バトロワゲーヲタの異世界無双物語

第二章 異世界での生活

5

昼食をしっかり食べた（本当はシュナイツさんは奢おごってくれた。）僕は、午後は街を見て歩いた。勿論ノートを片手にだ。
「え～っと……これは"か”でこれが"る”。でこれが……。」
と、ノートと店先に書かれている文字のを見比べながら解読していく作業を続けていく。僕がそんな事をしているのには理由がある。何故なら、街の中にある店を覚えて、ハイネさんのお使いやデリバリーが出来たら良いなと思っているからだ。
ハイネさんはきっと、「そんな事しなくて良いよ。」と言うだろうけど、コミュ障の僕でも、お使いくらい出来ると思ったから。

「えっと……。ぶきのみせ でぃるく。ん？武器の店？」
店先の看板には剣の絵も何も描いてはいないが、確かに書かれている文字は【武器】と読める文字が……。
「ちょっと入ってみようかな。でも平民の僕には不要な物だもんな。でも……」
と店の前でウロウロしていたら、店のドアが突然開いた。
「坊主。」
と言われ声のする方を見ると、そこにはとても背の低い髭オヤジが立っていた。しかもその髭オヤジは、1m位の身長だった。
（え？小人？）と思っていたら、目の前にウィンドーが現れ、
『鑑定スキル起動』
【元ドアーフ 武器職人  HP/20 MP/100】
というものが見えた。
（え？ドアーフ？って、もしかして魔物？魔物が人間の街にいるの？）
と考え込んでいると、
「坊主。兎に角中に入れ。」
とドアーフの髭オヤジは、僕の腕を掴むと物凄い力で引っ張って店内に引き摺り込んだんだ。



「うっわぁ～。すげぇ!!」
髭オヤジに腕を引かれ店内に入った途端、僕のサバゲーの血が騒いだ。
髭オヤジの店は、僕が読んだとおり【武器の店】だったからだ。

「こんな凄い剣、見たこと無い！」
「わ！何だコレ？めっちゃレベル高いじゃん！」
髭オヤジの店の武器を見た途端、僕の【鑑定】スキルが次々作動し、忙しいくらいだ。

店内の武器をアレコレ見て回る僕は、ある武器の前で釘付けになってしまった。
それは一丁の銃だった。
【魔銃まガン；魔力を込める事で使用出来る。魔石の付与；最大3個まで。射程距離；約3km】
「魔銃っていうのかぁ……。3kmならライフル銃位かな？カッコいいなぁ。試し打ちとか出来ないかな？」
と僕がブツブツ言ってると、
「魔銃そりゃ、坊主じゃ使えないぞ。」
と、いつの間にか隣に来た髭オヤジが僕を見上げて言っている。
「ど…どうしてですか？」
「坊主。お前には魔力が無いだろ？」
と。
そうだ。僕には魔力が無い。だから討伐隊にはなれなかったんだった。
あからさまに項垂れてしまった僕の顔を下から覗き込んだ髭オヤジは、
「だが、一つだけ方法がある。」
と言って僕の手を引き、奥の部屋へ入ったんだ。
そして、
「今ワシが作っているこの剣は、魔力が無い奴でも扱える剣だ。これと同じ様に、魔力が無い者でも使える魔銃を作ればいい事。」
「え？作れるんですか？」
と髭オヤジに飛び付いた僕に、
「あぁ。理屈ではそうなる。だが……。」
「だが？」
「あの魔銃は、ワシが作った者では無いんだ。ワシには銃は作れないからな。」
そう言って髭オヤジは肩を落とした。

店を出た僕は、魔銃の事を考えながらハイネさんの家へと帰る。

魔銃……。平民の僕には正直必要は無い武器だろう。でも……。魔力の無い人でも使える銃があれば、いざという時異世界人の僕を受け入れてくれているハイネさん達を守る事が出来る。

その晩僕は、魔銃の事をずっと考えながら眠りについたんだ。