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第1章 異世界召喚

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「キャー!地震よ~。勇~。愛子、怖いよ~。」
「大丈夫だ愛子。揺れは直ぐ収まるさ。」
「私達も貴女を護りますよ。」
「と、兎に角さ。皆、机の下に入ろうよ~。」
そう言って勇達は我先にと社会科準備室にある教師の机の下に入ろうとしたが、社会科の教師はこの学校には3人しかおらず、その為机も※¹3台しかない。よって、椅子取りゲーム宜しく、寺田は自分の机の下に、勇と愛子は押し合いし合いで1台の机の下に入ったが、残り1台しかない机の下に、賢と昴は何方が入るか揉めている様だ。
僕はというと、机の下に入る事を最初から諦めていたから、頭だけでも守れたらそれでいいと、資料やら備品やらが入っている戸棚の下の扉を開け、中のガラクタを出した所に頭を突っ込んだ。と言うより、戸棚の中は思いの外狭く(と言うより、僕が太過ぎて)頭しか入らなかったというのが正解だ。
中島は……背後でギャーギャー何か言っているが、何かが落ちる音や倒れる音が煩くて、ヤツか何を言っているのか分からなかった。



しばらくして揺れは収まった。僕は恐る恐る目を開け頭を抱えていた手を離し、うずくまったまま首だけ動かして辺りを見渡した。が、そこは見慣れた社会科準備室ではなく、とてつもなく広い大広間だった。

「え?ここはどこ~?」
と間の抜けた言葉を放つ愛子や、
「何だここは?」
いぶかしげに言う勇の声が頭上から聞こえるという事は、僕の近くに見える足の持ち主は、さっき迄社会科準備室に居た面々の様だ。


「ようこそ!異世界の勇者達よ!!」
と大声を放つ男の声が僕の背後から聞こえると同時に、僕達の周り以外が仄暗かった大広間が一気に明るくなった。
僕は上体を起こして振り向くと、そこには、まるで絵本の中に出てくるような王様の服を着て頭に王冠を乗せている、でっぷりとした腹をした男が、玉座らしき椅子にどっかりと座っていた。
そしてその男の後ろには、金色の髪を後ろに流し、勲章やらなんやらの装飾をほどこされたキラキラの服を着た長身のイケメンと、同じく金色の髪をおろし、色白の顔に似合うふうわりとしたピンクのワンピース?ドレス?を着た可愛らしい女の子が立っていた。

多分…いや恐らく……いやいや十中八九、僕より一段高い所から見下ろしている3人は所謂いわゆる王族だろう。
ま、彼等の出で立ちからそれ以外に考えられないんだが。

「俺達が勇者達ってどういう事だ!」
と王に向かって声を荒らげる勇。
「そうです!こんなお巫山戯ふざけに付き合っている程、私達は暇では無いんです。」
と言い放つ賢。

それ等の言葉に反応したのは、腰に剣らしき物をぶら下げている騎士だった。
「王に向かってなんたる無礼だ!」
と今にも抜刀しそうな殺気を視線に乗せ、勇達を睨んでいる。

「てかさ~。何で僕達がここに連れてこられた理由を先に言うべきでしょ~?ね?王様。」
と可愛いらしく言いながらも毒づく昴。
中島は
「勇者!俺に相応しい称号だ!」
とほざき、
「王子様てば、超絶イケメ~ン。愛子~好きになっちゃいそう。」
と中島以上にKY発言をぶちかましていた。


そんな彼等の言葉を無視するかの様に、
「それでは司祭よ。例のもの持って参れ。」
と、王の指示が飛んだ。すると、テレビ画面でしか見た事がない、法皇の衣装に似た白い服を着た白髪の爺さんが、大きな硝子の球みたいな物を紫色のクッションみたいなやつに乗せ、仰々しく大広間に入ってくると、僕達の前にある台座に乗せてからこう言ったんだ。

「今から御一方おひとかたずつこのクリスタルに手を置いて頂きます。このクリスタルは、貴方方のステータスと魔法属性を見る事が出来るのでございます。」
と。

「ステータスと魔法属性だと?そんなモン見て一体どうすんだよ?」
と言った勇の言葉に、僕達はうんうんと頷いた。だってそうだろ?僕達がこの世界に連れてこられた理由も何もまだ知らされていないのに、やれステータスだ属性だと言われたって混乱するだけだからな。

「そなた達の言わんとする事はよく分かる。父上、この者たちに召喚された理由を話して聞かせるべきかと。」
「そうだなリシャールよ。あい分かった!お前達がこの国に召喚された理由を伝えよう。」

王は、(多分)自分の子供であるリシャールと呼んだ人物の言葉を受けて、僕達がここに呼ばれた理由を話し始めたんだ。
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