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第四章 大規模討伐と彼等との再会

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「よし!じゃあ、これから作戦会議だな。と、その前に……。」
と言ってパンパンと二回手を叩いたルードリッヒさんの行動に反応した先程の執事さんが、
「お呼びでございましょうか。」
と言って部屋に入ってきた。
「すまない。お茶を入れてくれないかな?オズワルド。」
「畏まりました、ルードリッヒ様。直ぐにご用意申し上げます。お茶菓子もご一緒にお持ち致しますので。」
と言って部屋から出て行こうとする執事さんに、
「あ!あの……。クッキーで良ければ……。」
と言って、僕は、持っていた異空間鞄の中からハイネさんお手製のクッキーを取り出した。
それを見たカールソンさんは、僕の手からクッキーを奪い取ると、ガツガツと食べ始めてしまったんだ。
その様子に驚きの余り固まってしまい何も言えなくなった僕を見たルードリッヒさんは、
「ごめんね、のぞむ。カールソンはずっと、ハイネさんが作ったクッキーが食べたいと言っていたんだ。だから許してやって欲しい。」
と笑いながらそう言った。
「のぞむ様。今、代わりの物をお持ち致します。今暫くお待ち下さい。」
そう言って、執事さんは今度こそ部屋から出て行った。

その後、お茶を飲みながら行われた作戦会議だが、夜遅く迄行われた為、僕はルードリッヒさんのお屋敷で夕ご飯を食べさせて貰う事になった。が、貴族の人達が食べる豪華過ぎる夕食を目の当たりにした僕は、「マナーを知らないから…」と尻込みしてしまう。
だが、ミランダさんがカトラリーの使い方を優しく教えてくれたので、僕はなんとかそれ等を使って、生まれて初めて口にする美味しい料理に舌鼓を打った。

食事中、ルードリッヒさんやミランダさんの子供の頃の話や、カールソンさんの武勇伝等、楽しく面白い話を聞きながらの晩餐だった為、食後のお茶を貰う頃には、外はもう真っ暗だった。
その為、僕はルードリッヒさんのお屋敷に泊めて貰う事になったんだけど、今日は家に帰れるとハイネさんに言ってあった事を思い出した。予定変更をハイネさんに言っていない事をルードリッヒさんに伝えると、既に彼女には話が通っているから大丈夫だと言われ驚いた。彼は本当に気遣いが出来る人なんだな。どっかの誰かクソ寺田に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだよ。
ルードリッヒさんやカールソンさんみたいな人が学校の先生だったら良かったのに……と本気でそう風呂の中で考えた。

その後、僕の為に用意された部屋に入って、僕はまた驚いた。
今日一日で一体何回驚かされたらいいんだろう。
さっきルードリッヒさんがいた部屋程では無いにしろ、一流ホテルのセミスイート(て、僕の勝手なイメージなだけだけど…)みたいに豪華で広い部屋だった。
置かれているベッドもダブルサイズ位ありそうな大きさだ。

「こんな凄い部屋に泊まっちゃっても良いのかな?部屋代とか……。それは無い……よね?にしても、夢みたいだな。こんな凄い部屋に泊まれるとか……。それにさっきの料理も。お風呂もめちゃくちゃ気持ちよかったし……。今日は最高に良い日だ。」
等と言いながら引き寄せられるようにベッドへと歩き出し、ぼふんっとそれに飛び込んだ。
寝心地の良さそうな弾力と、いい匂いのするリネンに包まれると、自然に目蓋が降りてきてしまう。

暫く今日の余韻に浸ろうと必死で睡魔と戦うも、僕は直ぐにノックダウンしてしまい、眠りの世界へと落ちてしまったんだ。
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