【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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最終章 人族編

ジジイ1〜3

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「ん~~、久々の労働!!足が棒だよー!!」

 結局あのままお試しで四時間ほど働かせてもらった。
パン種をこねたり、お客さん対応をしたりとバタバタしていたらあっという間に夕方になっていた。

 クロム君とレスターはお爺さん達に遊んでもらっていたようで、とてもいい子にしていてくれた。

 これなら長く続けられそうだ。

 家まで送ると言い張るリオネルさんに、
「お前より我ら兄弟の方が何百倍も強いのは分かるだろう」と超失礼な事を言ったレスターを叱り、きっと寂しくなっちゃったのだろうから、親子で帰りますと断って家までの道を歩く。

「二人はどうだった?お爺さん達と楽しく遊べた?」

「ジジイ1は姑息な手を打ちます。イカサマ師です。ジジイ2は正攻法を取りますが、ジワジワと追い詰めるのを楽しむ性悪です。ジジイ3はこれが一番タチが悪い。奇天烈な手をうっては自分で修正を繰り返す天才型です」

「…………………………」何その感想。こわ。

「く、クロム君はどうだった?」

「チェス、たのしい」

 そうそう、こういう感想を求めていたのよ!

「よかったねぇ!お爺さんには勝てなかった?」

「ん?勝った。おじいの手、いつも一緒」

「……………………………………」

 いかん、この二人いつか追い出されそう。
わ、話題を変えよう。

「お給料がはいったら、厨房を借りてケーキを作ろうか。イチゴと、クリームの乗ったやつ!」

「ケキ!!」
「はい!!」

 ほっ、良かった。
田舎の真っ暗な道を三人で歩く。クロム君は私の腕の中。レスターは私の肩あたりを飛ぶ。

 レスターが魔法で灯りを灯してくれる。
懐中電灯みたいにするのかな?と思ったら、道々に灯る光の玉を沢山出して、幻想的な風景の中を歩いている。灯篭祭りのようでとても綺麗。

「レスターすごい!とっても綺麗……」

「母上がお気にめしたのでしたら、家の庭にも毎日出しましょう。兄上なら色付きも出来ますよ!」

「ふふ、ありがとう。こんどお庭にも灯してお庭でミルクを飲もう!蜂蜜たっぷりの!夜のパーティーだね!」

 レスターとクロム君が顔を見合わせて笑う。
この子達のこの笑い方が好きだ。
本当に嬉しい時にする仕草なのがわかるから。

————「俺も入れてくれ、紬」

 前方から低い、優しい声がかかり、お兄さんの声だとすぐにわかる。

「心配した」

「心配されるような事はしてないよ?」

「……………………送っていく」

 ストンとお兄さんの肩の上に乗ったレスターを認めて頷く。

「疲れたなら、抱いていくか?」

「そういうのは、大丈夫」

「…………………………」

 ジワジワとだけれど記憶は戻りつつあると思う。
お兄さん本人の事は思い出せないし、離れがどんなところだったかも思い出せないけれど、パーティーの事とか、皇女様の事とか、脳裏に浮かんだ鮮明な映像から記憶のピースが戻ってきている感覚はある。

「お姫様達は、まだ王宮にいるの?」

「ああ、兄上との相性をみたりと、色々あるからな」

「そうなんだ」

————「あの中に伯父上の相手はいないぞ親父」

 あー、そうだったレスターは女神アフネスの加護が遺伝しているんだった。
そんな風に分かるものなのか。やっぱり私より加護の力が強い。

 目を見開いて固まったお兄さんに苦笑する。

「他のご令嬢の中にはいるの?レスター」

「いませんね。伯父上は………………母上なので」

 お兄さんがまた固まる。

「私?やっぱり王家の象徴華のせい?」
私の肩にある梅の花のあざ。
子供達に聞いたら、王家の象徴華だと教えてくれた。
王家と縁がある人間に現れる、と。

「いえ、伯父上はただ単に好みにうるさいだけです。ポンコツなくせに」

「これから竜人のお相手が分かった時は教えてくれる?」

「?かまいませんが、何人もいたり、日々強弱があったりと個人によって様々ですよ?」

「それでも。お願い」

「畏まりました。因みに、母上ほどじゃありませんが、伯父上の相手だと思った女性が一人過去にいました。次に見た時はもうそんな感じはしませんでしたが」

「誰だ!!!?」

 固まって止まってしまっていたお兄さんが弾かれたように叫ぶ。
気になるよねぇ、やっぱ。

「しらん!!俺がいちいち宮中にいる女の顔と名前を知るわけねぇだろうが!親父とは違うんだよ!!」

「ぷっ!!あはははははは!そうだね、レスターはお兄さんとは違って一人の女の子をちゃんと大切にしそう」

「………………………………俺だって」

「八股男が何言ってんの」

 あれ?スルッと出てきた単語に自分でビックリする。

「え?お兄さん、八股かけていたの?それは、すごいですね。私もその中に?」

「思い出すの、そこからかよ………………最悪だ…………」

「自業自得だろうが!!」

「あははは、二人はいつも喧嘩してるねぇ」

 田舎道を四人で歩く。
幸せだな、と、感じる自分がいる。





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 ▶︎▶︎【あとがき】


レスターが感じた陛下の相手は、リヒトの仮後宮に入ったばかりだった六番目のご令嬢です。

あのややぽっちゃりの、リヒトの相手の中では毛色の違った若いご令嬢。

レスターが少しだけ縁があるなと感じた後に、子爵令息と婚約がまとまっています。

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