46 / 130
第四章 大規模討伐と彼等との再会
7
しおりを挟む
「勇達……いや、西山・寺田先生・中島先輩が使い物にならないだなんて……嘘だろ……。」
ミランダさんに見せてもらった手紙を読み終えた僕は、手紙を差し出された状態に戻すと、ミランダさんにお返ししながらそう言った。
「嘘ではない。俺は王宮騎士団長をやっているリックベルソンから直接その者達の様子を聞いたんだから間違いは無い。」
と手紙の内容に間違いは無いと断言したカールソンさん。
「リック騎士団長の話だと、のぞむ達が此方に召喚された当時、他の者達は皆、のぞむに魔力が無いと言って馬鹿にしていたそうだね。」
とルードリッヒさんからそう問われ、僕は「はい。」と頷いた。
「でも、のぞむ君は、今では私達のパーティーにはなくてはならない存在ですわ。そうですわよね?お兄様。」
「ミランダの言うとおりだよ。俺はのぞむの腕を買っている。君は、冒険者としても付与師としても素晴らしいし。なにより努力家だからね。」
「俺の厳しいトレーニングにもよく耐えたしな。」
と三人から褒められてしまい、なんかムズムズするなと思っていると、カールソンさんから、一緒に召喚された勇達のその後の様子を聞かされた。そしてその話により、何故僕達が他の冒険者達と一緒に討伐に呼ばれたのかを理解する事が出来たんだ。
カールソンさんからの話はこうだった。
王宮に残った勇達は、それぞれの職に合わせた訓練や指導を受けており、今までにも何度か魔獣と戦っていた。が、実際に魔獣を倒していたのは勇 賢 昴の三人だけであり、愛子と昭弘に関しては、毎回何か理由を付けては全く戦おうとはしなかった。
洋平に至っては、どうやら王宮に与えられた部屋から出ようともしなかったらしい。
それに剛を煮やした王は、今回の魔獣戦で勝利を収めたあかつきには、それぞれが希望する物を与えると約束し、六人を森へと向かわせる事にした。
騎士達に護衛されながら現地に到着した勇達は、それぞれ欲しい物を口にしながら、意気揚々と魔獣戦が多く出現するポイントまで自分達だけで向かった。が、何故かものの10分もしない内に、走って騎士達が待つ場所に戻ってしまったのだ。
それだけであればまだ良かったが、既に魔獣と一戦混じえた後だった状態で背を向け逃げ帰ってきた様で、勇達を追って傷を負った魔獣達も後を追って来てしまったのだ。
一応警戒をしていた騎士達だったが、突然魔獣の群れが攻めてきた為、臨戦態勢に入るのが少し遅れてしまった。
それでも騎士達は、日頃の訓練と連携した動きの賜物で、魔獣を全滅する事が出来た。が、やはり十数名の怪我人を出してしまった。
そこで聖女である愛子に、治癒と怪我人の治療の間、念の為の結界張りを依頼したのだが、
「そんな事出来ないもん!だって愛子、そんなの誰からも教えて貰ってないもん!」
の一点張りで、治癒魔法をかける事も結界を張ることもせず馬車の中に閉じこもってしまったという。
確かに愛子には、まだ治癒魔法も結界を張る事も出来ないのだが、それは彼女が少しも学ぼうとしないせいであって、誰も教えていないわけではない。
それなのに、身勝手な振る舞いをした愛子に対し、騎士団長は心底呆れてしまった。
しかし怪我人をこのまま放っておく訳にも行かず、他に治癒魔法を唱える事が出来る、僧侶の昭弘にそれを頼んだ。だが、彼もまた、
「俺はあくまで生徒達の保護者で、本職は教師だ。教師は、生徒達を見守り、その都度適切な指導をするのが仕事であり、治癒魔法等という行為は教師の本分では無い。」
と訳の分からない理屈を捏ね、その役目を果たそうとはしなかった。
その保護対象である生徒達が、先程、魔獣達の攻撃を受け、危険にさらされていたにも関わらず。しかもその生徒達が、僅か数分前迄、未熟ながらも必死で騎士達に混じって戦っていた時に、この男はその時間ずっと馬車の後ろに隠れており、いつものように何もしなかったのだ。
昭弘は何も反論してこない騎士団長を見て、上手く論破出来たと自慢げにしていたが、騎士団長はただ呆れて何も言わなかっただけだった。
この様な愚かな者達のせいで、大事な部下である騎士達を亡くす事は出来ないと思った騎士団長は、部下に言って、馬車の荷台に(このような事もあろうかと、秘密裏に用意してあった)ポーションを持ってこさせ、怪我人達に飲ませる事で対応したのだ。
因みに中島だが、一応魔獣と戦った様だ。その戦い方といえば、ただ武器をブンブンと振り回しまくるだけで、魔獣に傷一つ負わせる事もないお粗末な戦い方ではあったが、魔獣も騎士達も危なくて傍に寄れなかったという意味では、少しは役に立ったのかもしれない。
まぁ、愛子や昭弘よりはましだったという程度なのだが……。
ミランダさんに見せてもらった手紙を読み終えた僕は、手紙を差し出された状態に戻すと、ミランダさんにお返ししながらそう言った。
「嘘ではない。俺は王宮騎士団長をやっているリックベルソンから直接その者達の様子を聞いたんだから間違いは無い。」
と手紙の内容に間違いは無いと断言したカールソンさん。
「リック騎士団長の話だと、のぞむ達が此方に召喚された当時、他の者達は皆、のぞむに魔力が無いと言って馬鹿にしていたそうだね。」
とルードリッヒさんからそう問われ、僕は「はい。」と頷いた。
「でも、のぞむ君は、今では私達のパーティーにはなくてはならない存在ですわ。そうですわよね?お兄様。」
「ミランダの言うとおりだよ。俺はのぞむの腕を買っている。君は、冒険者としても付与師としても素晴らしいし。なにより努力家だからね。」
「俺の厳しいトレーニングにもよく耐えたしな。」
と三人から褒められてしまい、なんかムズムズするなと思っていると、カールソンさんから、一緒に召喚された勇達のその後の様子を聞かされた。そしてその話により、何故僕達が他の冒険者達と一緒に討伐に呼ばれたのかを理解する事が出来たんだ。
カールソンさんからの話はこうだった。
王宮に残った勇達は、それぞれの職に合わせた訓練や指導を受けており、今までにも何度か魔獣と戦っていた。が、実際に魔獣を倒していたのは勇 賢 昴の三人だけであり、愛子と昭弘に関しては、毎回何か理由を付けては全く戦おうとはしなかった。
洋平に至っては、どうやら王宮に与えられた部屋から出ようともしなかったらしい。
それに剛を煮やした王は、今回の魔獣戦で勝利を収めたあかつきには、それぞれが希望する物を与えると約束し、六人を森へと向かわせる事にした。
騎士達に護衛されながら現地に到着した勇達は、それぞれ欲しい物を口にしながら、意気揚々と魔獣戦が多く出現するポイントまで自分達だけで向かった。が、何故かものの10分もしない内に、走って騎士達が待つ場所に戻ってしまったのだ。
それだけであればまだ良かったが、既に魔獣と一戦混じえた後だった状態で背を向け逃げ帰ってきた様で、勇達を追って傷を負った魔獣達も後を追って来てしまったのだ。
一応警戒をしていた騎士達だったが、突然魔獣の群れが攻めてきた為、臨戦態勢に入るのが少し遅れてしまった。
それでも騎士達は、日頃の訓練と連携した動きの賜物で、魔獣を全滅する事が出来た。が、やはり十数名の怪我人を出してしまった。
そこで聖女である愛子に、治癒と怪我人の治療の間、念の為の結界張りを依頼したのだが、
「そんな事出来ないもん!だって愛子、そんなの誰からも教えて貰ってないもん!」
の一点張りで、治癒魔法をかける事も結界を張ることもせず馬車の中に閉じこもってしまったという。
確かに愛子には、まだ治癒魔法も結界を張る事も出来ないのだが、それは彼女が少しも学ぼうとしないせいであって、誰も教えていないわけではない。
それなのに、身勝手な振る舞いをした愛子に対し、騎士団長は心底呆れてしまった。
しかし怪我人をこのまま放っておく訳にも行かず、他に治癒魔法を唱える事が出来る、僧侶の昭弘にそれを頼んだ。だが、彼もまた、
「俺はあくまで生徒達の保護者で、本職は教師だ。教師は、生徒達を見守り、その都度適切な指導をするのが仕事であり、治癒魔法等という行為は教師の本分では無い。」
と訳の分からない理屈を捏ね、その役目を果たそうとはしなかった。
その保護対象である生徒達が、先程、魔獣達の攻撃を受け、危険にさらされていたにも関わらず。しかもその生徒達が、僅か数分前迄、未熟ながらも必死で騎士達に混じって戦っていた時に、この男はその時間ずっと馬車の後ろに隠れており、いつものように何もしなかったのだ。
昭弘は何も反論してこない騎士団長を見て、上手く論破出来たと自慢げにしていたが、騎士団長はただ呆れて何も言わなかっただけだった。
この様な愚かな者達のせいで、大事な部下である騎士達を亡くす事は出来ないと思った騎士団長は、部下に言って、馬車の荷台に(このような事もあろうかと、秘密裏に用意してあった)ポーションを持ってこさせ、怪我人達に飲ませる事で対応したのだ。
因みに中島だが、一応魔獣と戦った様だ。その戦い方といえば、ただ武器をブンブンと振り回しまくるだけで、魔獣に傷一つ負わせる事もないお粗末な戦い方ではあったが、魔獣も騎士達も危なくて傍に寄れなかったという意味では、少しは役に立ったのかもしれない。
まぁ、愛子や昭弘よりはましだったという程度なのだが……。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる