19 / 20
19
しおりを挟む
居並ぶ歴戦の名将たちも、さすがに固唾を呑んで、一同声もない。
エリオ王子は、真正面の父であるゲオルグ王だけを見つめ、あくまで静々と歩を進めて列席の貴族たちの間を縫った。その後を、目線を伏したペルネ公が続いた。
エリオ王子は、ゲオルグ王に一礼をすると、踵を鳴らすように反転し、一同へ声を掛けた。
「こたびの騒動は、わが父の弟気味の謀反ということで、言うなればサーベンフェルツ家のお家騒動。恥ずかしく思う」
エリオ王子は、列席の一同へ一礼したが、一同はそれを遠慮し、皆、目を伏せた。
「なれど、幸いにして、災いを事前に察知し、早々に種火は消した。以後は、二度とこのようなことはないと確信する」
今度は一礼を省いて、エリオ王子は一同を見渡した。列席たちは一人残らずエリオ王子の目を見つめ、それぞれに力強く点頭した。
「さて、私と共にここにいるは、皆も知っての通り、ハランド公のご子息。ペルネ公である」
言うまでもない。この列席の中で、彼のことを知らぬ者はいないのだ。
「ペルネ公と私は、幼少期からの親友である。親族でもある。だがしかし、私はこたびの謀反について、彼への親友と、また親族という関係を捨てて、司法卿サウザリアとともに、ペルネ邸に入って厳正に調査した」
サウザリアとは、サーシェン国において鬼の司法官と名高い裁判官である。数々の裁判をさばいてきたが、とりわけ刑事罰に掛かるその無慈悲な裁決は、ときに人の恨みを買うほどの剛腕ぶりだった。
ゲオルグ王は静かに聞いている。ペルネ公は、貴族たちの視線に耐えられぬかのように、汗を光らせ、目をただ伏せていた。左手が小刻みに震えている。
「私は王子という立場ではなく、厳正な司法官として彼を裁く。繰り返すが、親友と親族という関係は、裁きの時点で共にこれを捨てる。サウザリア卿、これへ!」
入り口の扉が開き、長髪のサウザリア卿が入ってきた。恰幅が良く、多少のふてぶてしさもある表情で、ゆっくりと歩を進めてエリオ王子に一礼した。
エリオ王子が再び語りだす。
「このサウザリア卿と共につぶさに調査した結果、ペルネ邸から謀反の疑いのある証拠は認められず、また、家中の者の態度も怪しき点なし。サウザリア卿、異論はあるか」
「ございません。私の司法人生にかけて申し上げるが、ペルネ公は、今回の謀反に関わりはないと断言してよろしいでしょう」
一同がざわつく。ハランド公がいかに王の弟はいえ、麾下の将数は知れている。そんな寡兵で、本気で国家転覆など目論もうにも無理がある。せめて、子息の槍の名手、ペルネ公の部隊でも加えなければ、とうてい、現実味のある謀反ではない。
それに、仮にペルネ公が無実だとしても、父が謀反を企て、その家族に一切のお咎めがないという前例は今までに聞いたこともないではないか。
「静粛に」
エリオ王子が一同を制した。
「ペルネ公は水晶の如く透き通った無実だ。これは揺るがないと信じる。しかし、父の謀反に息子がなんの責もないというのは貴族の義に反する。彼には相応の罪を用意した」
エリオ王子は、真正面の父であるゲオルグ王だけを見つめ、あくまで静々と歩を進めて列席の貴族たちの間を縫った。その後を、目線を伏したペルネ公が続いた。
エリオ王子は、ゲオルグ王に一礼をすると、踵を鳴らすように反転し、一同へ声を掛けた。
「こたびの騒動は、わが父の弟気味の謀反ということで、言うなればサーベンフェルツ家のお家騒動。恥ずかしく思う」
エリオ王子は、列席の一同へ一礼したが、一同はそれを遠慮し、皆、目を伏せた。
「なれど、幸いにして、災いを事前に察知し、早々に種火は消した。以後は、二度とこのようなことはないと確信する」
今度は一礼を省いて、エリオ王子は一同を見渡した。列席たちは一人残らずエリオ王子の目を見つめ、それぞれに力強く点頭した。
「さて、私と共にここにいるは、皆も知っての通り、ハランド公のご子息。ペルネ公である」
言うまでもない。この列席の中で、彼のことを知らぬ者はいないのだ。
「ペルネ公と私は、幼少期からの親友である。親族でもある。だがしかし、私はこたびの謀反について、彼への親友と、また親族という関係を捨てて、司法卿サウザリアとともに、ペルネ邸に入って厳正に調査した」
サウザリアとは、サーシェン国において鬼の司法官と名高い裁判官である。数々の裁判をさばいてきたが、とりわけ刑事罰に掛かるその無慈悲な裁決は、ときに人の恨みを買うほどの剛腕ぶりだった。
ゲオルグ王は静かに聞いている。ペルネ公は、貴族たちの視線に耐えられぬかのように、汗を光らせ、目をただ伏せていた。左手が小刻みに震えている。
「私は王子という立場ではなく、厳正な司法官として彼を裁く。繰り返すが、親友と親族という関係は、裁きの時点で共にこれを捨てる。サウザリア卿、これへ!」
入り口の扉が開き、長髪のサウザリア卿が入ってきた。恰幅が良く、多少のふてぶてしさもある表情で、ゆっくりと歩を進めてエリオ王子に一礼した。
エリオ王子が再び語りだす。
「このサウザリア卿と共につぶさに調査した結果、ペルネ邸から謀反の疑いのある証拠は認められず、また、家中の者の態度も怪しき点なし。サウザリア卿、異論はあるか」
「ございません。私の司法人生にかけて申し上げるが、ペルネ公は、今回の謀反に関わりはないと断言してよろしいでしょう」
一同がざわつく。ハランド公がいかに王の弟はいえ、麾下の将数は知れている。そんな寡兵で、本気で国家転覆など目論もうにも無理がある。せめて、子息の槍の名手、ペルネ公の部隊でも加えなければ、とうてい、現実味のある謀反ではない。
それに、仮にペルネ公が無実だとしても、父が謀反を企て、その家族に一切のお咎めがないという前例は今までに聞いたこともないではないか。
「静粛に」
エリオ王子が一同を制した。
「ペルネ公は水晶の如く透き通った無実だ。これは揺るがないと信じる。しかし、父の謀反に息子がなんの責もないというのは貴族の義に反する。彼には相応の罪を用意した」
0
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
安らかにお眠りください
くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。
※突然残酷な描写が入ります。
※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。
※小説家になろう様へも投稿しています。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
密会~合コン相手はドS社長~
日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
守護契約のはずが、精霊騎士の距離が近すぎて心拍がもちません―― 距離ゼロで溺愛でした。
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済:全8話⭐︎
ーー条項:心拍が乱れたら抱擁せよ(やめて)
村育ちの鈍感かわいい癒し系ヒロイン・リリィは、王都を目指して旅に出たはずが――森で迷子になった瞬間、精霊騎士エヴァンに“守護契約”されてしまう!
問題は、この騎士さまの守護距離が近すぎること。
半歩どころか背後ぴったり、手を繋ぐのも「当然」、心拍が乱れたら“抱擁条項”発動!?
周囲は「恋人だろ!」と総ツッコミなのに、本人たちは「相棒です!」で通常運転。
守護(と言い張る)密着が止まらない、じわ甘コメディ異世界ファンタジー!
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる