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第五章 変わったヲタ
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ルードリッヒさんとカールソンさんの援護を受け走っていると、
『俺達も援護するぞ!』
と言って冒険者のリーダーさん達もついて来てくれた。
『魔導士の皆さん!再びレオの足を凍らせて下さい!』
とミランダさんが魔導士さん達に指示を出している。
流石は聡い彼女だ。
魔導士さん達が一斉に放ってくれた氷魔法のおかげで、再びレオの六本の足が凍った。
それを確認した僕は、
『皆さんはアイツのとどめをお願いします。僕は怪我人を助けます!』
とルードリッヒさん達から離れ、草むらに蹲り震えている人に駆け寄った。
「大丈夫ですか?しっかりして下さい!」
と声を掛けながら、僕はその人の怪我の状況を素早く確認した。が、彼の怪我はレオの攻撃に拠るもので無く、それを避ける為に切り株に躓いて転んだと思われる膝や脛の擦り傷や、低い木の枝等で切ったと思われる腕の浅い切り傷だけだった。
(こんな軽い怪我で良かった。)
僕はそう思い胸を撫で下ろすと、
「中島先輩!中島先輩!」
と彼の肩を揺すった。相変わらず強烈な臭いがして怯みそうになるが、こっちも相当汗臭いだろうからお互い様だろう。
僕の声に反応し、徐ろに顔を上げた中島先輩の顔色は、恐怖の為か?青白いを通り越し、最早土気色だった。
「だ、誰だ?お前。」
「助けに来ました。歩けますか?」
中島先輩の質問に答えること無く、僕はそう彼に問うた。
「た、助けに……。そう、か。」
「怪我をされている様ですが、酷くは無いようなので大丈夫だと思います。さぁ、立ってください!」
と言って立ち上がらせようとするも、座ったまま動こうとはしない中島先輩は、
「い……嫌だ!もう戦いたくない!戦士とかどうでもいい!!それより……そんな事より早く……早く帰りたい!日本に帰りたいんだ、俺は!!おい!早く俺を帰らせろ!俺を早く日本へ!!俺を待ってる女の子達がいるんだ!」
と僕の胸ぐらを掴んで唾を飛ばしまくりながらそう喚き散らした。
(駄目だ。これでは埒が明かない。もう直ぐフォロシェスベアが現れる!こんな所でグズグズされていては、逆に危険だ。アレが到着する迄にこの男を安全な場所に……)
僕は、僕の胸ぐらを掴んでいる彼の手を払い除け、逆に彼の胸ぐらを掴んで強引に立たせると、
「な!何をす……「失礼!少し寝てて下さい!」」
ドカッ!!
「グヘッ」
鳩尾を僕に殴られ、蛙が潰れた様な声を出して気絶し崩れ落ちる中島先輩を、僕は背中で受け止め持ち上げようとした。が、気絶した人間がこうも重いとは思っていなかった僕は、彼の意識がない身体の重みに耐えかね、その場に膝を着いてしまった。
「クソッ!なんて重いんだ!でも……早く……早く此奴を……。」
なんとか頑張って立ち上がり、中島先輩を安全な場所に運ぼうと悪戦苦闘する僕。すると僕の周りに、優しい風がふぅ~っと吹いた。
『のぞむさん!その人の身体を風に乗せて下さい。』
通信機から女性魔導士の声が聞こえた。
『あ…ありがとうございます。』
『お礼には及びませんよ。私はミランダ様に頼まれただけですから。さあ!早く乗せて下さい、のぞむさん。』
と言う女性の声が聞こえた後直ぐに、僕の身体が風に包まれたかと思うと、背中がフッと軽くなったのを感じた。
見えない風の上に乗せられている為、中島先輩の身体は宙に浮いた状態にしか見えないが、
『すみません。その人を騎士団の馬車の前で降ろして貰えますか?』
とお願いすると、僕は、中島先輩を気絶させた時と殆ど同じタイミングでレオの息の根を止めたルードリッヒさん達の元へと走って行った。
『俺達も援護するぞ!』
と言って冒険者のリーダーさん達もついて来てくれた。
『魔導士の皆さん!再びレオの足を凍らせて下さい!』
とミランダさんが魔導士さん達に指示を出している。
流石は聡い彼女だ。
魔導士さん達が一斉に放ってくれた氷魔法のおかげで、再びレオの六本の足が凍った。
それを確認した僕は、
『皆さんはアイツのとどめをお願いします。僕は怪我人を助けます!』
とルードリッヒさん達から離れ、草むらに蹲り震えている人に駆け寄った。
「大丈夫ですか?しっかりして下さい!」
と声を掛けながら、僕はその人の怪我の状況を素早く確認した。が、彼の怪我はレオの攻撃に拠るもので無く、それを避ける為に切り株に躓いて転んだと思われる膝や脛の擦り傷や、低い木の枝等で切ったと思われる腕の浅い切り傷だけだった。
(こんな軽い怪我で良かった。)
僕はそう思い胸を撫で下ろすと、
「中島先輩!中島先輩!」
と彼の肩を揺すった。相変わらず強烈な臭いがして怯みそうになるが、こっちも相当汗臭いだろうからお互い様だろう。
僕の声に反応し、徐ろに顔を上げた中島先輩の顔色は、恐怖の為か?青白いを通り越し、最早土気色だった。
「だ、誰だ?お前。」
「助けに来ました。歩けますか?」
中島先輩の質問に答えること無く、僕はそう彼に問うた。
「た、助けに……。そう、か。」
「怪我をされている様ですが、酷くは無いようなので大丈夫だと思います。さぁ、立ってください!」
と言って立ち上がらせようとするも、座ったまま動こうとはしない中島先輩は、
「い……嫌だ!もう戦いたくない!戦士とかどうでもいい!!それより……そんな事より早く……早く帰りたい!日本に帰りたいんだ、俺は!!おい!早く俺を帰らせろ!俺を早く日本へ!!俺を待ってる女の子達がいるんだ!」
と僕の胸ぐらを掴んで唾を飛ばしまくりながらそう喚き散らした。
(駄目だ。これでは埒が明かない。もう直ぐフォロシェスベアが現れる!こんな所でグズグズされていては、逆に危険だ。アレが到着する迄にこの男を安全な場所に……)
僕は、僕の胸ぐらを掴んでいる彼の手を払い除け、逆に彼の胸ぐらを掴んで強引に立たせると、
「な!何をす……「失礼!少し寝てて下さい!」」
ドカッ!!
「グヘッ」
鳩尾を僕に殴られ、蛙が潰れた様な声を出して気絶し崩れ落ちる中島先輩を、僕は背中で受け止め持ち上げようとした。が、気絶した人間がこうも重いとは思っていなかった僕は、彼の意識がない身体の重みに耐えかね、その場に膝を着いてしまった。
「クソッ!なんて重いんだ!でも……早く……早く此奴を……。」
なんとか頑張って立ち上がり、中島先輩を安全な場所に運ぼうと悪戦苦闘する僕。すると僕の周りに、優しい風がふぅ~っと吹いた。
『のぞむさん!その人の身体を風に乗せて下さい。』
通信機から女性魔導士の声が聞こえた。
『あ…ありがとうございます。』
『お礼には及びませんよ。私はミランダ様に頼まれただけですから。さあ!早く乗せて下さい、のぞむさん。』
と言う女性の声が聞こえた後直ぐに、僕の身体が風に包まれたかと思うと、背中がフッと軽くなったのを感じた。
見えない風の上に乗せられている為、中島先輩の身体は宙に浮いた状態にしか見えないが、
『すみません。その人を騎士団の馬車の前で降ろして貰えますか?』
とお願いすると、僕は、中島先輩を気絶させた時と殆ど同じタイミングでレオの息の根を止めたルードリッヒさん達の元へと走って行った。
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