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第九章 王との謁見(僕は勇者ではない)

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ウエストポーチから出したでっかいテントを、テキパキと組み立てていく渡瀬。
「俺も手伝うぞ。」
と言って渡瀬のサポートをする男は、城で会った時、騎士服 ┄ 今日は違うけど ┄ を着ていたやつだ。確か名前は……
「ありがとうございます、カールソンさん。じゃ、ここでこれを持っててくれますか?」
あぁそうだ。カールソンて名前だったな。渡瀬が其奴そいつに言い、テントの組み立て方を指示していた。

渡瀬達の無駄のない作業により、テントは速攻で出来上がり、
「ルードリッヒさんからどうぞ。」
と言って、The貴族の男を真っ先にテント内に入るよう促す渡瀬。
それに続けて、テント立てを手伝ったカールソン、魔導士の男を入れた後、
「相田君達もどうぞ。」
と言って、俺達を促した。
で、渡瀬が最後にテント内に入って来たタイミングで、魔導士の男がランタンに火を灯したんだ。

テントの出入口を閉じた渡瀬は、立ったままの姿勢でウエストポーチから、俺達の世界で言うところの火鉢を取り出し、中にゴロゴロと石を入れた。

「ダイバートさん。お願いします。」
と魔導士の男に声をかけると、
「了解。」
と言ったダイバートとかいう魔導士は、火鉢の上に手をかざした。
すると、火鉢の中の石が熱を発したかと思うと、テント内がめちゃめちゃ暖かくなったんだ。
「めちゃめちゃ暖かい~。」
と昴が火鉢に手を翳すが、その熱を見た賢がいきなり慌てだし、テントの出入口を開けようとする。

「寒いから開けんな!」
と俺が怒鳴ると、
「このままじゃ一酸化炭素中毒死になりますよ!換気が必要です。」
と言って、テントの出入口付近に座る渡瀬を押し退けようとする賢。
すると渡瀬が賢の行動を阻止しながら、
「田代君、落ち着きなよ。一酸化炭素中毒そんな事にはらないから大丈夫。ちゃんと説明するから、座りなって。」
と言って、ウエストポーチの中から、ポットとカップを取り出し、ポットの中の琥珀色の液体をカップに注ぎ入れてくれた。
「この茶葉は、今朝ルードリッヒさんが持ってきてくれたんだよ。公爵家の茶葉だから、とても美味しいよ。」
と言って、紅茶を俺と賢と昴の前に出してくれた。
「大人のルードリッヒさんとカールソンさん、それからダイバートさんには、ブランデーティーにしますね。」
と三人のカップには、ウエストポーチから出したボトルから、酒を垂らしていたんだ。
「あと…、お茶菓子もどうぞ。」
と言って、またウエストポーチの中から、今度はクッキーを出して皿に並べる渡瀬。

「今日のは、ジンジャークッキーです。ハイネさんの力作ですよ。ジンジャー入りだから、身体が温まりますよ。」
と、ニコニコしながらクッキーの説明をする渡瀬に、
「てか、お前のそのウエストポーチ、めちゃめちゃなんでも出てくんじゃねぇか。」
「ホントだよね~。まるで、あの国民的アニメに出てくる、ネコ型ロボットのポケットみたいだ~。」
と言った俺と昴。すると渡瀬は、
「似た様な物かな?あれは"四次元ポケット”て言ってたけど、これは"異空間鞄”。多分仕組みはほぼほぼ四次元ポケットと同じだと思う。」
と言いながら、クッキーをほうばり紅茶を飲んでいる。
渡瀬の隣りのカールソンて人に至っては、「美味い美味い」を連呼しながら、人の何倍ものクッキーをガツガツ食っているから、皿のクッキーが殆ど無くなってしまった。
「カールソン。食べ過ぎだ。」
と言って笑うルードリッヒ貴族の男
「ハイネの料理は別格ですからね。」
と言ってブランデーティのおかわりを渡瀬に強請るカールソン騎士の男
そんな二人のやり取りを渡瀬は笑って見守りながら、
「大丈夫ですよ、お二人とも。まだ沢山ありますから。」
と言って、ジンジャークッキーの他にチョコクッキーもバッグから取り出して皿に並べていた。

そんな渡瀬を見ながら、俺は思った。
この人達がいたから渡瀬は強くなれた。
この人達に守られたから渡瀬は俺達より遥か前を歩ける様になったんだと。

強さも、優しさも、今の俺達では渡瀬には到底勝てない。

でもやるしか無い!
やってやる!

紅茶を飲みながらそう思った。
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