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第七章 ヲタは領域を制す(王の依頼と煩い奴等編)
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王の言葉に、寺田と洋平は安堵の表情を、愛子はわけが分からないといった顔でキョロキョロと周りを見渡し、賢と昴は王の顔を見た後勇の顔を伺っている。
そしてその2人から見られている勇はといえば、王の顔をじっと見据え乍も、その表情はとても複雑そうだった。
王より、"封印をしなくても良い”と言われたという事は、お前達は要らないと言われたのと同じ事。落第したのと同じ事だから。
今までずっとエリート街道まっしぐらだった勇にとって、王から発せられた不要の言葉は屈辱以外の何ものでもないだろう。
「王よ。俺達に封印させないと言うんなら、それは何処の誰がやるんだ?また新たにどっかから召喚するのか?」
と不躾な言葉を王に向けて放つ勇。
その言葉に、堪らず控えていた騎士が、脇に携えている細剣を抜こうとしたが、それを王が目で諌める。
「勇者殿の問いに答えよう。余は、もう召喚はしない。そして、封印はこの者達に行ってもらう事にした。」
と、王は自分の右斜め前に座っている僕達を指さしそう言った。
すると勇は音を立てて椅子から立ち上がると、
「本気かよ!そいつらはただの冒険者だろ?そいつらに封印なんて出来るわけ無いだろ!」
「口を慎め!いくら勇者殿と言えど、陛下のご子息であらせられるルードリッヒ公爵閣下に対してのその言葉。無礼である!」
と今度ばかりは我慢出来なかったらしい宰相のおじさんがそう言って隣にいた騎士の腰から剣を抜き取り、その刃を勇に向けそう言った。
「 まぁ良い。宰相よ、剣を収めよ。それから勇者殿に聞く。彼等には封印が出来ないと申すが、何故そう言いきれる事が出来るのだ?先の大規模討伐で、そなた達は一体でも己の力で魔獣を倒す事が出来たのか?」
と王から問われた勇は、何も言い返す事が出来ず、悔しそうに眉を顰め唇を噛んだ。
王の言うとおり、彼等は一体も魔獣を倒していなかった。
その事実を覆す事は出来ない。
何故なら、しっかりと映像に残されているからだ。
勇も、その事実を知っているからこそ、王の言葉に反論出来ないのだろう。
「先の大規模討伐で素晴らしい手腕で魔獣討伐をした、我が息子 ルードリッヒと、その護衛騎士であるカールソン。また、治癒と癒しの魔法が得意な我が娘であり、ルードリッヒの妹 ミランダ。そして、カールソンの部下で狙撃の名手であるのぞむ殿であれば、必ずや封印を成し遂げてくれると、余は信じておるのだ。」
「のぞむ?何!?渡瀬だと?おい渡瀬!俺の髪を返せ!元どおりにしろ!!」
今まで何も言わなかった寺田が、僕の名前を聞いた途端椅子から立ち上がり、僕の所まで歩いて来ようとするが、王宮騎士の一人に右腕を捕まれるのと同時に、僕を庇う様に立ちはだかってくれたカールソンさんが、寺田の左腕を掴んだ。
寺田より背が高く、鍛え上げられた身体を持つ騎士二人に止められるが、寺田はまだ唾を飛ばして何かを喚き散らかしている。
何を言っているのか、僕には全く分からないし全然聞こえないのは、「うるさい男だ。」と小さく呟いたルードリッヒさんが、寺田の声を消す魔法─いや、正確には違うのかもしれないけど─をかけたからだ。
寺田の髪はその内ちゃんと元どおりになるって教えたのにな。面倒臭いな……と思っていたら、今度はまた違う奴から面倒臭い事を言われ、僕は頭を抱えてしまったんだ。
そしてその2人から見られている勇はといえば、王の顔をじっと見据え乍も、その表情はとても複雑そうだった。
王より、"封印をしなくても良い”と言われたという事は、お前達は要らないと言われたのと同じ事。落第したのと同じ事だから。
今までずっとエリート街道まっしぐらだった勇にとって、王から発せられた不要の言葉は屈辱以外の何ものでもないだろう。
「王よ。俺達に封印させないと言うんなら、それは何処の誰がやるんだ?また新たにどっかから召喚するのか?」
と不躾な言葉を王に向けて放つ勇。
その言葉に、堪らず控えていた騎士が、脇に携えている細剣を抜こうとしたが、それを王が目で諌める。
「勇者殿の問いに答えよう。余は、もう召喚はしない。そして、封印はこの者達に行ってもらう事にした。」
と、王は自分の右斜め前に座っている僕達を指さしそう言った。
すると勇は音を立てて椅子から立ち上がると、
「本気かよ!そいつらはただの冒険者だろ?そいつらに封印なんて出来るわけ無いだろ!」
「口を慎め!いくら勇者殿と言えど、陛下のご子息であらせられるルードリッヒ公爵閣下に対してのその言葉。無礼である!」
と今度ばかりは我慢出来なかったらしい宰相のおじさんがそう言って隣にいた騎士の腰から剣を抜き取り、その刃を勇に向けそう言った。
「 まぁ良い。宰相よ、剣を収めよ。それから勇者殿に聞く。彼等には封印が出来ないと申すが、何故そう言いきれる事が出来るのだ?先の大規模討伐で、そなた達は一体でも己の力で魔獣を倒す事が出来たのか?」
と王から問われた勇は、何も言い返す事が出来ず、悔しそうに眉を顰め唇を噛んだ。
王の言うとおり、彼等は一体も魔獣を倒していなかった。
その事実を覆す事は出来ない。
何故なら、しっかりと映像に残されているからだ。
勇も、その事実を知っているからこそ、王の言葉に反論出来ないのだろう。
「先の大規模討伐で素晴らしい手腕で魔獣討伐をした、我が息子 ルードリッヒと、その護衛騎士であるカールソン。また、治癒と癒しの魔法が得意な我が娘であり、ルードリッヒの妹 ミランダ。そして、カールソンの部下で狙撃の名手であるのぞむ殿であれば、必ずや封印を成し遂げてくれると、余は信じておるのだ。」
「のぞむ?何!?渡瀬だと?おい渡瀬!俺の髪を返せ!元どおりにしろ!!」
今まで何も言わなかった寺田が、僕の名前を聞いた途端椅子から立ち上がり、僕の所まで歩いて来ようとするが、王宮騎士の一人に右腕を捕まれるのと同時に、僕を庇う様に立ちはだかってくれたカールソンさんが、寺田の左腕を掴んだ。
寺田より背が高く、鍛え上げられた身体を持つ騎士二人に止められるが、寺田はまだ唾を飛ばして何かを喚き散らかしている。
何を言っているのか、僕には全く分からないし全然聞こえないのは、「うるさい男だ。」と小さく呟いたルードリッヒさんが、寺田の声を消す魔法─いや、正確には違うのかもしれないけど─をかけたからだ。
寺田の髪はその内ちゃんと元どおりになるって教えたのにな。面倒臭いな……と思っていたら、今度はまた違う奴から面倒臭い事を言われ、僕は頭を抱えてしまったんだ。
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