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第九章 王との謁見(僕は勇者ではない)
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「ところでさ。相田君達に聞きたいんだけど、いいかな?」
と紅茶のカップから口を離した渡瀬が口を開いた。
「何だよ?聞きたいって。」
「あ~……あのさ。その格好はガチなの?」
と俺達の服装を見ながら聞いてくる。
「はぁ?んなわけないだろ!これは……その……何だ。全部賢が…「俺は悪くありませんよ!」んだと?賢がしっかり調べりゃよかっただけの話だろうが。」
「俺はちゃんと調べ「たら、こんな風にはならなかっただろ?」クリスタルドラゴンの強さや弱点を調べろと言ったじゃないですか!」
「はぁ?俺が悪いってのか?」
と、賢と俺がぎゃあぎゃあ騒いでいたら、
「ん?えと…要はどういう事なの?ちゃんと説明して貰える?中山君。」
と昴に尋ねる渡瀬。すると昴はチョコクッキーを飲み込み、
「あーね。答えは簡単だよ~。僕と勇は、"賢者”の賢にクリスタルドラゴンについて調べる事を一任したんだ。で、賢が調べた事は、クリスタルドラゴンの弱点だとか、特徴とかを調べただけだった。そしたら、こんな事になっただけだよ~。」
「そうか……。つまり、相田君と中山君は、田代君任せにして、自分達は何もしなかった。だからクリスタルドラゴンがどんな所に住んでいるのか知らなかった。だからそんな軽装で来ちゃったと。ね?頭悪いの?」
と言う渡瀬。
「あぁ?喧嘩売ってんのか?」
「だって頭悪いじゃない?今朝僕達と会った時、僕達の服装が、明らか冬装備なのを見た時、聞けば良かったのに。」
「うぐッ……。」
「全然何にも言わないからさ、あぁ。異世界番ヒートテック着てるんだとか思ったのに、普通に寒そうだしさ。」
と言って、「ほらっ」と俺達三人に小さな袋を投げて寄越した。
「温か~い。カイロみたい~。」
「本当ですね。これは有り難い。」
と昴と賢は渡瀬から貰った小袋に顔を擦り寄せたり身体に当てたりしていた。
「あとは、これを着て、これ履いて、それからこれ被って……」
と言って、俺達に服やズボン、毛皮のコートを投げて寄越した。が、それ等は、実用性重視なのか?デザインは壊滅的だった。
「ダサ過ぎだろ、これ。」
と俺が文句を言うと、
「なら凍死する?それ着ないと、この先もっと過酷な環境になるんだけど?それでも良いなら、着なくて良いよ。」
と渡瀬は、さらっとこともなげに言って返してきた。
もっと過酷な環境とか…今でさえ凍死しそうな程なのに、もっと過酷になったら絶対アウトだろ。
着るという選択肢を選ぶしかなかった俺は、渋々ながらも渡瀬から渡された防寒着を身につけた。
するとどうだ!まるで動物の体毛に包まれているかのようにそれは暖かかった。
「あったけぇ。」
と口にする俺に、
「見た目はダサいけど、めちゃめちゃ暖かいだろ?それ等全部は裏起毛にしてあって、生地に魔石の粉を縫い込んであるんだ。火鉢の中の魔石と同じで、魔力を通すと暖かくなる魔石を使っているから、使い捨てカイロみたいに、時間が経つと冷たくなるって事もないし、低温火傷の心配もいらないよ。」
「そうですか……。火ではなく魔力を使用しているから、テント内で使用しても一酸化炭素中毒にならない。そう言いたいんですね?渡瀬は。」
「ご名答!それに、めちゃめちゃ軽いでしょ?相田君。」
「あぁ確かにな。」
「魔獣との戦いで、分厚い素材を使って重くなると、動きに支障をきたすだろ?だから、軽くても暖かいを目指した防寒着なんだ。」
「俺達も着てるが、本当にこれは暖かい。流石のぞむだな。お前の付与師としての腕は最高だ。」
「ありがとうございます、カールソンさん。僕が"物”にも魔石を付与出来る力があると教えてくれたから作る事が出来ました。」
と自身が着ている服を触りながら、笑顔で答える渡瀬。
その顔は自信に満ちていて、かつてのいつもおどおどしていた渡瀬は何処にもいなかった。
と紅茶のカップから口を離した渡瀬が口を開いた。
「何だよ?聞きたいって。」
「あ~……あのさ。その格好はガチなの?」
と俺達の服装を見ながら聞いてくる。
「はぁ?んなわけないだろ!これは……その……何だ。全部賢が…「俺は悪くありませんよ!」んだと?賢がしっかり調べりゃよかっただけの話だろうが。」
「俺はちゃんと調べ「たら、こんな風にはならなかっただろ?」クリスタルドラゴンの強さや弱点を調べろと言ったじゃないですか!」
「はぁ?俺が悪いってのか?」
と、賢と俺がぎゃあぎゃあ騒いでいたら、
「ん?えと…要はどういう事なの?ちゃんと説明して貰える?中山君。」
と昴に尋ねる渡瀬。すると昴はチョコクッキーを飲み込み、
「あーね。答えは簡単だよ~。僕と勇は、"賢者”の賢にクリスタルドラゴンについて調べる事を一任したんだ。で、賢が調べた事は、クリスタルドラゴンの弱点だとか、特徴とかを調べただけだった。そしたら、こんな事になっただけだよ~。」
「そうか……。つまり、相田君と中山君は、田代君任せにして、自分達は何もしなかった。だからクリスタルドラゴンがどんな所に住んでいるのか知らなかった。だからそんな軽装で来ちゃったと。ね?頭悪いの?」
と言う渡瀬。
「あぁ?喧嘩売ってんのか?」
「だって頭悪いじゃない?今朝僕達と会った時、僕達の服装が、明らか冬装備なのを見た時、聞けば良かったのに。」
「うぐッ……。」
「全然何にも言わないからさ、あぁ。異世界番ヒートテック着てるんだとか思ったのに、普通に寒そうだしさ。」
と言って、「ほらっ」と俺達三人に小さな袋を投げて寄越した。
「温か~い。カイロみたい~。」
「本当ですね。これは有り難い。」
と昴と賢は渡瀬から貰った小袋に顔を擦り寄せたり身体に当てたりしていた。
「あとは、これを着て、これ履いて、それからこれ被って……」
と言って、俺達に服やズボン、毛皮のコートを投げて寄越した。が、それ等は、実用性重視なのか?デザインは壊滅的だった。
「ダサ過ぎだろ、これ。」
と俺が文句を言うと、
「なら凍死する?それ着ないと、この先もっと過酷な環境になるんだけど?それでも良いなら、着なくて良いよ。」
と渡瀬は、さらっとこともなげに言って返してきた。
もっと過酷な環境とか…今でさえ凍死しそうな程なのに、もっと過酷になったら絶対アウトだろ。
着るという選択肢を選ぶしかなかった俺は、渋々ながらも渡瀬から渡された防寒着を身につけた。
するとどうだ!まるで動物の体毛に包まれているかのようにそれは暖かかった。
「あったけぇ。」
と口にする俺に、
「見た目はダサいけど、めちゃめちゃ暖かいだろ?それ等全部は裏起毛にしてあって、生地に魔石の粉を縫い込んであるんだ。火鉢の中の魔石と同じで、魔力を通すと暖かくなる魔石を使っているから、使い捨てカイロみたいに、時間が経つと冷たくなるって事もないし、低温火傷の心配もいらないよ。」
「そうですか……。火ではなく魔力を使用しているから、テント内で使用しても一酸化炭素中毒にならない。そう言いたいんですね?渡瀬は。」
「ご名答!それに、めちゃめちゃ軽いでしょ?相田君。」
「あぁ確かにな。」
「魔獣との戦いで、分厚い素材を使って重くなると、動きに支障をきたすだろ?だから、軽くても暖かいを目指した防寒着なんだ。」
「俺達も着てるが、本当にこれは暖かい。流石のぞむだな。お前の付与師としての腕は最高だ。」
「ありがとうございます、カールソンさん。僕が"物”にも魔石を付与出来る力があると教えてくれたから作る事が出来ました。」
と自身が着ている服を触りながら、笑顔で答える渡瀬。
その顔は自信に満ちていて、かつてのいつもおどおどしていた渡瀬は何処にもいなかった。
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