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最終章 人族編
珍しく
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「ゔぅっ、……っつ………………」
痛みで顔を伏せる私を心配そうに二人の息子が見てくる。
「俺の事を考えるときに痛むのだろう……悪い、それでも、俺のことを諦めないでほしい。頼む、つむぎ」
殿下…………?リヒト様……?リヒ、ト、様?
「親父!やめてくれ!!母上が可哀想だ!」
レスターが叫ぶ。彼そっくりの、レスターが。
いつのまにか彼の膝の上に立つレスター。
クロム君も彼の肩に乗ってる。
「思い出さなくてもいい…………また、一から始めればいい。俺はお前を離してやれない」
痛みで顔を覆う私の頭を撫でて髪をすく仕草が心地いいと感じてしまう。
そのままベッド脇に腰掛けて、私の肩を撫で、
するりとおりた大きな逞しい手が私の腰を抱く。
————腰を抱く大きな手。
「嫌っ!!!!!!!嫌!!!!」
腰に回された手を振り解く。
驚愕の顔をした彼と目が合う。
脳裏に映る、彼がお姫様みたいな女性の腰を抱く映像——————。
「あなたには他にも女性がいるのでしょう!?もうここには来ないでください!!!」
「っ———、そんな女はいない!!!つむぎだけだ!!!」
————それは、嘘だ。鮮明に映ったあの映像は本物だったはず。
「……嘘つきは、嫌い」
「母上!母上!!親父からの匂いにあの皇女の物はありません!王族として伯父上の元にエスコートしただけです!俺も、兄上も、最近貴族教育が始まりましたのでわかります!あの場であの皇女をエスコートできたのは親父か俺しかおりませんでした!皇女の国のエスコートをする必要があるのです!珍しく親父は無実です!」
「おい、クソガキ、珍しくとはなんだ」
「本当の事だろうがクソ親父!いつもいつも母上を泣かせやがって!」
「あるじ、無実。けど、泣かせすぎ」
「お前ら………………」
きょとんと三人の喧嘩を見る私を優しい紺色の瞳が捉える。金の虹彩がトロッととける。
「つむぎ、俺はおまえを愛してる。俺の立場がお前を苦しめて悪かった」
「母上、今回は珍しく親父は無実です」
「ははうえ、あるじ、めずらしい」
「クソガキども……はやく寝ろ!!!!」
ふよふよと絡みながら飛び部屋を出て行く子供達を見送ると、彼と私の二人だけになってしまった。きまずいから嫌なのに。
「つむぎ、抱きしめていいか。虎の匂いを消したい」
「嫌」
わたしの返答にフッと笑って頭を撫でてくる。
「あの虎野郎は、お前のタイプだろ」
「リオネルさん?」
私が名前を言っただけで彼の額に青筋が浮かぶ。
「あーゆう、誠実そうなやつ」
「まぁ、そう……かも……」
急に意地悪を言いたくなってしまう。
別にリオネルさんのことは何とも思っていないのに。
ビキビキッと音がするかのように、青筋が増える。
「お兄さんは、あのお姫様とお似合いでしたよ」
「俺には、お前だけだ」
間髪を入れずに返事が返ってくる。
「つむぎ、たのむ。匂いを上書きしたらすぐ離すから」
「嫌」
ぐぅっと喉がなる音がして、お兄さんが奥歯を噛んでいるのがわかる。
「そのまま寝んの?まじ無理…………」
「嫌」
「つむぎさん……頼みます…………」
「嫌」
スタンプみたいに同じ言葉を口にすると、お兄さんはどんどん慌てていく。
「い、一回だけ、少しでも……」
「駄目」
「じゃあせめてシャワー……」
「今日はだれかさんのせいで疲れたから明日入る」
「………………………うそだろ……」
「ふふ、あははは」
青筋をたてながら慌てて真っ青になるという器用な芸当が面白くて笑ってしまう。
驚いた顔で私を見る顔に覚えがある。
私はこの人を知ってる。
思い出せないだけで。
「キスなら……」
「もっと駄目」
「ぐぅっ…………………」
私の返答が“ 嫌 ”じゃなくなったことにこの人は気づいているのだろうか。
「子供達にさせたら?」
「その手があったか!!!!」
弾けるように立ち上がり、居間のソファーで寝ていた二人の子竜の首根っこを持ち私の胸元に押し付けてきた。
寝ぼけた二人が私の首や体にスリスリと頬擦りしてくる。
暖かく、ミルクとお日様の匂い。
ふにゃふにゃとした二人の寝顔。
幸せの塊。
ホッとした顔の彼が私の頭をなでて、
「また来る」といい残して部屋を出て行った。
名残惜しい、と感じてしまい目線で彼の背中を追う自分に驚いた。
痛みで顔を伏せる私を心配そうに二人の息子が見てくる。
「俺の事を考えるときに痛むのだろう……悪い、それでも、俺のことを諦めないでほしい。頼む、つむぎ」
殿下…………?リヒト様……?リヒ、ト、様?
「親父!やめてくれ!!母上が可哀想だ!」
レスターが叫ぶ。彼そっくりの、レスターが。
いつのまにか彼の膝の上に立つレスター。
クロム君も彼の肩に乗ってる。
「思い出さなくてもいい…………また、一から始めればいい。俺はお前を離してやれない」
痛みで顔を覆う私の頭を撫でて髪をすく仕草が心地いいと感じてしまう。
そのままベッド脇に腰掛けて、私の肩を撫で、
するりとおりた大きな逞しい手が私の腰を抱く。
————腰を抱く大きな手。
「嫌っ!!!!!!!嫌!!!!」
腰に回された手を振り解く。
驚愕の顔をした彼と目が合う。
脳裏に映る、彼がお姫様みたいな女性の腰を抱く映像——————。
「あなたには他にも女性がいるのでしょう!?もうここには来ないでください!!!」
「っ———、そんな女はいない!!!つむぎだけだ!!!」
————それは、嘘だ。鮮明に映ったあの映像は本物だったはず。
「……嘘つきは、嫌い」
「母上!母上!!親父からの匂いにあの皇女の物はありません!王族として伯父上の元にエスコートしただけです!俺も、兄上も、最近貴族教育が始まりましたのでわかります!あの場であの皇女をエスコートできたのは親父か俺しかおりませんでした!皇女の国のエスコートをする必要があるのです!珍しく親父は無実です!」
「おい、クソガキ、珍しくとはなんだ」
「本当の事だろうがクソ親父!いつもいつも母上を泣かせやがって!」
「あるじ、無実。けど、泣かせすぎ」
「お前ら………………」
きょとんと三人の喧嘩を見る私を優しい紺色の瞳が捉える。金の虹彩がトロッととける。
「つむぎ、俺はおまえを愛してる。俺の立場がお前を苦しめて悪かった」
「母上、今回は珍しく親父は無実です」
「ははうえ、あるじ、めずらしい」
「クソガキども……はやく寝ろ!!!!」
ふよふよと絡みながら飛び部屋を出て行く子供達を見送ると、彼と私の二人だけになってしまった。きまずいから嫌なのに。
「つむぎ、抱きしめていいか。虎の匂いを消したい」
「嫌」
わたしの返答にフッと笑って頭を撫でてくる。
「あの虎野郎は、お前のタイプだろ」
「リオネルさん?」
私が名前を言っただけで彼の額に青筋が浮かぶ。
「あーゆう、誠実そうなやつ」
「まぁ、そう……かも……」
急に意地悪を言いたくなってしまう。
別にリオネルさんのことは何とも思っていないのに。
ビキビキッと音がするかのように、青筋が増える。
「お兄さんは、あのお姫様とお似合いでしたよ」
「俺には、お前だけだ」
間髪を入れずに返事が返ってくる。
「つむぎ、たのむ。匂いを上書きしたらすぐ離すから」
「嫌」
ぐぅっと喉がなる音がして、お兄さんが奥歯を噛んでいるのがわかる。
「そのまま寝んの?まじ無理…………」
「嫌」
「つむぎさん……頼みます…………」
「嫌」
スタンプみたいに同じ言葉を口にすると、お兄さんはどんどん慌てていく。
「い、一回だけ、少しでも……」
「駄目」
「じゃあせめてシャワー……」
「今日はだれかさんのせいで疲れたから明日入る」
「………………………うそだろ……」
「ふふ、あははは」
青筋をたてながら慌てて真っ青になるという器用な芸当が面白くて笑ってしまう。
驚いた顔で私を見る顔に覚えがある。
私はこの人を知ってる。
思い出せないだけで。
「キスなら……」
「もっと駄目」
「ぐぅっ…………………」
私の返答が“ 嫌 ”じゃなくなったことにこの人は気づいているのだろうか。
「子供達にさせたら?」
「その手があったか!!!!」
弾けるように立ち上がり、居間のソファーで寝ていた二人の子竜の首根っこを持ち私の胸元に押し付けてきた。
寝ぼけた二人が私の首や体にスリスリと頬擦りしてくる。
暖かく、ミルクとお日様の匂い。
ふにゃふにゃとした二人の寝顔。
幸せの塊。
ホッとした顔の彼が私の頭をなでて、
「また来る」といい残して部屋を出て行った。
名残惜しい、と感じてしまい目線で彼の背中を追う自分に驚いた。
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