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番外編 クルミ
ライ
しおりを挟むじじ達はすぐに見つかると言っていたけれど、結局見つからないまま時間ばかり過ぎる。
「ライ、羽の調子はどう?」
「かなりいい。この国の医療はすごいな。うちの国があんな状態じゃなければ直ぐにでも留学に来たいぐらいだ」
王宮庭園を歩きながらライが言う。
ライは医療に興味があるのかな。
みんなすごい。
「来たらいいじゃん、全部終わったら」
だるそうに言う秋にライが破顔する。
ライは凄い。何回か会って話しただけで人の懐に入っていく。仲良くなっていく。友達すらめんどくさがる秋まで。
「ああ!来れたらいいなぁ!またシュウにもクルミ姫にも会える!」
はにかみながら嬉しそうに笑うライは、笑った時だけ少し幼く見える。
情勢はどんどん悪くなっているのを私達はみんな知ってる。でも誰も何も言わない。
軍が手助けは出来ない。そんな事したらエルダゾルク神の怒りに触れる。
秋が1人行くだけで、戦況はひっくり返るというのに。
◇◆◇
「いらっしゃい!」
ライがここに来て三週間になる。
母様が兄様たちの為にご馳走を作ると言うので、ライも招待した。
少しでも気晴らしになればと思って。
「姫はお母上似なのですね、お美しいです。妃殿下」
母様は社交辞令に喜んで舞い上がり、レスター兄様が呆れた顔をする。
父様がいなくてよかった。ライが殴られる所だった。
クロム兄様はお仕事だそうで今回は来られなかった。あれ以来お会いできていない。好きな物探しにはちょうどいいのかもしれないけど。
ライは離れの天馬達の数に驚いて腰を抜かし、何度もケイとエレノアに謝って、もしあの仔馬にあったらくれぐれも謝っておいてくれと頼んでいた。
皆んなで手巻き寿司なる物をたべた。
コーネルに海はないからこんな美味しいもの初めて食べたと、ライは目を輝かせて食べ、母様が嬉しがってあれもこれもと出してしまい皆お腹がパンパンになった。
手巻き寿司は私だけ上手く巻けなくて、母様にやってもらうという大失態を見せただけだった。おいしかったけど。
「ライは帝王学おわったか?」
食後のお茶を飲みながらレスター兄様が聞く。
王太子同士気が合うのか、いつのまにかレスター兄様も既にライに気安い。
「いや?物心ついた頃には内乱が起こっていたからな。俺らの教育などあってない様なもんだった。全て終わったら、どこかの学校に入りたい」
「ふぅーん、うちに来たらいいんじゃね?王太子じゃ無理か?いや、王太子のうちならいけるか」
レスター兄様が秋と同じ事を言い、ライがまた笑う。
全て終わるという事は決着がつくという事。戦況は思わしくない。きっとそんな未来は来ない事をみんなわかってる。わかってるけれど心だけでも楽しくできる様に、少しでも夢が見られる様に言葉を紡ぐ。
「エルダゾルクはいい国だな、人々は笑顔で安心して暮らしていて、王族は驕らない」
「俺の国だからな。ライの国もライがおさめるならいい国になるだろ」
ライはポカンとした後また破顔する。
「その時は……友好国に……なってくれ」
声が少し震えてる。泣いているのかもしれない。皆、気がつかないふりをする。
「まかせろ、トーナメントやるぞ!」
「お手柔らかに頼む」
「僕はめんどいから出ない」
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