69 / 173
婚姻編
婚礼の儀
しおりを挟む神社の境内にある屋外の能舞台の様な立派な瓦屋根のついたステージに、式典用のシルバーの軍服を着たリヒト様がエスコートしてくれる。
白無垢と、十二単を合わせた様な真っ白な花嫁衣装を着た私は彼の手を取って静々と歩く。
四角い舞台の周りでは、招待客達が私達を見上げてる。
「すげぇ綺麗だよ」
リヒト様はそう言って舞台上に一段高く設置された縁が金色の畳の上に私を座らせ、その横であぐらをかいて座ると楽団の笛の音がやんだ。
白金の中華風の着物を着た陛下が私達の前に立ち、片手をだして何か魔力を込めたようだった。
空中に金の文字が浮かび、リヒト様が手をかざすと下の方にリヒト様の署名が浮かぶ。目線で合図されたので、私も同じ様にすると紬•玲林となぜか漢字で浮かんだ。もしかしたら神様に言語は関係ないのかもしれない。
最後に陛下の署名が浮かんでキラキラと金のカケラになって天に消えていくと、陛下の前に宙に浮いた金の指輪が二つ出現した。
番の結婚に神様からの贈り物なんだと聞いた。
神様がプレゼントくれるなんてすごい。
どっと招待客の貴族達が湧く。
指輪の交換がなされて、天国の両親も見てるだろうかと思ったら泣けてきてしまって、一番前でアイラさんに抱っこされたクロム君がオロオロしているのが見えた。
「お父さん、お母さん、私、大好きな人と結婚できたの。これからも見ていてね」
空を見て呟くと、白金の魔法陣が上空に現れてゆっくりと消えていくのが見えた。私が召喚された時と同じ魔法陣だなと、ぼんやり思っていると、隣でリヒト様が左右の床に拳を付けて頭を下げるこの国の最敬礼の礼をとった。
この人の、こういう所が好きだと思う。
私の気持ちにいつも寄り添ってくれる。
陛下の持った榊から、盃に雫が垂らされて、リヒト様が恭しくそれを飲んで婚姻の儀は終了した。
「ツムちゃん!ここからが勝負よ♡殿下だけじゃなく招待客みんなが度肝をぬかれるわよ~~~♡」
控え室に帰るとスカーレットさんが手をワキワキとさせて待っていて、その横でルルリエさんがドン引きしている姿が見えた。
「はい!たぶん後から怒られますけど!!」
「いいのよ!婚儀は花嫁が主役よ!!ね?ルルちゃん!」
急にふられたルルリエさんが、スカーレットさんにドン引きしつつも苦笑してる。
「じゃ、行くわよ~~♡」
スカーレットさんと、その部下達が私を着替えさせていく。本当はここからの披露宴は伝統的な天女風衣装を着るらしい。
でも私の作ったのはウェディングドレス。しかも肩のガッツリ出るマーメイドシルエット。マーメイドの部分が丸く広がると裾のレースとパールがキラキラしてとっても綺麗だ。
髪をふわふわにセットしてもらって、ハーフアップに編み込んでもらう。編み込んだ所に薄いピンクの蓮の花をあしらってもらった。
最後に長いヴェールを蓮の花から垂らしてもらった所でアイラさん改めお母さんが部屋に入ってきた。手には百合の花で作ったブーケを持ってる。
「おやまぁ、ハイカラだねぇ。娘が可愛いと私も鼻が高いよ。さぁ、行こうかね」
お母さんからブーケを受け取り、サムズアップしたスカーレットさん達に送り出されて控え室を出た。
神様はいるのに教会はないのでチャペル風にはできなかったけれど、お母さんにエスコートされてすぐそこの披露宴会場の庭まで歩く。
バージンロードはないけれど、お母さんには説明をしてリヒト様の所まで一緒に歩いて欲しいとお願いしたのだ。
お母さんは笑って「一緒におこられてやるよ」と快諾してくれた。
私が会場に入ると楽団の音楽が変わり、皆の視線が集まったのが分かった。
リヒト様が振り向いてギョッとした顔をするのが見えて苦笑する。
ユアンさんにも事前に説明してあるので、リヒト様がエスコートに駆け寄るのを制止してくれたのが見えた。
お母さんと静かに並んで歩く。
リヒト様の手前で止まって、お母さんが私の右手をリヒト様に託してくれた。
「私の娘を泣かすんじゃないよ」
「承知した。貰い受ける」
儀式でもないし、なあなあになってしまうのはしょうがないかなと思っていたのでリヒト様のセリフが嬉しくてまたちょっとだけ涙が出た。
「怒った?」
「花の精が出てきたかと思った」
「ふふふ、あとで怒られてあげる」
「仕置きだな。俺の得意なやつ」
溶けちゃうみたいな顔。私を甘やかす顔。
「どんな時でもエロ竜…………」
「ふぁああああああ、つむぎちゃん、天使いいい!!」
「妃殿下、綺麗……素敵……」
クレアちゃんとレアットちゃんが駆け寄ってきてくれた。クレアちゃんは結局ルース君の贈った着物を着なかったみたい。好きでも、怖いし申し訳ないと言ってた。ルース君は全然諦めてないみたいだけれど。
「つむぎ、仕置きは後だ。まずは兄上への挨拶と貴族からの挨拶地獄だ」
「はぁい」
その陛下は王族席から杯を持ったままこちらに歩いてきてしまっている。威厳も何も無い感じが陛下らしい。
「つむぎちゃ~ん!最高に可愛い!僕の天使!!」
「兄上のではありません」
「ふふ、ありがとうございます。婚儀も陛下のおかげでつつがなく終えることが出来ました」
「り、リヒト、頼む、ちょっとだけ、ちょーーーっとだけ紬ちゃんを王妃席に座らせてもいい?目に焼き付けるから!!!」
「駄目です」
でたな駄目です攻撃。これしか言わなくなるんだよなぁ。
「一瞬!一瞬だけ!!!一生のお願い!!!」
「駄目です。紬、次行くぞ」
お、おう、陛下への挨拶、これで強制終了させるつもりだな……
2,285
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる