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第六章 ヲタは領域を制す(王との謁見編)
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「よくお越しくださいました、ルードリッヒ= ワシャールド公爵閣下。並びにミランダ= ワシャールド公爵令嬢。ご機嫌如何でございましょう。」
と言って、謁見の間に入った僕達……いや、ルードリッヒさんとミランダさんを笑顔で迎えたのは、以前会ったあの司祭とかいう立場のおじさんだった。
「久しいな、ダ・マーレ司祭長。」
「お久しゅうございますわ、ダ・マーレ司祭長様。」
とお二人も貴族の笑顔で挨拶を返している。
そしてダ・マーレ司祭長と呼ばれたおじさんは、僕達 ┄ 正確に言うとカールソンさん ┄ の前にも来て、
「これはこれは。元王宮騎士団長カールソン卿ではありませんか。お父君にあらせられましては、いつも教会への多額のご寄付を賜り、私共司祭一同、誠に有難く思っておりますよ。」
と言っている。が、おじさんが言った言葉は、カールソンさんのお父さんを褒め称えるもので(しかも、金払いが良いからという理由で)、この人はあまりいい人では無いな、と思った。
その後司祭のおじさんと、ルードリッヒさん達は表面上は楽しそうに話をしていたが、ずっとカールソンさんの横で、ミランダさんの直ぐ後ろに立って頭を下げていた僕に話しかけてくる事は無かった。
まぁ、おじさんにとっては、僕なんて
名前も知らないただの男だろうから、話しかける意味なんて無いんだろうけどね。それはそれで有り難いっちゃ有り難い事だから、と思い、僕はその後もずっと彼等より三歩程後ろに下がって、床に敷かれている高そうな絨毯の幾何学模様をぼんやりと見ていた。
すると、
「サーバイバール王国国王、マルバーナム国王陛下のお着きにございます。」
と、誰かが王の登場を告げる声を上げた為、ルードリッヒさん達と一緒に片膝を着いて頭を下げた。
「皆の者。表を上げよ。」
前に聞いた事がある声が、頭を下げている僕の頭上から降ってきた。
(あぁ……この声だ。)
王様の声を聞いた瞬間、あの日の事を思い出し、吐きそうになった僕は、奥歯をグッと噛み締め、左胸の前に当てたままの右手をギュッと握り締めていた。
そんな僕の様子を知ることも無く、王様は、
「久しいな、ルードリッヒ。」
と言葉を発した。それに答える様に会話が続く。
「陛下におかれましては、益々ご健勝の事と存じます。」
「ミランダも、変わりないか?」
「有り難きお言葉。ありがとう存じますわ、陛下。」
「二人とも息災で何よりである。更に、此度の大規模な魔獣討伐に際して、ルードリッヒは陣頭指揮を取ったと聞き及んでおるぞ。誠にご苦労であった。」
「勿体なきお言葉、ありがとう存じます。」
「うむ。して……。ルードリッヒの後ろにおるのは、カールソンではなかろうか。カールソンよ、此度の大規模な魔獣討伐では、そなたもルードリッヒを助け、見事な活躍をしたと聞いておるぞ。大事無いか?」
「はっ!過分なるお言葉を賜り、有り難き幸せに存じます。」
「ハッハッハ。皆の者、そう畏まらんでも良い。そうであろう?ダ・マーレよ。そなたもそう思わぬか?」
「お言葉を返すようでございますが、陛下。ルードリッヒ様におかれましては、いくら陛下のお子様とはいえど、今は臣下となられたというお心構え故の言動かと見受けられまする。」
と如何にも表面上は、ルードリッヒさんを褒めているかのように見える美辞麗句を並べているけども、裏を返せば、"もう王子じゃないんだから、畏まるのは当前だろう。”と言ってるのと同じだと思った。
こういう人間って何て言うんだっけ?
えっと……。太鼓……腹?いや違うな……。太っ腹。でも無くて…………あ!思い出した!!
「太鼓持ち!」
と思わず声に出してしまい、慌てて両手で口を押さえた僕に、
「はて……そなたは見かけない顔だが、公爵家の護衛騎士の一人なのか?」
と王様に質問されてしまったんだ。
と言って、謁見の間に入った僕達……いや、ルードリッヒさんとミランダさんを笑顔で迎えたのは、以前会ったあの司祭とかいう立場のおじさんだった。
「久しいな、ダ・マーレ司祭長。」
「お久しゅうございますわ、ダ・マーレ司祭長様。」
とお二人も貴族の笑顔で挨拶を返している。
そしてダ・マーレ司祭長と呼ばれたおじさんは、僕達 ┄ 正確に言うとカールソンさん ┄ の前にも来て、
「これはこれは。元王宮騎士団長カールソン卿ではありませんか。お父君にあらせられましては、いつも教会への多額のご寄付を賜り、私共司祭一同、誠に有難く思っておりますよ。」
と言っている。が、おじさんが言った言葉は、カールソンさんのお父さんを褒め称えるもので(しかも、金払いが良いからという理由で)、この人はあまりいい人では無いな、と思った。
その後司祭のおじさんと、ルードリッヒさん達は表面上は楽しそうに話をしていたが、ずっとカールソンさんの横で、ミランダさんの直ぐ後ろに立って頭を下げていた僕に話しかけてくる事は無かった。
まぁ、おじさんにとっては、僕なんて
名前も知らないただの男だろうから、話しかける意味なんて無いんだろうけどね。それはそれで有り難いっちゃ有り難い事だから、と思い、僕はその後もずっと彼等より三歩程後ろに下がって、床に敷かれている高そうな絨毯の幾何学模様をぼんやりと見ていた。
すると、
「サーバイバール王国国王、マルバーナム国王陛下のお着きにございます。」
と、誰かが王の登場を告げる声を上げた為、ルードリッヒさん達と一緒に片膝を着いて頭を下げた。
「皆の者。表を上げよ。」
前に聞いた事がある声が、頭を下げている僕の頭上から降ってきた。
(あぁ……この声だ。)
王様の声を聞いた瞬間、あの日の事を思い出し、吐きそうになった僕は、奥歯をグッと噛み締め、左胸の前に当てたままの右手をギュッと握り締めていた。
そんな僕の様子を知ることも無く、王様は、
「久しいな、ルードリッヒ。」
と言葉を発した。それに答える様に会話が続く。
「陛下におかれましては、益々ご健勝の事と存じます。」
「ミランダも、変わりないか?」
「有り難きお言葉。ありがとう存じますわ、陛下。」
「二人とも息災で何よりである。更に、此度の大規模な魔獣討伐に際して、ルードリッヒは陣頭指揮を取ったと聞き及んでおるぞ。誠にご苦労であった。」
「勿体なきお言葉、ありがとう存じます。」
「うむ。して……。ルードリッヒの後ろにおるのは、カールソンではなかろうか。カールソンよ、此度の大規模な魔獣討伐では、そなたもルードリッヒを助け、見事な活躍をしたと聞いておるぞ。大事無いか?」
「はっ!過分なるお言葉を賜り、有り難き幸せに存じます。」
「ハッハッハ。皆の者、そう畏まらんでも良い。そうであろう?ダ・マーレよ。そなたもそう思わぬか?」
「お言葉を返すようでございますが、陛下。ルードリッヒ様におかれましては、いくら陛下のお子様とはいえど、今は臣下となられたというお心構え故の言動かと見受けられまする。」
と如何にも表面上は、ルードリッヒさんを褒めているかのように見える美辞麗句を並べているけども、裏を返せば、"もう王子じゃないんだから、畏まるのは当前だろう。”と言ってるのと同じだと思った。
こういう人間って何て言うんだっけ?
えっと……。太鼓……腹?いや違うな……。太っ腹。でも無くて…………あ!思い出した!!
「太鼓持ち!」
と思わず声に出してしまい、慌てて両手で口を押さえた僕に、
「はて……そなたは見かけない顔だが、公爵家の護衛騎士の一人なのか?」
と王様に質問されてしまったんだ。
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