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76話 3度目の戦い
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「ここだ!!敵はここにいる!!」
カルツの登場と共に、帝国軍がちらほらと姿を見せ始める。彼らの目も全員、赤色だった。
なるほど、すべて精神操作されてるのか。それを確認した後に、俺はレジスタンスのリーダーに手招きをする。
「はい、カイ様」
「囲まれてる。敵の数が分からないから、包囲網を破って一旦街に戻るぞ」
「し、しかし、まだこれといった情報は……!」
「それは」
俺は言葉を遮った後、体内の魔力を引き上げながら言う。
「戦っているうちに、敵たちが親切に教えてくれるはずだ」
「……分かりました」
やつらと戦うだけでも、大きな情報を得られるから。
100%納得した顔じゃないけど、ここが敵陣であることを彼も知っているのだろう。特に文句は言わず、彼は位置に戻って剣を握り直した。
ここにいるレジスタンスの人たちは、全員軍の経験がある実力者たちだ。容易く死ぬはずはないし、なにより……。
「ニア、クロエ」
「うん」
「なに?」
「存分に暴れていいから」
「ふふっ、うん」
「はいよ、リーダー」
俺を含めた、この3人がいる以上。
奴らにも、決して容易い戦いにはならないはずだ。
「ぐるるぅ……ぐぁあああああああ!!」
戦闘の幕を切ったのは、カルツだった。
ヤツは聖剣から黒いオーラ―を起こしながら、噛みちぎる勢いで俺に襲い掛かってくる。
『………速い!』
直ちに両手を合わせて魔力の盾を作ったものの、ほんのちょっとでも遅れていたら危ない場面だった。
「騎士団長として命ずる!!何としてでも、こいつらを生きて帰らせるな!!」
そして、いつの間にか出てきた初老の男が、剣を振りながら攻撃命令を下す。
たちまち兵士たちが襲い掛かり、俺たちは囲まれたまま防御をするハメになった。相当不利な状況だけど………だけど、一方的にやられたりはしなかった。
「ダークサイト」
「………くおっ!?ケホッ、ゲホッ……!!」
「くぁあああああ!!!あ……ぁ…」
俺たちには、俊足の暗殺者であるクロエの活躍があり。
「ようやくこの時が来た……!やつらを殺せ!!今までの鬱憤を晴らすぞ!!怯えるな!!」
「うわぁああああ!!!殺せ、殺せ!!!」
「どいつもこいつも気持ち悪い目しやがって……くたばれぇ!!!」
思った以上に士気の高いレジスタンスたちの闘争が、劣悪な状況の突破口になってくれた。
「ぐるぁあああ!!ぐぁああああ!!」
「もう人間の声も出さねぇな、お前!!」
一方、俺はみんなに被害が及ばないようにちょっと離れたところで、カルツと戦っていた。
さすがに俺を狙って攻撃してくるやつらもいたけど、全員平等に頭に穴を空けてやった。魔力弾丸で。
しかし、こいつもうただの化け物になったな……!この前より早いだけじゃない。魔力量も断然上がって、動きも荒々しくて一撃一撃が重い。ストレートをジャブみたいにぶっ放してくる。
こいつを相手に接近戦を続けるのは不利だ。手っ取り早く終わらせないと!
『ヤツの体にある魔力はもう闇属性のもの……なるほど、何者かが膨大な魔力を注入して、ヤツを強化させたのか。なら!』
俺は一度衝撃波を放って、襲って来たカルツを弾き飛ばす。
後ろにある木が数本折れるほどの衝撃にも関わらず、ヤツはすぐさま態勢を整えて、また飛び掛かってきた。
赤い眼光には、絶対に俺を殺すという意志に満ち溢れている。伸びてくる剣。
痛くなるほど目を見開いて、その剣の動きを読んだ後―――俺は即座に、体を横に倒した。
「ぐるるっ!?!?」
間一髪の差で、俺の腰をかすめる聖剣。
そして、ヤツと俺の体が交差するその瞬間―――俺は、ヤツの胸元に手を当てた。
「ぐるっ?」
「ふぅ…………」
そして、黒魔法とは真逆の魔法を、施す。
「ヒーリングウェーブ」
間もなくして、俺の手が白く光り始めた。
手のひらから伝わる波のような神聖魔法が、ヤツの体を内側から焦がしていく。
「ぐるっ!?くぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
壮絶な悲鳴が上がって、戦っているみんなさえ一瞬動きを止めてしまった。
この世界で授かった、俺の固有スキル―――境界に立つ者。相手のスキルを奪える詐欺スキル。
まさか、アルウィンから治癒魔法を盗んでもらったことが、こんな風に役に立つなんて思わなかった。
ヤツの体は黒魔法の、闇属性の魔力で動かされている。いわゆるアンデッドに近い状態だ。
そして―――ゲームでもそうだけど、アンデッドモンスターは神聖魔法に致命的に弱い。
たとえ相手が、生前にその神聖魔法を駆使していた勇者だとしても。
「があぁああああ!!くるっ、くるぅあああああああ……あ、あがっ……!!」
あまりの痛みに気絶したのか、カルツはそのままパタンと倒れてしまった。
俺は念のため、ヤツの胴体に魔力で作った剣をぶっ刺す。体を貫く感覚が確かにあった。
それから、俺はさっそくみんなのところへ合流した。
「ふぅ、ふぅ……さすがに多すぎじゃん!なに、これ……!」
「死を恐れるな!!お前らはどうせまた生き返る!!皇子様のために、帝国の未来のために!!お前らのすべてを捧げろぉお!!」
クロエが辟易としている中、敵のリーダーっぽい初老の男が大声で兵士たちの士気を上げた。
その言葉を聞いて、二つのことが分かった。一つは、敵がみんな生き返られると強く信じていること。
そして二つは、戦っている兵士たちの士気を心配しなきゃいけないほど、精神操作が強くないこと。
だって、そうじゃないか。精神操作が完璧なら、なにを言われても機械的に敵を抹殺しようとするはずだ。だけど―――兵士たちの動きを見る限り、ほんのわずかだけど人間性が残っているように見える。
「カイ、大技の準備できた」
「ありがとう、ニア。みんな!!俺のところに集まれ!!クロエも、早く!!」
俺はただちにしゃがんで、両手を地につけて魔力を注入する。
間もなくして黒い幕みたいなものが出来上がり、ドームみたいな形で俺たちを囲った。
それを見たレジスタンスの人たちも、クロエも急いでこの魔法陣の中に入ってくる。
そして、それと同時に―――
「………全員、死ね」
巨大な闇が、空を覆った。
「ギガ・デスペアー」
カルツの登場と共に、帝国軍がちらほらと姿を見せ始める。彼らの目も全員、赤色だった。
なるほど、すべて精神操作されてるのか。それを確認した後に、俺はレジスタンスのリーダーに手招きをする。
「はい、カイ様」
「囲まれてる。敵の数が分からないから、包囲網を破って一旦街に戻るぞ」
「し、しかし、まだこれといった情報は……!」
「それは」
俺は言葉を遮った後、体内の魔力を引き上げながら言う。
「戦っているうちに、敵たちが親切に教えてくれるはずだ」
「……分かりました」
やつらと戦うだけでも、大きな情報を得られるから。
100%納得した顔じゃないけど、ここが敵陣であることを彼も知っているのだろう。特に文句は言わず、彼は位置に戻って剣を握り直した。
ここにいるレジスタンスの人たちは、全員軍の経験がある実力者たちだ。容易く死ぬはずはないし、なにより……。
「ニア、クロエ」
「うん」
「なに?」
「存分に暴れていいから」
「ふふっ、うん」
「はいよ、リーダー」
俺を含めた、この3人がいる以上。
奴らにも、決して容易い戦いにはならないはずだ。
「ぐるるぅ……ぐぁあああああああ!!」
戦闘の幕を切ったのは、カルツだった。
ヤツは聖剣から黒いオーラ―を起こしながら、噛みちぎる勢いで俺に襲い掛かってくる。
『………速い!』
直ちに両手を合わせて魔力の盾を作ったものの、ほんのちょっとでも遅れていたら危ない場面だった。
「騎士団長として命ずる!!何としてでも、こいつらを生きて帰らせるな!!」
そして、いつの間にか出てきた初老の男が、剣を振りながら攻撃命令を下す。
たちまち兵士たちが襲い掛かり、俺たちは囲まれたまま防御をするハメになった。相当不利な状況だけど………だけど、一方的にやられたりはしなかった。
「ダークサイト」
「………くおっ!?ケホッ、ゲホッ……!!」
「くぁあああああ!!!あ……ぁ…」
俺たちには、俊足の暗殺者であるクロエの活躍があり。
「ようやくこの時が来た……!やつらを殺せ!!今までの鬱憤を晴らすぞ!!怯えるな!!」
「うわぁああああ!!!殺せ、殺せ!!!」
「どいつもこいつも気持ち悪い目しやがって……くたばれぇ!!!」
思った以上に士気の高いレジスタンスたちの闘争が、劣悪な状況の突破口になってくれた。
「ぐるぁあああ!!ぐぁああああ!!」
「もう人間の声も出さねぇな、お前!!」
一方、俺はみんなに被害が及ばないようにちょっと離れたところで、カルツと戦っていた。
さすがに俺を狙って攻撃してくるやつらもいたけど、全員平等に頭に穴を空けてやった。魔力弾丸で。
しかし、こいつもうただの化け物になったな……!この前より早いだけじゃない。魔力量も断然上がって、動きも荒々しくて一撃一撃が重い。ストレートをジャブみたいにぶっ放してくる。
こいつを相手に接近戦を続けるのは不利だ。手っ取り早く終わらせないと!
『ヤツの体にある魔力はもう闇属性のもの……なるほど、何者かが膨大な魔力を注入して、ヤツを強化させたのか。なら!』
俺は一度衝撃波を放って、襲って来たカルツを弾き飛ばす。
後ろにある木が数本折れるほどの衝撃にも関わらず、ヤツはすぐさま態勢を整えて、また飛び掛かってきた。
赤い眼光には、絶対に俺を殺すという意志に満ち溢れている。伸びてくる剣。
痛くなるほど目を見開いて、その剣の動きを読んだ後―――俺は即座に、体を横に倒した。
「ぐるるっ!?!?」
間一髪の差で、俺の腰をかすめる聖剣。
そして、ヤツと俺の体が交差するその瞬間―――俺は、ヤツの胸元に手を当てた。
「ぐるっ?」
「ふぅ…………」
そして、黒魔法とは真逆の魔法を、施す。
「ヒーリングウェーブ」
間もなくして、俺の手が白く光り始めた。
手のひらから伝わる波のような神聖魔法が、ヤツの体を内側から焦がしていく。
「ぐるっ!?くぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
壮絶な悲鳴が上がって、戦っているみんなさえ一瞬動きを止めてしまった。
この世界で授かった、俺の固有スキル―――境界に立つ者。相手のスキルを奪える詐欺スキル。
まさか、アルウィンから治癒魔法を盗んでもらったことが、こんな風に役に立つなんて思わなかった。
ヤツの体は黒魔法の、闇属性の魔力で動かされている。いわゆるアンデッドに近い状態だ。
そして―――ゲームでもそうだけど、アンデッドモンスターは神聖魔法に致命的に弱い。
たとえ相手が、生前にその神聖魔法を駆使していた勇者だとしても。
「があぁああああ!!くるっ、くるぅあああああああ……あ、あがっ……!!」
あまりの痛みに気絶したのか、カルツはそのままパタンと倒れてしまった。
俺は念のため、ヤツの胴体に魔力で作った剣をぶっ刺す。体を貫く感覚が確かにあった。
それから、俺はさっそくみんなのところへ合流した。
「ふぅ、ふぅ……さすがに多すぎじゃん!なに、これ……!」
「死を恐れるな!!お前らはどうせまた生き返る!!皇子様のために、帝国の未来のために!!お前らのすべてを捧げろぉお!!」
クロエが辟易としている中、敵のリーダーっぽい初老の男が大声で兵士たちの士気を上げた。
その言葉を聞いて、二つのことが分かった。一つは、敵がみんな生き返られると強く信じていること。
そして二つは、戦っている兵士たちの士気を心配しなきゃいけないほど、精神操作が強くないこと。
だって、そうじゃないか。精神操作が完璧なら、なにを言われても機械的に敵を抹殺しようとするはずだ。だけど―――兵士たちの動きを見る限り、ほんのわずかだけど人間性が残っているように見える。
「カイ、大技の準備できた」
「ありがとう、ニア。みんな!!俺のところに集まれ!!クロエも、早く!!」
俺はただちにしゃがんで、両手を地につけて魔力を注入する。
間もなくして黒い幕みたいなものが出来上がり、ドームみたいな形で俺たちを囲った。
それを見たレジスタンスの人たちも、クロエも急いでこの魔法陣の中に入ってくる。
そして、それと同時に―――
「………全員、死ね」
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