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第七章 ヲタは領域を制す(王の依頼と煩い奴等編)

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勇達は納得しているのか?と聞く僕の言葉に王は、
「勇者殿にはこれから話そうとしておる。そなたは何も心配せずとも良い。」
「心配しなくても良いと言いきれるその根拠は何ですか?」
「なッ!」
「相田達……いや、勇達は、領域封印の為に、今迄城で特訓を受けてきたんですよね?実戦を兼ねて魔獣を討伐してきたんですよね?」
「…………あ、あぁ……そうだな。」
「確かにあの大規模討伐の時のあの戦い方はまずかったと僕も思います。でも、それだけが、彼等を封印に行かせない理由にはならないんじゃないですか?」
「のぞむ殿の言うとおり、封印に行かせられない理由は他にある。だが……。」
「でしたら彼等にそれをちゃんと伝えるべきです。貴方はこの国の王で、僕達を召喚した責任者だ。責任者なら責任者らしく、ちゃんと説明責任を負うべきです!」
一気に言い切った僕は、ハァハァと肩で息をした。と同時に、コミュ障だったはずの僕が、王様相手にここまで言えるだなんて、成長したんだなぁと心の中で思っていた。

すると、ルードリッヒさんが、
「でしたら陛下。今ここに勇者達もお呼びして、ご説明なさるのが宜しいかと思います。」
と提案してくれたんだ。
流石ルードリッヒさんだ。さっきまで、僕に言われるだけ言われ、何も言い返せないでいた王が、ルードリッヒさんの言葉に頷き返している。

「あい分かった。では、此処に勇者殿とそのご友人達を呼ぶとしよう。宰相よ!勇者殿達を此処へ。それから、誰か、ルードリッヒとカールソン、そしてのぞむ殿に椅子を。あぁそうだ。勇者殿達用にも椅子を持って参れ。」
と声を張り指示を出すと、一人の男性─多分、宰相て呼ばれた人─がスッと礼をした後、謁見の間を出て行った。騎士の人達数名がそれに続いた。
おそらく、一人で出て行った男性が勇達を呼びに行って、騎士の人達は僕達の椅子を取りに行ったんだろうな。
と、そんな事を思っていると、
「ちょっと良いかな。」
と、ルードリッヒさんが話しかけて来たんだ。
「はい。」
「先程の陛下からの話だが、俺は受けるつもりだ。勿論、のぞむにも来て欲しいと俺は思っている。のぞむはどうだ?」
「ルードリッヒさんが僕を必要としてくれるのなら、勿論ついて行きます。でも……良いんですか?」
「ん?何が良いんだ?」
「領域の封印は危険が伴うんですよね?本当は、勇者である勇達が行くべきなんじゃ無いですか?僕達─いや、魔力無しの僕は置いといて、魔力がある勇達はその為に呼ばれたんですから……。」
と言うと、
「おそらくだが、陛下は勇者殿達では封印は無理だとお考えだと思うんだ。だからこそ、臣下である俺達に白羽の矢が立ったんだと思う。」
「…………。」
「のぞむの言うとおり、俺は陛下の子供だ。当然父親としての陛下は、息子の俺や娘のミランダを行かせたくないと思われているだろう。だが……、それを敢えて行ってくれと仰るのは、俺達にしか出来ない、俺達ならやれる、やり遂げてくれるという絶対的な信頼を寄せていらっしゃるからだと思う。そして何より、陛下は魔獣から自国民を護りたい。そう思っておられるんだ。」
「…………。」
「俺もミランダもカールソンも、自国の民達を護りたい。それが俺達貴族の役割りだからね。」

貴族の役割り……僕には分からない精神だな。
「分かりました。僕もお世話になっている方々を護りたい。ルードリッヒさん、僕も連れて行ってください!」
と言っていると、
「勇者様達がお越しになりました。」
と騎士の一人がそう告げたんだ。
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