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家族編
レスターお披露目パーティー2
しおりを挟むホール奥に二階席の王族席があり、レスターと同じ金の刺繍の衣装の陛下と、息子を抱いたシルバーの式典用の軍服のリヒト様がいる。
「此度は私の甥、レスター• リア• エルダゾルクの為に集まってもらった事、感謝する。神の血筋は引き継がれ、世界の安寧がつづく事と同意である」
陛下の言葉に皆が頭を下げる。
いろんな国の人がいるから、エルダゾルク式ではなく、頭を垂れるだけになるみたいだ。
レスターを抱いたリヒト様が豪華な階段を降りてきて、誕生の時に陛下から頂いた刀を用意されていた台座に縦に立つようにダンッとはめた。
皆の頭がより深く深く下がる。
「竜国王家に神の子を迎えた事、ラズウェルにおわす神々に奏上する。レスター!」
レスターがリヒト様の手から飛んで、刀に触ると、手からバチバチっと雷が出て、ズドーーーーン!!!と落雷の逆、刀から空に向かって稲妻が登っていった。
大きな円状にくり抜かれた天井から、空に登って行く龍のような稲妻を皆が見上げ、歓声を上げる。
うちの子あんな事できたんだ。すごいな。母上しらなかったぞ!
音楽がはじまり皆が歓談を始める。各国のいろんな文化に対応する為か、ダンスホールではダンスが始まっていた。
「クロム君、おいで?」
臣下の前だからかやや離れ気味のクロム君を呼ぶと戸惑いながらも近くにふよふよと飛んできたけれど、抱きついては来なかった。
「クロム君が腕の中にいないと寂しいな~」
今日は近くにミリーナさんもいないし、怒られやしないはず!
母上呼びだってみんなもう知ってるしね。
「はは、うえ……」
私の前にふよふよと浮いているクロム君の手を取って、立食ブースに向かう。
ちらっとレスターを見ると、リヒト様に抱かれて各国の要人に挨拶をさせられているみたいだった。
「レスターはリヒト様といるし、クロム君は私とデートしようか」
「ん、でと、しゅる」
小さな小さなシルバーの軍服を着た美少年に悶絶する!
いろんな文化に対応できるように世界中の料理が並んでる。シンプルな味付けなのは変わらないけれど、新しい食材や、日本と同じ食材を見つけるチャンスだ。
「クロム君!これタコだ!たこ焼きできるかな!?あ、ソースと鰹節がない!!」
「ははうえ、肉まん、ない」
「ふふふ、ないねぇ。お部屋にかえったら食べようか。きっとレスターもお腹減らしてるね」
小さなお口にカナッペを入れてやると素直に食べ始めて可愛い。
レスター達の挨拶はまだまだ行列になっている。
ユアンさんが私とクロム君をカーテンで仕切られた私専用の休憩スペースにつれていってくれたので、そこでおもいっきりくつろいでクロム君と小さなパーティーをして楽しんだ。
誰も見ていないのをいいことにクロム君を抱いてソファーにすわり、お昼寝までしてしまった。ばっと起きた時、パーティーが終わってしまったんじゃ無いかと慌ててまだ寝ているクロム君を抱いて休憩スペースを出ると、入り口をユアンさんとルース君が物々しく警護していた。
「紬嬢、あまり出歩かないよう……」
「そうなの?危ない?クロム君もいるよ?飲み物とってくる」
まぁ、クロム君は寝てるけど。
沢山のグラスに色とりどりのフルーツのジュースが並べられている。
ジュースを取りに行くだけなのに、ユアンさんとルース君は律儀についてくる。
ジュースのテーブル前でどれにしようか迷っていると、鈴の鳴るような可愛らしい声が私にかかった。
「あら、正妃が孤児をこれみよがしに大事にしてるって本当でしたのね?嫌だわ、置いてきてくださらない?私、あなたとは上手くやっていきたいと思っていますの」
艶のある白髪がふわふわと揺れる。
白い三角の耳が可愛らしく、透明感って言葉はこの子の為にあるような儚げな様子に思わず魅入ってしまう。ペルシャ猫みたいだなと思って、猫というワードに引っかかった時、ザッとユアンさんとルース君が私の前に出る。
二人の出す緊張感に、あ、この人が猫の国のお姫様かと納得した。
「下がって頂きたいわ?私は王族よ?ただ正妃様とお話しするだけよ。ねぇ、正妃様、よろしいでしょう?」
周りの要人や貴族が注目してるのが分かる。
断るという選択肢はとれなそう。
「ええ」
短く答えて出方を待つ。ユアンさん達の警戒する気配にクロム君が起きたのが分かった。
「ユトミア国第三王女シルヴィアでございます。正妃様より歳は一つ下なんですの。楽しくおしゃべりいたしましょう…………と言いたいところですが、それ、護衛か侍女にでも預けていただけないかしら?私の視界に入れたく無いの」
それって何だ?指示語じゃわからん!と思ったけれど、彼女の持つ金の扇がピタリとクロム君を指している。腹立つ猫だな!
「ははうえ、ぼく、おうち、いく」
「いいの、クロム君は私のそばにいて?」
クロム君が迷う仕草を見せる。
自分のせいで私が責められていると思っているのだろう。腕に力を込めて、ぎゅうと抱きしめる。
ユアンさんもルース君も、猫の姫というより、私の行動や言葉に警戒している節がある。常にどちらかの視線が私にあるもの。理由はわからないけれど。
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