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第三章 砂漠の魔女編
22.砂漠を飲み込め
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オアシス内に付けられた謎の足跡を追い、砂漠を駆けたシキ一行。その先には魔物の群れと、二羽の鳥を操る謎の褐色肌の男が立ちはだかっていた。
「砂乱の翼……ッ!!」
「させません!! 氷結精製:氷河の盾!!」
広範囲に襲い掛かる砂嵐を、エリーゼは氷の壁を作り出し凌ぎ切る。しかしここは乾いた砂漠の中。強固に精製された氷の造形物も、潤いが足りなければ瞬時に崩壊してしまう。
劣勢を強いられる氷使いに対し、褐色肌の男は隙無く次の攻撃を放つ。
「ハロエリ、ハルウェル!」
男の周囲を縦横無尽に飛び交う二羽の鳥は、熱砂の大地を左右に展開しそれぞれシキ達の死角から攻め入った。
赤い鳥が放つは灼熱を凝縮した熱の風。そして青い鳥が起こすは冷気を爆発させた凍てつく冷風。
三方向から放たれる別々の性質を持つ風は、エリーゼのみならずシキ、オームギが加勢する事で何とか均衡を保っているに過ぎない。
シキは扱えるありったけの炎を発生させ冷風を、オームギは大鎌を振るい熱風をあしらう。防戦一方の中、シキは現状を打破するため相手の存在を再度確認する。
「オームギ、奴は何者だ!?」
「知らないわよそんなの! ディビアードと人が群れているなんて聞いた事も無い……」
「来ますよ二人とも!!」
三つの風の隙を縫うように、多数の獣型の魔物がシキ達を目指して牙を剥く。
「群れが相手なら! 集団狩りッ!!」
大鎌の刃先を地面に当て、擦りながらすくい上げるように縦へ振り上げる。放たれた斬撃は襲い掛かった一匹へと直撃し、同じく襲い掛かって来ていた複数の個体へダメージを共有させた。
空を舞っていた魔物はバタバタと地面に墜落し、砂埃を起こしながら息絶える。しかし数が減る事など見通していたかのように、新たな個体がどこからともなく姿を現す。
「キリが無いぞこんな相手など! オームギ、何か策は無いのか?」
「あったらとっくの前にやっているわ! そっちこそ、そこの突っ立ってる子は何か出来ない訳!?」
「…………」
「ネオンが出来るのはエーテルの吸収と大食いぐらいだ! 嵐も魔物も止められなどしない!!」
完全無口少女のネオンが持ち合わせる能力はただ一つ、エーテルを吸収する力のみ。
幻覚や認識阻害のようにエーテルへ直接干渉する術を無効化する事は出来ても、炎や氷、砂嵐といった物理的な攻撃はそのまま受けてしまうのだ。
エーテル吸収の応用として魔道具の誤作動を誘発したりエーテルのみで動く物質の崩壊は起こせるが、目の前の魔物は獣をベースとしており、これも不可能。
シキやエリーゼ、オームギが戦っている横で、ネオンはひらりゆらりと身をこなしながら魔物を数体引き付けるのが限界であった。
多勢に無勢。数の優位で劣るシキ達は、ただひたすら消耗戦を耐え凌ぐのみ。倒しても倒しても無限に増え続ける魔物を前に、オームギは一石を投じるべく事を起こす。
「シキ! エリーゼ! 少しの間貴方達で対処なさい!! 私は指示役を仕留める……!!」
そう言うと白の魔女は大鎌を構え直し、もう片方の手で純白のマントの先を掴み身を包んだ。そしてとんがり帽子の端から敵を睨むと、唯一無二の術を唱え全身を白く輝かせる。
「消失する白光!」
真っ白な衣服から白い光が溢れ出す。やがて光はその身全てを包み込み、白の魔女は背景へと紛れ込んだ。
「……ッ!! 消えた、だと……?」
突然のターゲットの消失に、褐色肌の男は狼狽える。残った三人への警戒心を残しつつ、消えたエルフの次なる一手に備え対策を立てようとしていた。
オームギに頼まれた二人は、二羽の鳥と魔物の群れへの対応に必死だった。ただでさえ数的優位を取れていないにも関わらず、さらに一人減り魔物達の猛攻が二点に絞られたのだ。
空中からの熱風と冷風に晒されながら、僅かの隙も埋めるように地上では獣型の魔物が襲い掛かる。攻めて防いで、避け切れず。次第に傷の増えるシキ達は、反撃の策を強行した。
「エリーゼ、この炎天下と乾燥地に大雪は出せるか!!」
「出せても恐らく一瞬です! でもどうして……!?」
「奴らをかく乱する。放て!!」
「ッ、分かりました!!」
戦いの最中で放たれる氷は、この暑さと乾燥で一瞬にして形を崩す。そんな状況を目にしておいて、それでもシキは大雪を放てと言ってきたのだ。
今のエリーゼに、現状を打破するほどの力は持ち合わせていない。同じように戦場を覆すほどの妙案も、尻尾を巻いて逃げ切るような潔さも持っていない。
だがそれと同時に、劣勢を甘んじて受け入れるほどの諦めの良さなんて、最初から彼女は持ち合わせてなどいなかったのである。
兄を、家族を探すと決め旅に出たあの日から、留まるなんて選択肢は無い。
両手を形見の杖に添え、先に取り付けられたコアへと全身のエーテルを注ぎ込む。そして今、戦況をひっくり返すため、エリーゼは最強最大の一撃を放つ!!
「行きます。氷結精製:雪崩の浸食ッッッ!!」
灼熱の砂上へ現れた白の塊は、全てを飲み込み一帯を真っ白に染め上げた。
「砂乱の翼……ッ!!」
「させません!! 氷結精製:氷河の盾!!」
広範囲に襲い掛かる砂嵐を、エリーゼは氷の壁を作り出し凌ぎ切る。しかしここは乾いた砂漠の中。強固に精製された氷の造形物も、潤いが足りなければ瞬時に崩壊してしまう。
劣勢を強いられる氷使いに対し、褐色肌の男は隙無く次の攻撃を放つ。
「ハロエリ、ハルウェル!」
男の周囲を縦横無尽に飛び交う二羽の鳥は、熱砂の大地を左右に展開しそれぞれシキ達の死角から攻め入った。
赤い鳥が放つは灼熱を凝縮した熱の風。そして青い鳥が起こすは冷気を爆発させた凍てつく冷風。
三方向から放たれる別々の性質を持つ風は、エリーゼのみならずシキ、オームギが加勢する事で何とか均衡を保っているに過ぎない。
シキは扱えるありったけの炎を発生させ冷風を、オームギは大鎌を振るい熱風をあしらう。防戦一方の中、シキは現状を打破するため相手の存在を再度確認する。
「オームギ、奴は何者だ!?」
「知らないわよそんなの! ディビアードと人が群れているなんて聞いた事も無い……」
「来ますよ二人とも!!」
三つの風の隙を縫うように、多数の獣型の魔物がシキ達を目指して牙を剥く。
「群れが相手なら! 集団狩りッ!!」
大鎌の刃先を地面に当て、擦りながらすくい上げるように縦へ振り上げる。放たれた斬撃は襲い掛かった一匹へと直撃し、同じく襲い掛かって来ていた複数の個体へダメージを共有させた。
空を舞っていた魔物はバタバタと地面に墜落し、砂埃を起こしながら息絶える。しかし数が減る事など見通していたかのように、新たな個体がどこからともなく姿を現す。
「キリが無いぞこんな相手など! オームギ、何か策は無いのか?」
「あったらとっくの前にやっているわ! そっちこそ、そこの突っ立ってる子は何か出来ない訳!?」
「…………」
「ネオンが出来るのはエーテルの吸収と大食いぐらいだ! 嵐も魔物も止められなどしない!!」
完全無口少女のネオンが持ち合わせる能力はただ一つ、エーテルを吸収する力のみ。
幻覚や認識阻害のようにエーテルへ直接干渉する術を無効化する事は出来ても、炎や氷、砂嵐といった物理的な攻撃はそのまま受けてしまうのだ。
エーテル吸収の応用として魔道具の誤作動を誘発したりエーテルのみで動く物質の崩壊は起こせるが、目の前の魔物は獣をベースとしており、これも不可能。
シキやエリーゼ、オームギが戦っている横で、ネオンはひらりゆらりと身をこなしながら魔物を数体引き付けるのが限界であった。
多勢に無勢。数の優位で劣るシキ達は、ただひたすら消耗戦を耐え凌ぐのみ。倒しても倒しても無限に増え続ける魔物を前に、オームギは一石を投じるべく事を起こす。
「シキ! エリーゼ! 少しの間貴方達で対処なさい!! 私は指示役を仕留める……!!」
そう言うと白の魔女は大鎌を構え直し、もう片方の手で純白のマントの先を掴み身を包んだ。そしてとんがり帽子の端から敵を睨むと、唯一無二の術を唱え全身を白く輝かせる。
「消失する白光!」
真っ白な衣服から白い光が溢れ出す。やがて光はその身全てを包み込み、白の魔女は背景へと紛れ込んだ。
「……ッ!! 消えた、だと……?」
突然のターゲットの消失に、褐色肌の男は狼狽える。残った三人への警戒心を残しつつ、消えたエルフの次なる一手に備え対策を立てようとしていた。
オームギに頼まれた二人は、二羽の鳥と魔物の群れへの対応に必死だった。ただでさえ数的優位を取れていないにも関わらず、さらに一人減り魔物達の猛攻が二点に絞られたのだ。
空中からの熱風と冷風に晒されながら、僅かの隙も埋めるように地上では獣型の魔物が襲い掛かる。攻めて防いで、避け切れず。次第に傷の増えるシキ達は、反撃の策を強行した。
「エリーゼ、この炎天下と乾燥地に大雪は出せるか!!」
「出せても恐らく一瞬です! でもどうして……!?」
「奴らをかく乱する。放て!!」
「ッ、分かりました!!」
戦いの最中で放たれる氷は、この暑さと乾燥で一瞬にして形を崩す。そんな状況を目にしておいて、それでもシキは大雪を放てと言ってきたのだ。
今のエリーゼに、現状を打破するほどの力は持ち合わせていない。同じように戦場を覆すほどの妙案も、尻尾を巻いて逃げ切るような潔さも持っていない。
だがそれと同時に、劣勢を甘んじて受け入れるほどの諦めの良さなんて、最初から彼女は持ち合わせてなどいなかったのである。
兄を、家族を探すと決め旅に出たあの日から、留まるなんて選択肢は無い。
両手を形見の杖に添え、先に取り付けられたコアへと全身のエーテルを注ぎ込む。そして今、戦況をひっくり返すため、エリーゼは最強最大の一撃を放つ!!
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