの意志を無視するわけにはいかない。

20人なんて、彼らの立場から見たら性に合わない人数なんだろうけど、そこは説得するしかないだろう。


「皇室の構造は俺が知ってるから、一番警戒されなそうなところを攻略しよう。みんな、これに対しての意見はある?」


顔を上げて聞くと、幸い3人とも首を振ってくれた。

しかし、リエルが若干間をおいてから片手を上げて聞いてくる。


「レジスタンスたちの説得は、私がすればいいんだよね?」
「……いや、今回は俺がやる」
「え?」
「彼らも、今まで溜まった不満とかあるだろうからね」


教皇を殺した後、皇室もぶっ続けで襲撃したらよかったんじゃないか。そんな声が未だにあるのを、俺は知っている。

彼らの立場からしたら、国に対する不満がいっぱいいっぱいな状態で急に待てをくらったわけだから、色々と思うところがあるだろう。

そして、今回派遣される20人という人数は明らかに、彼らにとって少ないはず。

そのすべてを俺がちゃんと説明すれば、苦情も収まるしリエルももっと楽になると思った。リエルはいつも、架け橋みたいな役になってくれてるから。


「まあ、しかし」


そこで俺は言葉を切って、肩をすくめながら言う。


「相手が思った以上によわよわだったら、とことん潰そうか」


満足したように、3人は挑戦的な笑みを浮かぶ。俺も少しだけ間を置いた後に、ニヤリと笑いながら言った。


「死体をグールみたいな形で蘇らせるなんて、普通に気持ち悪いし」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...